104 ノルディカと巨大サソリ
孤児院に行くという馬車
馬車は街の中心部から外側へと向かっていきます
そこで見た貧民層の暮らしは酷いものでした
104話 はじまります
「なんか子供たちと一緒に馬車に乗って連れて行かれてしまいました。」
神さまが呟きました
神様たちは、事の一部始終を建物の屋根の上から見ていました
「何というか……不穏な雰囲気ではありましたが、王女さま達は何か相手の企みを探ろうとしていたように見えましたね。」
紅炎が言いました
「ぞろぞろ乗っていった子供たちを孤児院に連れて行くと言ってましたね。まずはその孤児院まで後を追ってみましょう。」
そう言って神様たちは静かに馬車の後を追いました
私達の乗る馬車は速いスピードで進んでいます
進んでいくうちに街の中心部から外れてきました
富裕層の居住地を抜けると平民層の居住地に入りました
そこは至って普通の住居が立ち並んでいます
さらに進むと突然廃墟のような建物が並ぶ場所に出ました
「ここからが貧民層の居住地です。」
ラングさんが言うそこは酷い有様でした
人々は生きる気力もなく座り込んだり横になったりしています
既に息をしていない者もいるようです
そして死んでいる者を見ても誰もなんとも思わないようです
皆、既に生きながら死んでいるようでした
「酷い……。」
私は絶句してしまいました
ノルディカさんも険しい顔をしています
ラングさんが言いました
「これがこの街の現状です。」
馬車は止まらず進みます
「どこまで行くのでしょうか。」
私は思わず呟きました
「このままだと街を出てしまいますね。」
ラングさんが答えます
ノルディカさんが試しに馬車のドアを開けようとしましたが、鍵をかけられてしまったようです
「閉じ込められたようですね。もっともこの程度の馬車なら破壊してしまえばいいのですが。」
ノルディカさんは事も無げに言います
まぁノルディカさんなら可能でしょうが
馬車は結局そのまま街を出てしまいました
どれほど走ったのでしょうか?
馬車は暗い夜道を走り続けています
すると突然馬車が止まりました
そして馬車を引いていた馬から悲鳴のような鳴き声が聞こえました
やがて窓が外から開き、領主様が覗きました
「王女さま。あなた方とはここでお別れです。知らなくていい事を貴方達は知りすぎました。ここで死んでもらいます。ここは砂漠の街道。しばらくすれば馬の血の匂いを嗅ぎつけて魔獣がやってくるでしょう。貴方たちは証拠も残らず食べられてしまうのです。」
領主様はそう言うと高らかに笑い、もう1台の馬車を走らせるのでした
そして静かになったかと思うと、地響きがして魔獣の鳴き声がしました
ノルディカさんはドアを蹴破って外に飛び出しました
目の前には巨大なサソリの魔獣が牙をガチガチ言わせながらこちらを見ていました
私は以前、魔獣に襲われた時の恐怖が蘇りましたが、それよりも子供たちを何とか勇気づけることに尽力しました
「大丈夫よ!あのエルフのお姉さんは物凄く強いですから!」
子供たちに馬車から出ないように言って私は外を見ました
ノルディカは魔獣を相手にかなり不利なことを悟りました
「くらえ!『風の刃』!」
風魔法を放ちましたが、サソリの魔獣の硬い甲殻は風の刃を簡単に弾いてしまいます
「風魔法は相性が悪いか……それなら接近戦あるのみ!」
ノルディカは物凄いスピードで魔獣に接近し刺突を繰り出しました
しかし、いかに獄炎竜の牙で出来たレイピアでも、刺さらなくては意味がありません
レイピアの刃は甲殻を滑るように弾かれてしまいます
「くっ!まったく相性の悪い相手だ……」
そして接近すればサソリの爪がとてつもないスピードで襲ってきます
ノルディカは回避しますが、砂漠の砂の上ではノルディカのスピードも最大限の威力を発揮できません
ノルディカは苦虫を噛み潰したような顔で敵を睨みました
「ことごとく相性が悪い!」
そして回避し、魔獣から距離をとった瞬間、上空から声が聞こえました
『絶対零度』
次の瞬間、魔獣は凍りつき氷像となってしまいました
ノルディカは目を丸くして魔獣が動かなくなったのを確認し、次に声の主を見て更に驚きました
「タイヨー君ではないか!」
神様たちは上空から王女さまが連れさらわれた馬車を追いかけました
獄炎竜の姿に戻った紅炎の背中に乗って
目立つので上空高くから様子を見ていたら、大きい馬車はそのままに小さい馬車だけが元来た道を戻っていきます
「どうしたんだろう?」
神様たちを乗せた獄炎竜は降下していきました。
すると砂の中から大きな魔物が現れました
「なに!?アレは?」
神さまは見たことのない魔獣に驚きました
それを見て紅炎が説明しました
「このあたりに住むサソリの魔獣ですね。小さい物は手の平位ですが、アレはかなりの大きさまで育った個体ですね。どうやら殺された馬の血の匂いに誘われたようです。あれは頑丈な甲殻を持ち、風や火の魔法に耐性があります。ノルディカ殿とは相性が悪いですね。」
「それじゃあ僕がノルディカさんを助けに行くよ。紅炎達は逃げた馬車を追いかけて。」
神さまはそう言うと紅炎から飛び降りました
近くまで降下していき、ノルディカさんが魔獣と距離をとった瞬間を狙って神さまは叫びました
『絶対零度!』
あっという間に魔獣は氷像になってしまいました
「お邪魔でしたかねー風魔法は相性が悪そうだったので凍らせちゃったんですけど。」
神さまはノルディカさんに声をかけました
「いやいや、助かったぞ。魔法は効かないし、レイピアは甲殻を滑って刺さらないし、砂地でスピードは落ちるし……相性最悪だったからね。」
そう言うとノルディカさんは、凍ったサソリの魔獣をレイピアで一突きしました
すると凍り付いた魔獣は粉々に砕け散りました
「しかし、よくここにいる事が分かったな。」
ノルディカさんが疑いの眼差しを向けます
「そ、それは……」
と言いかけたところで神さまは叫びました
「王女さま!!」
馬車の中から子供たちの悲鳴が聞こえました
「きゃー!」
「お姉さん!」
緊急事態のようです




