第四十一話 王道
黄泉法律事務所のリビング兼相談室。
そこにはノートパソコンのキーボード音が響く。
仙の努力により、騒動は沈静化の兆しをみせた。
「ふぅ、このメールで一通り送ったかな」
壁を背もたれにした千佳伊が、仙の背中を見つめている。
「あんなテンプレ会見でよく収まったな」
「テンプレこそ最強~!」
「担当弁護士はお前だろう? なぜ持ち帰ってメールなのだ?」
「創作と同じように、謝罪にもお作法があるんだよ!」
謝罪会見では謝罪の言葉だけ。
説明については「言質を取られないよう持ち帰るのが基本だ」と仙は語る。
「それについては理解したが、テンプレが最強というのは理解できん」
「なんでだ? 最も需要があって、無難で、過不足なく要件を満たせるぞ?」
「だが、ありきたりではないか。あんなもの、誰でも書ける」
仙が「あのなぁ~」と言いながら振り返る。
その目は据わっていた。
「テンプレを下に見てるから通用しねーんだよ」
「オリジナルの方が崇高なのは確かだろう?」
「古典音楽やショートケーキ、基本の型ってのはある」
なぜその構成や構造なのか、なぜその時間配分なのか、と続ける仙。
「真剣に向き合うほどに難しい。けど、バランス感覚は大事なんだ」
「ふむ。で?」
仙が一つ瞬きをする。
「客が一番求めているのはその黄金バランスだから……」
「くだらん。そんなものどうでも良い!」
千佳伊が新しい創作料理をテーブルへ。
落雷のように現れたそれは、見たこともない色をしている。
「食え! これが私の魂の叫びだ!」
「あのなぁ、需要を完全に無視したのを作っても意味ねーぞ。最初は……」
「そうやってすぐ型にハメようとする!」
箸で謎の物体Xを掴む千佳伊。
「せっかく作るのだ! 誰の猿真似でもない、私だけのオリジナルで何が悪い!」
そして仙の顔面へと突きつける。
「届けたい想いがあるのだ。だからこれはお前のためだけに作った!」
「……ならせめて俺の好む料理にしてくれ」
──数時間後。
「ただいま~。雨降ってきちゃったよ~。チカチカ、洗濯物とりこんでくれた?」
弧見がリビングへ足を踏み入れると、そこには惨劇の跡があった。
「え!? 仙!? チカチカ!? いったい何があったの!?」
テーブルや床にはお好み焼きの原材料のような物が撒かれている。
仙が息も絶え絶えに口を開く。
「……き、基本は大事……」
「どゆことー!?」




