第四十話 帰国
フランスと日本の両大使館から苦言を頂いた。
当の千佳伊は、開き直っている。
「イライラしていたから、つい」
「千佳伊、貸しだからな」
「無論、体で払おう」
執筆してくれると思った仙は、胸をなでおろす。
それからの帰国スケジュールは怒涛の流れ。
フライトの時間だけが寛ぐ時間となった。
「帰ったら忙しくなるね~」
たくさんのお土産を抱え、暢気な弧見。
アイマスクを装着する千佳伊。
「頼んだぞ仙。では、着いたら起こしてくれ」
「胃がいてぇ~」
成田空港へ到着。
すかさず記者から囲まれてしまう。
「会見を開きますから」
仙が必死にそう訴え、場が用意された。
エッフェル塔前の記念撮影と、「血税で豪遊」の問題発言。
ジャパンエキスポで登壇をぶち壊した放送事故。
マカロン大統領をそっくりさんと思って追い返した事件。
しかし、千佳伊と弧見は不参加として帰った。
カメラフラッシュと質問が続く。
「勘本人がここにいないのは何故ですか!?」
「体調不良とのことです」
「フランスとの外交に亀裂が入ったらどう責任を取るおつもりで!?」
「弊社の担当弁護士と相談の上、後日改めてご報告致します」
二時間の謝罪会見を終え、へとへとになって仙も帰宅。
「あれ? 電気ついてね。おーい、千佳伊、弧見。いないのか?」
暗い中で靴を脱ぎ、リビングへ足を運ぶ。
手探りで部屋の電気をつけたら、目の前に千佳伊がいた。
「うわっ、ビックリした!」
「お帰りなさいませ、旦那様。さぁどうぞこちらに」
メイド服を着た弧見もリビングで待っていた。
「食事も出来てるよ!」
「これはなんの冗談だ?」
「そう警戒をするな。これは報酬というやつだ」
「千佳伊はなんでセーラー服?」
二人に両脇を掴まれ、仙は無理やりソファーに座らされる。
テーブルの上には、かつての食材たちが並ぶ。
「この錬成失敗した物体は?」
「そっちはチカチカの鰻の煮凝り。こっちはウチの焼き餃子」
さっそく千佳伊がノートパソコンを取りだす。
「今日の創作論は、試練の後の報酬についてだ。〝なるべく早く〟が基本」
「俺の常識だと、これは拷問と呼ぶぞ」
「さぁさぁ、怖くて味見できなかったけど、ど~ぞ!」
笑顔の弧見。
仙は口に食材らしきものを押し込まれる。
「ぐぇぇ、まず! こんなのは報酬じゃねー!」
「そうだ。真の報酬は私との関係の進展である!」
「やめろー! た、助けろ弧見!」
弧見が無言でカメラを回す。
仙は必死に話題を変えようとする。
「ここでの報酬は謝罪後の事態の好転だろ!」
まだ騒動のもやは晴れない。
「俺の胃は最弱だぞ!」
「だから滋養強壮に良い鰻にした。ほれ、ご主人さま、あ~ん」




