第二十九話 並列
──夜。
自宅に戻った千佳伊、仙、弧見の三人は、改めて今後の方針を話し合う。
「元手はある。だからIT企業を起業する!」
「株はもうやんないのか?」
千佳伊が不敵な笑みを浮かべる。
「当然やる。当面は二足の草鞋でいく。軌道にのればAI会社も立ち上げる」
「チカチカは小説投稿サイトも複数併用で使ってるよね~」
仙が指折り数える。
「カケヨメ、妄想家になろう……他にも投稿していたよな?」
「七つの投稿先を使い分けている」
「アハハ! 並列厨みたい。よくそんなに並列処理できるよねぇ」
千佳伊と弧見が笑い合う。
だが、仙の頭上には、大きめのハテナマークが浮かんでいた。
「なぁ、並列厨ってなんだ?」
「なんだ知らんのか? 並列警察もいるぞ。弧見、ながら厨の例を示してやれ」
しばし拳を口元に当てていた弧見が、カッと目を見開いた。
「考え事をしながら家を訪ねて扉を見つめながらノックをし、返事を待ちながら手鏡を見てソワソワしながら髪を整える……って感じ」
仙が混乱し、ぐるぐるお目目になった。
「うわぁ……即ブラバ案件だ」
「並列警察が湧くとき、語彙警察もほぼほぼタッグで現れるな」
千佳伊が分析データと思われるグラフをノートパソコンで表示する。
「千佳伊……このグラフは?」
「各警察の出没分布だ」
「うわ~、やっぱ人気作は警察いっぱい湧くね。新人には語彙警察多めなのかぁ」
新人作家のグラフでは語彙、視点揺れ、てにをは警察の出没率が高め。
「語彙なんか気にしなければいいのにな」
「何を言っている!? 仙も警察ムーブしてきたではないか!」
弧見と千佳伊が、不動明王と阿修羅観音のオーラをまとった。
「こないだも逆接の取り締まりしてたじゃん!」
「〝そして〟と〝瞬間〟について指摘したこと。忘れたとは言わせぬ」
ガタガタと怯える仙。
「ま、まて。その手に持った工具や鈍器をひとまず置こう! な!」
千佳伊がまだ駆け出しの頃。
一文ごとに〝そして〟を地の文の文頭に置いていたのを仙はからかった。
弧見についても同様。
多すぎる〝瞬間〟を使って替え歌を作ってまでバカにしていた。
「そこに正座しろ。そして黙って殴られろ」
「ウチ、あの替え歌、今でもトラウマだからね!」
仙はどこからかグラサンを取り出し、ラッパーの口調になる。
「ヘイ! ヨウ! そして瞬間♪ すぐ瞬間! すると瞬間♪ また瞬間! 瞬間的に瞬間♪ だから瞬間♪ マジ瞬間!」
「「死ね!!」」
瞬殺された仙がベッドに突き刺さっている。
それを横目に二人は次の計画を練り、邪悪な笑みを浮かべた。
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