43 行商人へのお願い
盗賊団を退治した神さま
助けてやったんだから人間社会を教えろ……なんて言いません
何とかうまいことを言って教えてもらいましょう
43話 はじまります
「ところで行商のお方。名前は何というのですか?僕はタイヨーと申します。ドライアドの彼女はライアと言います。」
しばらく茫然としていた御者台の男はふと我に返り、馬車の方に声を掛けるといそいそと御者台から降りてきました
また馬車の後方から女性と子供がふたり出てきました
「この度は危ないところを助けていただき本当にありがとうございました。私はこの馬車で行商を行っているジロと申します。こちらは妻のフリッチ、あとは息子のスコットと娘のフラックスです。」
「森の管理者さま、この度は助けていただき本当にありがとうございました。お兄さんも本当に助かったよ!ありがとうね。しかし見ていたけどお兄さんは頑丈なんてものじゃないねーまさか斧のほうが壊れちゃうなんてねぇーあれは魔法かい?」
元気のいいお母さんです
「はい。魔法で身体を強化しています。」
適当に合わせておく神さまです
「「お姉ちゃん、お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」」
子供たちは5~7歳くらいでしょうか。元気がいいです。ライア様はとてもえらいお姉さんなんだよ!とお母さんに教えられてます
「地方の町で商売を行って自宅のあるバートン王国に帰るところだったのですが、盗賊に襲われて危ないところでした。なにかお礼ができればよろしいのですが……」
ジロさんのその言葉を聞いて、待ってましたー!と言わんばかりに神さまは言いました
「じつは少しお願いしたいことがありまして。僕は物心ついた時からこの森にいまして、幼い頃からこちらのライアにお世話になりながら森のことや魔法などを教えてもらいつつ生活してきました。そして最近ではエルフの方々や獣人の方々とも知り合うことができました。でも人間の方に合うのは恥ずかしながらあなた方が初めてなのです。そこで少しの期間で構いませんので人間の生活や文化、そして常識などを教えてもらえるとありがたいのですけれども。」
神さまはとりあえずいろいろ詰め込んで思いつくままジロさんに話しました
すると妻のフリッチさんが神さまの頭をそっと抱きしめ言いました
「まだ子供なのに苦労してきたんだねぇ。よく頑張ったね。あんた!命の恩人のお願いだ。タイヨー君にできるだけ協力しようじゃないか。」
フリッチさんに抱きしめられたままの神さまは、今までにない安心感にとても心が安らぐのを感じました
そしてなにか身体の奥底にぽっかり空いていた穴が暖かいもので満たされていくような気分になりました
これが母の愛なのでしょうか……とても心地よいです
その光景を見てジロさんは深くうなずきました
「私たちにできることは知れていますが、馬車には人間の生活用品などもありますしお教えできることもあるでしょう。ぜひ協力させてください。」
「協力を申し出てくれて私も感謝いたしますわ。ドライアドの私にも教えられることと教えることができないことがありますので。」
ライアも会話に合わせて話します
いっしょに来てもらって正解でした
「では私たちが生活している場所に向かいましょう。『木の扉』」
ライアが『木の扉』開くと、先程の光景を見ていなかったフリッチさんと子供達はとても驚きました
先程も見ていたジロさんさえ再び驚いてしまいました
「この扉は遠く離れた場所と場所をつなぐ私のオリジナル魔法ですわ。この先に私たちの住む家があります。さあ行きましょう。せっかくだから盗賊たちが残していった馬も連れていきましょう。」
「先程も拝見しましたが、このような魔法が存在するとは驚きです。さすがは森の管理者さまです。」
「「わーい!おもしろそう!先に行くよーー!」」
「ちょっとあなたたち!待ちなさい!まったく言うことを聞かない子達なんだから!」
怖さよりも好奇心の方が強い子供たちは魔法の扉に一目散
慌てて追いかけるお母さん
ジロさんは自分の馬車と盗賊たちの馬をつないで引き連れながら後を追います
神さまはこのほほえましい家族をみて思います
「家族の愛情って見ている者も幸せな気分になるなぁ。」




