第三話 勝訴
報酬はカケヨメリワード全額に落ち着いた。
不本意だった仙だが、怒涛の説得に押し切られた形だ。
曰く、「今ではなく将来性を見ろ」と。
曰く、「勝訴すれば私の作品も伸びるはず」と。
どうして冷静になれなかったのか。
仙はこのときの判断を、後に悔やむことになる。
それから数度の示談交渉を突っぱねた二人は、決戦に臨む。
まず、「スラップ訴訟だ」と言いがかりをつけた。
炎上初期のリーク情報は社員だと適当に難癖をつけた。
全て当てずっぽうだ。
それがなぜか全て正しかった。
潮目が変わったのは、社内の政治闘争での内部告発。
自信満々の千佳伊の言葉どおり、勝訴となった。
弧見も呼び出して盛大に祝勝パーティーを開くことに。
三人で千佳伊の部屋に集まって乾杯をした。
「「かんぱ~い!!」」
「さぁ私の時代がきたぞ!」
「ぐふふ、このニュースが駆け巡れば、きっとウチのPVも伸びるわ」
PVの話題が出たことで仙も報酬の件を思いだす。
「そういや千佳伊のPVは伸びたのか?」
「当然だ! 爆増をしているぞ!」
その言葉に仙は頬を緩ませる。
「で、いかほどに?」
「昨日、ちょうど累計1万に届いたぞ。今日も50PVはいきそうだな」
ガックリと肩を落とす仙。
「どした? 仙? まだピザあるよほら」
「喜べ! 明日から新連載も投稿してやるからな。稼ぎは増えるぞ!」
仙はジト目を千佳伊へ向ける。
「ちなみにどんなんだ?」
「今回は最高傑作だ」
ラインで送られてきたリンク。
読み始めた仙は涙を流す。
「泣くほど感動したのか? 照れるな」
「全米が泣いたレベルなの!? ウチにも読ませてよ」
盛り上がる二人をよそに、仙がポツリと呟く。
「クッッッソつまんねー! 民事訴訟の地味な裏側なんか読んでも面白くもなんともねーよ!」
「そこはほら、ノンフィクションだから。あれだけ炎上したし、伸びるだろ」
「これ、金額がファンタジーだわ。でも手続きはリアルよね」
仙が色々な意見をだすも、二人はゲラゲラ笑って流す。
そのまま、謎のハイテンションで飲み明かした。
翌日。
二日酔いと共に現実を思い知る。
「おい、千佳伊! やっぱ全然読まれてねーじゃねーか!」
「ウケる! PVが2ってウチと仙ということじゃん! 読まれなさすぎ!」
「なんもウケねーよ! 俺の取り分はどうなるんだよ!?」
腕を組み、聞き流していた千佳伊。
「ふむ。これは将来的な伸びしろが大きいということだな」
「おいおい、ポジティブすぎだろ」
「何を悠長なことを言っている? 仙が宣伝を頑張らなきゃだろ?」
仙は顔芸で「なんでだ?」を問う。
鼻で笑った千佳伊が髪をかき上げる。
「だって開業資金は必要だろう?」




