106 拠点に急げ!
ロキシー王女を拠点に連れていく前に東部の街へ
ドラゴンの飛来に大騒ぎの街
そしてノルディカさんは部下に指示を出します
106話 はじまります
東部の街は大騒ぎでした
まさにパニック状態です
王女さまの視察に同行してきた騎士たちは、急ぎ街の外に出て警備を固めました
とはいえ、勇猛さを誇る王都騎士団でも、皆恐怖に顔が引きつっています
それはそうでしょう
巨大なドラゴンが飛来してきて、今まさに自分たちの目前に降り立とうとしているのですから
しかも2体
とても人間が相対して、どうにかなる存在ではありません
それでも震えながら武器を構えていると、聞き覚えのある声が聞こえました
「騎士団よ!案ずるな!私だ!ノルディカだ!」
そう言ってドラゴンから目の前に飛び降りたのは、ノルディカ副騎士団長でした
ノルディカ副騎士団長を見て、騎士団の面々は力なくへたり込みました
その様子を見たノルディカさんは騎士団の皆を叱咤します
「情けないぞ!お前達!何をへたり込んでいるのだ。」
「いや、ノルディカ副騎士団長、さすがにドラゴン2体が同時に飛来してきて死を覚悟したところに、副騎士団長が降りてきたら脱力してしまいますよ……」
騎士は涙声で言いました
「それは済まなかったな。しかし事態はそれ以上に深刻だ。」
ノルディカさんの真剣な面持ちに、騎士団全員が姿勢を正し整列しました
「今からお前達に重要な話をする。まず、その氷漬けの馬車には領主と秘書が乗っている。重要参考人だ。容疑は、もう1台の馬車に乗っている子供達の人身売買だ。凍っている馬車からは当分逃げられない。急ぎ領主館で証拠を集めろ。」
騎士の1人が答えます
この場を仕切っていた指揮官です
「副騎士団長。事前に探りを入れていたため、ある程度の証拠の目処は付いています。今なら領主の執務室を強制捜査できるでしょう。」
それを聞いてノルディカさんは満足げに頷きました
「うむ。それでは領主館を調べる者と馬車を警備する者に別れ行動してくれ。それともうひとつ、先程よりも重大な話がある。」
ノルディカさんの真剣な表情に、皆が息を呑みました
「領主達の罠で、子供達の馬車と共にサソリの魔獣の巣窟に置き去りにされた私と王女は、魔獣との戦闘となったが、後ろにおられる深緑竜さまと獄炎竜さまが我々を助けてくださり魔獣を倒せた。しかしその最中、子供たちを庇った王女がサソリの毒に倒れた。」
騎士達は伝説のドラゴンの名に驚き、護衛対象のロキシー王女が毒に倒れた事に絶望しました
しかしノルディカさんは続けます
「騎士たちよ。案ずるな。今、毒に倒れた王女は、白氷竜さまの特殊な魔法により小康状態にある。今から私達は深緑竜さまの秘儀によりロキシー王女の回復に行ってくる。皆にはこの場の対応を任せる。」
騎士達は3体目のドラゴンの名前に再び驚き、王女の回復の為に深緑竜さまが力を貸してくれることに喜びました
現場を取りまとめる指揮官が声を上げました
「我々には伝説のドラゴン様がついている!我々には我々の使命がある!皆迅速に行動しろ!」
「はっ!」
指揮官の指示に皆が元気よく返事をし、行動を始めました
「では我々も王女を助けに向かいましょう。」
ノルディカさんがそう言って深緑竜さまに飛び乗りました
2台の馬車とラングさんをその場に残し、神さまとユキ、ノルディカさん、そして王女の棺を乗せた2体のドラゴンは、大きく羽ばたき舞い上がりました
その姿を見て騎士たちが声援を送ります
領民の人々は驚いてその様子を見ています
舞い上がったドラゴンは、神さまの拠点に向かって飛び立ちました
王国を東部の街から西部の深緑の森まで、2体のドラゴンは物凄いスピードで飛んでいきました
そして朝を迎える頃に神さま達は深緑の森に到着しました
ノルディカさんは森を見回しながら言いました
「タイヨー君。拠点とはどこにあるんだい?」
「はい。拠点の場所は森の管理者さまによる強力な結界で守られているため、普通の人にはたどり着けないんです。でもそろそろ着きますよ。」
神さまがそう言うと、一瞬景色が揺らめいたと思ったら、そこには今まで無かったはずの巨大な木が立っていました
「あ!あれは!なんだ?さっきまであのような巨木は見えなかったぞ!?」
ノルディカさんが驚いています
「はい。結界を抜けた先、そこにあるのが僕の拠点です。そして今見えている巨木は僕たちの家です。」
神さまの説明に、ノルディカさんはさらに驚きました
2体のドラゴンは地上に降りていきます
地上では戦闘が行われているらしく、魔法がさく裂し、剣がぶつかり合っています
「……なんだか激しい戦闘が行われているが……大丈夫なのか?」
幼い少女から無数の草のツルが伸び、幼い少年を攻撃しています
少年は氷でできた剣で、すべてを切り裂きます
すると少女は氷の矢を放ちました
少年も氷の矢で相殺します
見た目とはかけ離れた激しい戦闘です
その横では女性が火魔法で火を起こし、草のツルでフライパンを操り、風魔法で薪を割って火に投げ入れ料理をしています
更にその横ではジロさんが……まぁ普通に馬の世話をしています
「……ここは魔界か?」
ノルディカさんの顔が引きつっています
神さまは答えます
「いつもの光景です……。」
ゲイルと紅炎が降り立つと、子供たちは戦闘を止めて駆け寄ってきました
「タイヨーお兄ちゃん!おかえり!」
「スコットくんにフラックスちゃん!ただいま!」
神さまは2人と抱き合います
「……えっとタイヨー君。たしか深緑竜さまのうろこの時に一緒にいたジロさんの家族だよな?」
「あ、ノルディカさんは面識がありましたね。そうです。ジロさんの奥方とお子さんたちです。」
神さまが説明しました
そこにライアとディーネが目を三角にしてやってきました
「……タイヨー様。なぜノルディカがいるのか説明をお願いします。」
「まって!ライア!これには重大な理由があるんだよ!」
人型になったゲイルが見かねて説明してくれました
「ライアよ。落ち着いて聞いてくれ。ロキシー王女さまが魔獣の毒にやられて心肺停止状態だ。今はユキ殿の魔法で時間を止めているが、世界樹の力を使わないと蘇生できないだろう。それでここまでお連れしたのだ。」
拠点の住人たちに、緊急事態だという事が伝わりました




