第七話 催促
今日も黄泉 仙は隙間時間に宣伝を続ける。
その背後に、勘 千佳伊 がピタリとくっつくのもいつもの光景。
「更新催促のムカつく感想をもらった」
「良かったじゃないか。感想だろ?」
更新が止まって久しいので妥当な感想だ。
「お前ちょっと行ってリーガルハラスメントしてこい」
「はぁ? なんでだよ?」
「私の心の平穏のためだ。行け」
相手の住所も本名も不明。
開示請求をするにしても根拠が乏しい。
「いかねーよ。その読者のためにもさっさと続きを書け」
「ふむ。納得がいかんな」
ブツブツ文句を言いながら、千佳伊がスマホの操作を始める。
ライン通話の画面には尾茂井 弧見が映った。
『どしたんチカチカ?』
「どうせ執筆もしてなくて暇だろう? 議論をするから来い」
『なんで決めつけ? ウチはプロットを書かなきゃだし、今日はパスで』
けだるげな声を出す弧見。
千佳伊が邪悪な笑みを浮かべる。
「一時間以内だ。一分遅れるごとに弧見の恥ずかしい秘密を仙に暴露する」
『すぐいくから!』
秒で釣れた。
「弧見の恥ずかしい秘密ってなんだ? 脅すのに使えそうだから教えろよ」
「弁護士が堂々と脅すと宣言しても良いのだろうか」
「リーガルハラスメントとかほざいたのは誰だ? まだ3分も経ってないぞ」
聞き出そうと仙が巧みに誘導し、一時間近くが経過。
「ふむ。そこまで言うか。なら弧見の全裸画像を見せるだけならOKか?」
「OKじゃない! チカチカ殺す!」
「殺害予告か。録音しておいたし、またネタが増えて上出来だ」
顔を真っ赤にした弧見が、土足のまま部屋に雪崩れこむ。
あからさまに嫌な顔をする仙。
「汚物を見せんな。あと事務所は土足厳禁だからスリッパに履き替えろ」
仙が床掃除を終える頃には二人も終戦。
お茶菓子を用意し、向かい合って座る。
「なんで千佳伊が来客用ソファーなんだよ」
「こちらの方が上質だからだ。さて、それでは本題に入ろう」
千佳伊は用意したノートパソコンを仙に向ける。
弧見も体を密着させて画面を覗きこんだ。
「なにこのパワポ? 〝さっさと〟と〝とっとと〟の違いについて?」
「ネットに転がっている情報に納得できないから私なりにまとめてみた」
「くっだらねー。俺はパスだ」
仙が腰を浮かすと、千佳伊はスマホをテーブルに置く。
画面には脱衣所で服を脱ぐ仙の姿が映っていた。
パンツを下ろす直前で一時停止し、千佳伊が微笑む。
「本人がいないのならこの先を見ても良いと思わないか?」
「うん。そうだよね。いないんだし仕方ないよ」
「これ立派な盗撮だよな? 今のも脅迫だよな?」
再び仙が着席。
満足げな千佳伊が──今日のマウンティングを開始した。




