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108 ロキシー王女と世界樹

王女は自らの身に起こった事を思い出していました

そして死の際を彷徨う王女に世界樹の意思は接触します

世界樹は王女に何をするつもりでしょうか


108話 はじまります

私はどうなってしまったのでしょうか


王女は暗闇の中にいます

手足を動かしているつもりですが、感覚はありません

いや……そもそも今の私には身体があるのでしょうか?


私は確か……




巨大なサソリとノルディカさんの戦闘が始まったとき、子供たちは泣いて絶望していました


それはそうでしょう


初めてみるであろう巨大な魔獣に、臆さない者がいるはずがありません


でも私は民を守る王女

強くあることを決めたのですから


「みんな!大丈夫です!あのお姉さんはとんでもなく強いのです。さあ、みんなも勇気を出して!」


私は子供たちを集めて抱きしめ、勇気づけました


その時です


ひとりの少年がそれに気が付きました


「サソリが!サソリが入ってきた!」


見ると壊れた馬車の扉から、手のひら大のサソリが入ってきて、こちらを威嚇しています

私は子供たちを庇うように前に立ち、サソリに立ち向かいました


とは言っても、私には武器も何もありません

なんとかサソリを外に追い出せないかと手足をバタバタさせました


そしてサソリを蹴飛ばしたその時です


「……つっ!痛い!」


どうやらサソリに足を刺されてしまったようです

私はその場に倒れてしまいました




そうでした


私はサソリの毒で倒れてしまったのでした

すると私は死んでしまうのでしょうか?


でも最後に私にも人を守ることが出来ました

残念なのは……もっとタイヨー様のお傍にいたかった……


その時です


暗闇の中に、金色に輝く光の球体が現れました


「まだ大丈夫です。貴方は死の淵にいますが、魂は死んでいません。」


私はその金色の光に聞きました


「貴方はどなたですか?そして私はどうなってしまったのでしょう?」


「私は世界樹です。世界樹の意思です。」


神話に聞く世界樹と聞いて、私は驚きました


「王女さま。貴方はサソリの毒に侵され死の間際にいます。その身体をタイヨー様は私の下に連れてきて、生き返してほしいと願っています。私はタイヨー様とは旧知の仲でしてね、貴方の事もよく知っています。なので私も是非、貴方をお助けしたいのですが、私のお願いをひとつ聞いてはいただけませんか?」


王女には断る理由などありません

ましてや神話の世界の世界樹のお願いです


「私にできることなら、何なりとおっしゃってください。」


「では、貴方には私の記憶を受け継いでほしいのです。そしてこの世界の成り立ちと、タイヨー様のすべてを知っていただきたいのです。」


「タイヨー様のすべてを知る?それは私にとってご褒美なのでは……ゴホンゴホン。取り乱してしまいました。失礼しました。よろしくお願いします。」


「フフフ。貴方は面白い人です。是非、これからもタイヨー様を好きでいてくださいね。」


そう言った金色の光は、私の中に入ってきました

その瞬間、とてつもない時間の記憶が流れ込んできました




目にしたのは、まだ何もない大地でした

眩しい青い空が広がります


私はこの世界に生まれた最初の生命

始まりの木でした


やがて私の周囲にはたくさんの緑が生まれ、それは時間をかけて森へと成長しました

始まりの木は、森に更にたくさんの生物を生み出していきました


植物、動物、そして人間……


人間が生まれてから世界は激変しました

あらゆる発明、花開く文化、高度な文明の発達、急速に増える人口、そして対立……

そして高度な文明下での対立は、激しい戦争を勃発させました


一瞬の出来事でした


長い時間をかけて増えてきた多種多様の生命

それが人間の醜い争いによって、一瞬ですべてが灰となってしまいました


世界は終わったのです


その後、私は再び始まりの木としてこの大地に根を張りました

しかしその未来は、以前の世界と全く同じ道をたどり、再び滅亡しました


3度目の世界に、私は再び生まれました


しかし以前と違い、大地からも水からも魔力を感じました

そして何かの意思が語り掛けてきました


「生まれたばかりの君を『祝福』するよ。より豊かな生命が生まれますように。そして長く平和な時間が過ごせるよう願いを込めて。」


この瞬間に私は、それまでの記憶を積み重ねているだけの存在から、明確な意思を持つ存在に変わりました

それは始まりの木が世界樹となった瞬間でした


そして理解しました

私に語り掛けてきた意思は、この世界を作った創造主であることを

その創造主は太陽の意思であることを


世界樹となった私は、今度こそ醜い争いでこの世界を滅亡させないよう心に誓いました


世界の魔力を利用し、私の意思で生命を生み出しました


魔力の濃い森

そこに生まれる魔力を持った生物

より濃い場所には、より強い魔力を持った魔獣が生まれました


やがて人間が生まれました

魔力を持って生まれた人間は、すでにいろいろと便利な能力を持っており、それは文明の発達するスピードを著しく遅らせました

また人間の潜在的な敵勢力として魔獣がいるため、人間同士の戦争が以前の世界と比べ大きく減りました


そしてある日、太陽の意思はこの世界にタイヨー様となって現れました




「これが私の記憶。今まで見てきたこの世界の生い立ちです。」


世界樹がロキシー王女に見せた世界の歴史は、とてつもなく長いストーリーでした

その悠久とも思える長い時間を観察していたタイヨー様


「タイヨー様は太陽の意思。創造主であり今もタイヨー様と太陽は繋がっているのですね。」


私は世界樹に聞きました


「そうです。そして貴方も同様に世界樹の私と繋がりました。貴方の身体は作り替えられて私と一体となりました。そしてこれから貴方は生命神となり、タイヨー様と一緒に悠久の時を生きるのです。」


「やはりご褒美……ゴホンゴホン、分かりました。これから私と貴方は、タイヨー様と共に世界を観察し続けます。」


「フフフ。さあ、皆が待っています。目覚めの時です。」



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