第二十八話 落胆
「インサイダー取引の何が悪いのか。どこぞの大統領もやっているではないか!」
「まぁまぁチカチカ。司法取引は上手くいったんしょ?」
「あのピエロは関税、原油、ナフサのどれも上手くいってねーだろ」
千佳伊、仙、弧見の三人は、ウーバーを頼んでプチ祝勝会をしていた。
「しかし、使えるものを使ってはならないとは。トラップではないか」
「小説でもあるよね~。絵文字とか」
「投稿サイトで使えるのなら、絵文字は別に使っても良くね?」
仙が軽口を挟むと、二人の絶対零度の視線で挟まれる。
「いいか仙。あれは見えている地雷。門河社の仕掛けた罠だ」
「そうそう。使った作品でコンテストを受賞した作品って無いよね? ね?」
怒涛の反論。
仙も応戦しようと思考を巡らせたが、早々に白旗をあげた。
「たしかにねーな。それはそうと、テレビから千佳伊にオファーが来てるぞ」
「ふむ。ならばたまにはケータリングではなく外食で奮発しないか?」
興奮した弧見がダイナミックジャンプを披露する。
「賛成~~! ウチ、本格的な中華とか食べてみた~い!」
「仙は横浜が地元だろ? おいしい店を紹介してくれ」
翌日。
小学生まで住んでいたことを理由に、エスコート役を押し付けられた仙。
二人を連れ、中華料理屋を訪れていた。
「ここは安定しておいしいぜ。オススメ」
「おい、仙」
「はぁ……ウチ、ガッカリだよ」
桃の看板がトレードマークのチェーン店。
それぞれ中華料理を注文し、ドリンクバーも頼む。
「これでは普段と変わらんな」
「いつもはイタリア料理だろ?」
「いや、ファミレスをイタリア料理ってジャンル詐欺じゃん」
普段からジャンル詐欺警察に取り締まられることの多い弧見。
フォークを削岩機のようにしてサラダへ突き刺している。
「ただグロいのはダークファンタジーじゃないんだってさ! アハハハ!」
「ちょ……笑顔が怖い」
「私の感想に湧いたSF警察も、ごちゃごちゃとウルサかったな」
千佳伊が珍しく肩を落とす。
マーボー豆腐を大きな口で頬張る仙。
「最新作だろ? あれはSF設定として良く練られてたけどな。何を言われた?」
千佳伊の瞳が宇宙の深淵を映しこむ。
「難癖だ。あんなの交差点の陰に隠れる白バイと変わらぬ」
はぐらかす千佳伊の様子に、仙が息を吐く。
「その感じだと、指摘に一理あるって思っちまったんだろ?」
「……」
「見てみよ」
弧見がスマホを取り出し、千佳伊の作品の感想欄を開く。
仙も体を密着させて覗き込んできた。
『とてもSFの設定が良いのに、地の文で顔文字を使っている点が台無し』
二人が千佳伊の顔を見る。
「……いやあれだ2000年代の空気感を出すためにアスキーアートをだな……」
しばらく沈黙が降り立った。
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