101 東部の街の闇
東部の街で頻発している行方不明者
貧民層の居住区に影を落とす街の闇
ロキシー王女はどうするのか?
101話 はじまります
領主館の客室にはロキシー王女とノルディカ副騎士団長
ふたりは斥候の報告を聞きます
「貧民層の居住地で子供の行方不明者だと?」
ノルディカさんが聞きました
「はい。どうやら孤児を中心に子供達の行方不明者が出ているようなのですが、身寄りのない子供がいなくなったところで誰も疑問に思っていないようです。同じ孤児仲間が、最近あの子を見なくなったとか、大人に連れていかれるのを見たとか言うのを聞きました。私達も随分警戒されましたね。」
斥候は苦笑いをしながら言いました
ノルディカさんは少し考えるも答えは出なかったようです
「さすがにそれだけでは判断ができないな。ただ何か引っかかるな。引き続き調査してくれ。私達も探りを入れてみる。」
「了解しました。」
そういって斥候は退室しました
「ロキシー王女。どうもこの街の流通には、公には出来ない何かがある気がするんです。私の直感ですが。」
「秘密の取引があると?」
私はノルディカさんに話の続きを聞きます
「はい。まだ証拠もないのですが、貧民層の子供たちをさらって他国に売買しているのではないかと。」
私は驚きました
人を売り物にする?
私の驚きを察したノルディカさんは言いにくそうに話し始めました
「はい。この東部の街について事前にいろいろ調べたところ、貧富の差がかなり激しいようなのです。街の中心地の裕福な人々は贅沢な暮らしをしているようなのですが、特に貧民層の人々はかなり厳しい生活を強いられているようなのです。病気や怪我での死亡率も高く、治安も悪く、多くの孤児が出ているようなのです。その孤児たちを保護するという名目で連れていき他国に売っているのではないかと……これは憶測の域を出ないのですが。」
「それは住民に厳しい生活を強要し意図的に孤児を生み出しているという可能性も……」
「可能性としては十分にあり得るのではないかと思います。」
私の話にノルディカさんはそう答えました
私は愕然としました
それが本当ならば、この町の上流階級の人たちは民を意図的に苦しめ死に追いやり、遺族たちを売り物にして自分たちの利益にしていることになります
「そんな事は許されません!民を守るのが上に立つ者の使命です!断固として抗議します!」
私がそう息巻くと、ノルディカさんが落ち着くようにと言います
「王女、まだ証拠も何もありません。憶測だけで決めつけてはいけませんよ。」
私はハッとしました
「そうでした。王女として何事も決めつけて話してはいけませんね。」
しょんぼりする私にノルディカさんは微笑みながら言いました
「私は王女のその真っすぐなところが大好きです。いつまでもその真っすぐな気持ちを忘れずにいてくださいね。」
そう言われて私は急に恥ずかしくなり、はい……と返事をするのが精一杯でした
翌日は隣国との流通について説明を受けました
主にそれぞれの国の特産品を流通しあっているようです
我が国から出荷しているものでは北部地方で製作されている冷却容器と、南部地方で作られる鉄工品が人気のようです
そしてそれらの売り上げや他国商品の買い上げの帳簿を見せていただきました
なるほど、確かに流通が盛んな街だということがわかりました
でも正直なところ、この街がこれ程までに潤うほどの儲けになっているようには思えないのです
儲かっていることは確かです
しかし莫大な利益ではありません
私は領主様に聞いてみることにしました
「この街の商人は見事な取引をしているようですね。感服いたしますわ。」
領主様は微笑みながら答えました
「王女様にお褒めにあずかり光栄です。皆の頑張りのおかげでこの街は発展してきました。」
「そのようですね。このお屋敷もとても見事ですし調度品も素晴らしいものを揃えていらっしゃいます。街の様子もとても華やかですね。」
すると領主様は満面の笑みを浮かべ答えました
「さすがは王女様。お分かりいただきますか。この屋敷もこの街並みにも贅を尽くして造りましたからな。」
私も微笑みながら答えました
「ええ。本当に素晴らしい街並みです。この帳簿の数字からこれだけのお屋敷や街並みを造るのはさぞかし大変だったでしょう。全ての住民が幸せに暮らしていられるのでしょうね。」
領主様の笑顔が少し強張りました
「もちろんです。ここでは領民の皆が幸せに暮らしていると私は断言できますよ。」
「それは素晴らしい事です。そうしましたらこの会議の後はこの街に住む人の様子も見せていただきたいですわ。」
私は喜んでる表情で言いました
「え?街並みの視察は昨日されていますよね?」
「ええ。昨日は中心部の街並みを拝見いたしましたので、今日はその外側で暮らす人々の様子を拝見したいのです。」
領主様は明らかに狼狽えました
「それは困ります。今日はこの後も予定が詰まっておりますので急な予定変更はお受けできません。」
「あら、そうでしたの……それは残念です。ではそれはまたの機会にさせていただきますわ。」
領主様は明らかにホッとした表情をしました
「ええ、是非そうしてください。」
街の流通についての説明を聞き終え、私達はいちど客室に戻りました
部屋に戻り侍女にお茶を出してもらいながらノルディカさんと話しました
「領主様のあの様子……かなり怪しいですね。」
私がそう言いますとノルディカさんも同意の意見を言いました
「ええ。彼は完全にクロですね。どうしても街の様子を見てほしくないようですね。しかもあの帳簿の数字、確かに儲けてはいますがここまで贅沢できるほどの売り上げではありません。」
ノルディカさんは苦虫を噛み潰したような顔をしました
「しかし証拠がありません。さらに調査を進めることにしましょう。」
会議を終えた領主は焦っていました
「おい!あの様子では何かを嗅ぎつけたようだぞ!今夜の出荷は大丈夫なのか?」
すると近くにいた秘書が言いました
「まったく問題はありません。証拠は出ませんから。」
秘書は不気味な笑いを浮かべながら言いました
「いざとなれば魔獣に襲われた事にして始末してしまえば良いのです。」




