38 食事とは?
人間の体に起きる変化を実践してみる神さま
結果、なぜか笑われてる神さま
それでも神さまは試します
38話 はじまります
「氷の微笑……」
二人はまだ笑いをかみ殺しながら肩を震わせています
「まあ汗はいいです。なんとでも言い訳できることはわかりました。それよりも問題は収穫祭の方ですよ。」
神さまは強引に話題を切り替えます
やっと立ち直ったゲイルは神さまに聞きます
「ジャガイモの収穫祭の事ですな。何か問題でも?」
「いや大問題でしょ。僕って食事も水分も必要としてないでしょ?食べるって事が出来ないんだけど。」
ゲイルはそういえば……と気が付きました
「確かにタイヨー様が食事をしているところを見てませんな。失念してました。」
タイヨーもふと思い出しました
「そういえばゲイルもライアもここで食事をしたことがないよね。ふたりは食事はどうしているの?」
「私は濃い魔力を取り入れていれば基本的には食事は必要ありませんな。もちろん竜種なので魔獣などを食べることもできますが。」
ゲイルも食事を必要としないようです
「私は木の精霊なので、日の光と水分と魔力が活動するためのエネルギーですわ。口からの食事は致しませんわよ。」
なんと3人もいるのに、特に誰も食事を必要としないことが明らかになりました
3人とも食事をしないのなら、今まで誰もそのことについて気が付きさえしなかったことは、それはしょうがないでしょう
「これは困ったことになりました。」
神さまは頭を抱えます
ドラゴンと知られているゲイルは食事を必要としていませんが食べることができない訳ではありません
ドライアドと知られているライアも食事をしなくても誰も疑問に思わないでしょう
神さまは正体を誰にも明かしておらず人間で押し通しているので、食事をしないのは違和感でしかありません
ライアは疑問に思いました
「ところでタイヨー様のその口は食物を食べることはできませんの?見ている限りでは人間の口にしか見えないのですけれども。」
確かにその通りです
人間そっくりに作られた人形です
言葉をしゃべれば口は動くし声も出る
見たところ歯もあるようですが……
これ自体については神さまにもよくわかっていません
「そういえばこの身体を作るときって、とりあえず人間を真似してみようって事しか考えていなかったんだよね。自分の身体ながらどうなっているんだろうね。」
神さまはなんだか笑ってしまいました
「解らないことは試してみるしかありませんな。どれ、私が食べるものを持ってきましょうぞ。」
そういうとゲイルは森の中に歩いていきました
「食べるものって……まぁゲイルは常識あるドラゴンだから大丈夫……だよね?」
ちょっと不安な神様です
しばらくするとゲイルが食料を持って帰ってきました
「タイヨー様。手頃なものが見つかりましたぞ。」
ゲイルはイノシシのような魔獣を抱えてきました
それはもう立派な魔獣です
「我々竜種はこれが好物でしてな。」
そういうと無造作に足をもぎ取り、神さまに差し出してきました
「さあ、新鮮なうちにどうぞ。」
とりたてジューシーな血も滴る新鮮な生肉
「え?人間ってこれを食べるの?僕が観察したときは調理と言って火で焼いて食べてたのを見たんだけど。」
「いやいや。この魔獣の肉は新鮮なのが一番ですぞ。さあ!さあ!」
ゲイルが押し付けてきます
「そうなの?まあそういうなら。」
神さまは血も滴る新鮮肉にかぶりつきました
過酷な宇宙で作られた頑強な身体は噛む力も異常です
巨大な生肉の塊を易々と食いちぎりました
「どうでしょうか、タイヨー様。美味しいでしょう。」
しばらくモグモグと咀嚼した後でゴクンと飲み込みました
「うーん……美味しい……ということが解らない。」
神さまは食事をしません
当然味など解りません
解らない機能は作れません
掃除道具を片付けに行っていたライアが戻ってきて叫びました
「ギャーーーー!」
神さまの顔は魔獣の血で真っ赤でした




