第四話 創設
勘 千佳伊 の部屋で仙と千佳伊は汗だくになっていた。
「おい、仙。なぜだか例の芸能人にブロックされたぞ」
「うっせーな。俺は宣伝で忙しいんだよ」
ただでさえ電気代を節約して蒸し暑い部屋。
何度もうっとうしく袖を引かれ、仙は苛立っていた。
「だいたいさ、あんだけ絡んでたら当然だろ?」
「つまり私は芸能人と同格になったということか?」
勝ち誇った顔の千佳伊。
相手にせず仙はひたすらツイッターで宣伝をしていく。
「おい、無視をするな。聞いてくれ」
「……手短に」
「芸能人のくせに煽り耐性なさすぎ」
千佳伊はゴミでも見るようにスマホを見下ろす。
「どいつもこいつも脳死でミュート・ブロックを使うのは豆腐メンタルすぎだろ」
「んなの人それぞれだぞ?」
「私が読まれないのはミュートされているからかも知れん」
仙は反射的に開きかけた口をグッと我慢した。
瞳で「つまらないからだ」と訴えている。
だが、千佳伊は気づかない。
「どうにかハッキングしてミュート・ブロックを解除させられないものか」
「くだらないことを言ってないで続きを書け!」
たまらず仙が大声をあげるも、千佳伊はあさっての方向をみている。
「そうは言っても、次のレスバが立てこんでいて私は忙しいのだ」
「おい、大御所じゃねーか! そんなとこにもケンカふっかけてんのかよ!」
「ただのコミュニケーションだ。しかし、今の日本はコミュ障が多いな」
その日、千佳伊がツイッターで発した言葉が新たな波紋を呼んだ。
──「ブロックするくらいなら発信すんな」と。
翌週。
尾茂井 弧見も含めて、三人でファミレスに集まった。
「燃えたねー。インプ四千万ってウケるんですけど!」
「そのくらいPVも跳ねて欲しいのだが、誰かの陰謀なのか阻まれているようだ」
ドリンクバーから戻った仙が、不満げにテーブルへグラスを三つ置く。
「んなもんあるか。単純につまんねーからだよ」
「ちょっと、ウチのドリンク毒みたいな色してんだけど? 何いれた?」
文句タラタラな弧見。
背景効果の花を浮かべ、千佳伊が一口飲む。
「マズ。それはさておき本題に入ろう。例の大手芸能事務所にブレーンがついた」
「残念でした。もう手伝わないと決めてるから」
「事務所を用意しておいた。スケジュールはこれだからよろしく」
バサリとテーブルの上に書類が投げ出される。
契約書と今後のスケジュール。
テーブルと千佳伊の顔へ、仙の視線がラリーの応酬をする。
「はぁぁぁぁあ!? 黄泉法律事務所!? なんだよこれ! 知らねーぞ!」
「だろうな。いま言ったから」
法律事務所を設立するには弁護士資格がいる。
仙の記憶には手続きの一切がない。
なのに目の前にあった。




