103 突入
ラングさんと合流した王女さま
人身売買の拠点と言われる場所の様子を伺います
そこにやってくる2台の馬車
103話 はじまります
人身売買の拠点という場所の様子を、王女さまとノルディカさんとラングさんが見ています
しばらくすると馬車が2台やってきました
そのうちの1台はとても大きな馬車です
建物から大柄な男が出てきました
「お待ちしておりました。」
すると小さめの馬車からも男が出てきました
私はノルディカさんに聞きました
「あれは……どう見ても領主様ですよね?」
「……そのようですね。何というか……まったく隠す気が無いようですが。」
するとラングさんが言いました
「隠す必要など無いのですよ。この街の中心部では誰もが知っていながら見ていない振りをしている日常の光景ですから。」
私は驚きました
「この人身売買を、この街の人は見て見ぬ振りをしているのですか?」
「その通りです。だからこの街の上流階級の方々は潤っているのです。」
ラングさんは残念そうに言いました
「街ぐるみで暗黙の了解とは……中々腐った街だな。」
ノルディカさんが嫌そうな顔で呟きました
しばらくすると、建物の中から子供たちがぞろぞろと出てきて、馬車の中に入れられました
子供たちは皆不安そうな顔をしています
泣き出した子もいましたが、大柄な男が怒鳴りつけて静かにさせました
それを見ていた領主様が言いました
「おい!大事な商品に怪我などさせるなよ!」
「大事な商品とはどういう事かな?領主殿。」
いつの間にか領主様の後ろにノルディカさんが移動していました
「わ!誰だ!お前は!?」
領主様、驚いて腰を抜かしました
「王国副騎士団長ノルディカだ。ところで先程の返答をよろしいかな?領主殿。」
「それについては私からお答えいたしましょう。」
そう言うと馬車の中からもうひとり男が出てきました。
「お前は何者だ?」
ノルディカさんが聞くと男は
「私は領主の執事でございます。我が領主がとても失礼な物言いをして申し訳ありません。子供たちに対して商品などと言ってはいけないと、いつもご注意致しているのですが、中々聞き入れてもらえず苦労しているのです。」
「なるほど。でこのような夜更けに子供たちを何処に連れて行くつもりなのかな?」
「はい。本日、街の外れにある孤児院の方に移動させるつもりだったのですが、視察が長引いてしまったためこの様な時間になってしまいました。」
男は薄い笑みを浮かべて言いました
「……なるほど。ではせっかく来た視察だ。その孤児院とやらも見せてもらってよろしいかな?」
「もちろんです……そちらにいる王女さまもご一緒にいかがですか?」
あの男には私が潜んでいた事もお見通しでした
「気が付いておられましたか。そうですね。では私も視察に伺いましょう。」
私とラングさんが馬車の方に出ていきました
「……なるほど。ラング財務官もご一緒だったのですね。せっかくですから貴方もご同行いただきましょう。いろいろ疑いがあるようなので。」
執事はそう言うと、子供達と私達を大きな馬車に乗せました
どうやらもう1台の馬車は既に満員のようです
執事が申し訳なさそうな顔をして言いました
「王女さま。大変申し訳ありません。こちらの馬車のほうが広いので、子供たちとご一緒に乗ってください。」
そう言って馬車の扉を閉めました
すると馬車はゆっくりと走り出しました
馬車の中はランプで明るくなっています
広めの車内を、ぐるっと一周回るように座れるようになっています
王女さまは子供たちに話を聞くことにしました
「ちょっとお話してもいい?」
「な、なに?」
子供は明らかに警戒してます
「あなたは、どこからここに来たのか教えてくれるかな?」
私は出来るだけ怖がらせることが無いように聞きました
「えっと、貧民層の人々が集まるところにいたよ。」
「そこでは誰と暮らしていたの?お父さんやお母さんは?」
「親はいないよ。子供たち同士で暮らしていて、炊き出しに並んだり、大人たちから食べ物を分けてもらったり、一緒に食べ物を取りに行ったりしてたよ。平民層の住む辺りのゴミ箱には、まだ食べれるものが捨ててあったりしたんだ。」
思ったよりひどい暮らしをしていたようです。
「そうなんだね。ところでここにはどうして来たの?」
「オジサンが食べ物をあげると言ったから付いてきたよ。それで食べ物をもらっていたんだ。」
どうやら酷い扱いは受けていないようでした
ただ貧富の差があまりにも大きい事はわかりました
他の子達にも聞きましたが大体同じような答えでした
ノルディカさんが難しい顔をして言いました
「これだけ聞くと、あの執事の言っている通りに孤児院に連れて行くのなら問題になる事は無さそうですね。」
ラングさんが悲しそうな顔をして言います
「そうですね。このまま孤児院に連れていけばですけど。」
そしてラングさんは話を続けまず
「そもそも、この街に孤児院があるなど私は知りません。この馬車は何処に向かっているのでしょうね。」




