105 絶望から希望へ
馬車から聞こえる子供たちの悲鳴
駆けつけると王女さまが倒れています
絶望的な状況でどうする神さま
105話 はじまります
サソリの魔獣を倒し、ノルディカさんと話をしている時です
神さまは王女さまの危機を感知しました
「王女さま!?」
すると王女さまと子供たちが乗る馬車から突然悲鳴が聞こえました
「きゃー!!」
「お姉さん!!」
神さまとノルディカさんは急ぎ馬車に向かいます
馬車の中では子供たちを背後に、ロキシー王女が倒れているではないですか!
近くには手の平大のサソリが毒の尾を立てて、子供たちを威嚇していました
神さまはサソリの魔獣を踏み潰すと、王女さまを抱きかかえました
ノルディカさんはその状況を見て叫びました
「サソリの毒だ!」
見ると王女さまの足が紫色に変色しています
王女さまは子供達を庇ってサソリの攻撃を受けたようです
血の気が引き真っ白になった王女さまの唇が僅かに動きました
「私にも人を守る事が出来ました……」
少し微笑んだようにそれだけ言うと、王女さまの身体から完全に力が抜けました
「『癒しの雨』!」
神さまは叫びます
すると金色の雨が王女に降り注ぎました
神さまの回復の力で、サソリに刺され紫色に変色した足は元通りになりました
しかし王女さまは目を覚ましません
「ロキシー王女!!」
神さまは叫びます
ノルディカさんが、急ぎ王女さまの具合を確認します
「脈がない……呼吸も止まってる……王女が亡くなってしまった……」
ノルディカさんは膝から崩れ落ちました
神さまは泣き叫びました
「ロキシー王女!ロキシー王女!あ…あぁ……僕はなんて無力なんだ……何が創造主だ……何が神だ……好きな娘ひとり救えないなんて……」
最後は力なく呟きました
その時、馬車にユキが飛び込んできました
ユキは王女さまの様子を見て驚きましたが、すぐに神さまに言いました
「タイヨー様!王女さまを寝かせてください!では急ぎ魔法を使います『永久の棺』」
すると王女さまは、長方形の透き通った氷の棺桶のような箱に閉じ込められました
神さまとノルディカさんは驚いてユキを見ました
ユキが説明します
「これは私の魔法で永久の棺と言います。元々は死者の姿を変わらずにいつまでも残すための氷魔法です。この棺の中は時間すら凍結しています。王女さまは、まだ完全に亡くなった訳ではありません。弱々しくはありますが霊の灯火はまだ消えていません、この状態なら世界樹にてタイヨー様の力を使えば完全に蘇生出来るのではありませんか?」
絶望に満ちた神さまの表情に希望が満ちてきました
「そうだった!死者すら蘇る薬を作れる世界樹の家に連れて行けば、僕なら絶対に蘇生できる!」
神さまはやる気満々です
そこに待ったの声が入りました
「まて!まて!まてーーい!」
ノルディカさんです
「どうしたの?ノルディカさん。」
平静を取り戻した神さまが、不思議そうにノルディカさんに聞きました
「どうしたの?……じゃない!先ほどから聞きたい事のオンパレードだぞ!創造主とはなんだ?神とはなんだ?世界樹とはなんだ?そして……王女さまを生き返らせることが出来るのか?」
神さまとユキは、思わず顔を見合わせ頭を抱えました
「……えっと……今聞いたことは忘れてください。」
「納得できるかーーー!!」
ノルディカさん絶叫です
「……わかりました。でもこの場では説明困難です。ユキがいるという事は、さっきの馬車も何とかしたの?」
「もちろんです。外にあります。」
神さま達3人は馬車の外に出ました
そこには凍り付いた馬車を握っている巨大な赤黒いドラゴン
「まさか……獄炎竜さま……なのか」
初めて見るノルディカさんは驚いています
獄炎竜の姿の紅炎は、神さま達に気が付くと人の姿に変化しました
「タイヨー様。逃げていた馬車はユキ殿が中の人間ごと凍らしておきました。」
紅炎がそう言うので、神さまはユキに聞きました
「馬車の人達は死んではいないんだよね?」
「はい。時間が経てば溶けて元通りです。風邪くらい引いてるかもしれませんがね。」
そう言ってユキが微笑みます
「子供達をここに置いていく訳にもいかないし……どうしよう。」
「そういう事なら私もお手伝いいたします。」
突然ゲイルが現れました
「ビックリしたー!」
神さま、思わず言ってしまいました
ゲイルは構わす話します
「私と紅炎殿で馬車を1台ずつ運びましょう。そして2台の馬車は東部の街で降ろします。騎士団への説明はノルディカ殿にお願いいたしましょう。その後、王女さまを連れて世界樹に戻りましょう。」
神さまもそれに頷きました
「うん。それが良いね。王女さまは時間が止まっているので、先に馬車を何とかしよう。それで良いですね、ノルディカさん。」
ノルディカさんが絶叫します
「良いわけあるかーー!まず今、突然現れたそちらの方は誰なんだ!」
「私ですか?私はゲイルと言います。深緑竜と言ったほうがお分かりですかな。」
そう言うとゲイルは深緑のドラゴンの姿に変わりました
合わせて紅炎も獄炎竜の姿に変わりました
「せっかくですから私も。」
悪戯っぽくユキが笑いながら白氷竜の姿になりました
伝説の巨大なドラゴンが3体同時に現れました
壮観以外の言葉が見つかりません
神さまも初めて見る光景に目を輝かせました
「凄い!カッコいいよ!ねぇ!凄いよね!ノルディカさん!」
ノルディカさんを見ると腰を抜かしていました
「あは…あは…あは……深緑竜さま…獄炎竜さま…白氷竜さま…伝説のドラゴンが揃って目の前に……」
ショックが強すぎました
しばらくしてユキは人の姿に戻りました
ユキは泳げますが飛べません
ノルディカさんを驚かせたかっただけみたいです
「コホン。では深緑竜さまと獄炎竜さまに、先程の話の通り馬車を運んでもらいましょう。」
ノルディカさんが通常モードになりました
「子供達と私達は馬車の中に乗ったまま運んでください。」
「では壊れた扉は私が氷で造りますわ。」
ユキが氷魔法で扉を造りました
「では東の街に向かって出発!」
元気に神さまは言いました
ノルディカさんが言います
「東の街で馬車を降ろし王都の騎士に説明したら、私も王女と共に世界樹とやらに行くぞ。王女だけを渡すわけにいかないからな。これは絶対にだ。」
「……はい。」
力なく神さまは言いました




