45 食べ物の味を知りたい
異常な常識はお腹いっぱい
神さまは普通を教えてほしいのです
普通の代表ジロさんがんばれ
45話 はじまります
「普通のことですか……」
いまいちピンときていない様子のジロさん
「ではどういうことか理解していただくために、まずは現状をみてください。ゲイル、とりあえずご飯にしましょう。食事を用意してください。」
神さまはゲイルにお願いします
「かしこまりました。ただいま用意いたします。」
そう言ってイノシシに似た魔獣をそのまま出してきました
「え……と。これは?」
ジロさんは恐る恐る聞いてきました
「……今日の食事です。」
神さまが答えます
しばらく考えたジロさんはなるほど……と頷きました
「すなわち言葉通り、そのままでの意味での人間の常識……と言うことですね?」
神さまはホッとした表情で言います
「まさにその通りです。」
「わかりました。では早速準備しますので少々お待ちくださいね。」
ジロさんは馬車に向かって行き、中から何やら道具を取り出してきました
「これらは私たちが馬車での移動の間、野営をする際に用いる料理の道具です。」
そう言うとジロさんはナイフを使って器用に肉を切り出しました
次に木の枝をいくつも拾って火をつけました
「このように木に火をつけて燃やす事を焚き火と言います。人間はこの焚き火の熱で料理をしたり暖をとったりします。」
次にジロさんは先程の切った肉に串を刺し、何やら粉を振りかけました
同じような串肉を何本か作り火の近くに刺しました
「肉に振りかけたのは塩とコショウという調味料です。これをかけて焼くことで人間好みの味付けになります。」
そう話していると家の方から子供たちが駆けてきました
「わーー!いい匂い!お腹すいたーー!」
神さまは子供たちを近くに呼びました
「君たちに、これから協力してほしい事があります。」
子供たちは好奇心の眼差しで神さまをみます
「えー?何をするの?」
「簡単です。僕の近くでその美味しそうな串肉を食べるだけです。」
「それだけでいいの?」
「それだけで良いのです。美味しそうに食べている様子を僕は見ていたいのです。」
「わかったー!」
とても良い返事です
よくわからないといった表情のジロさんが聞いてきました
「タイヨー君、それはどう意味があるのかな?」
神さまはそれっぽい事を言いました
「僕はどうやら生まれたときから味覚というものが無いようなんです。皆が美味しいというものを僕も美味しいと言って食べたい。なんとかならないか……と考えて、魔法でなんとかする方法を思いつきました。具体的にはこの串肉をスコット君が食べてそれを美味しい……と感じるとします。その感覚を僕も感じ取れば美味しいという感覚を僕も理解できるのでは……と思ったのです。」
「なるほど……解ったような解らないような……とりあえず肉もいい頃合いですし、さっそく試してみましょうか。ほらスコット。先に食べていいよ。」
ジロさんがスコット君に串肉を手渡します
「わーい!ありがとう!いただきます!」
そう言うとスコット君は串肉を食べ始めました
神さまはスコット君の肩に手を置いて感覚を共有させます
「伝わってきました……口の中で少しピリッとした感じがします……あぁ……スコット君の幸せな感覚が伝わってきます……これが美味しいって感覚ですか……なるほど幸せです。」
「どうかな?タイヨー君。何かわかった?」
ジロさんが神さまに聞いています
「はい。美味しいって事はとても幸せな事だとわかりました。今はまだ大まかな感覚ですが、いろいろな味を経験することで物の味が理解できるようになりそうです。」
神さまは嬉しそうにジロさんに話します
「タイヨー様。」
ゲイルが話しかけてきました
「どうしたの?」
「私も串肉を食べてみますので参考にしてください。」
「うん。わかったよ。」
そう言ってゲイルの肩に手を置き感覚を共有します
ゲイルは串肉を食べています
神さまの顔はあまり冴えません
「ゲイルの場合、串肉を食べている時よりも生肉を食べている時のほうが幸せの感覚が強かったよ。でもこれで解ったことごあるよ。やっぱり人間に食べてもらってその感覚を身に着けないと駄目だってことが。」




