第二十六話 余剰
千佳伊が株でとんでもなく稼いだ。
金額を見た仙が、ごますり低姿勢モードに入る。
「な、なぁ、それを俺の報酬に回してくれよ」
「これはカケヨムリワードではないから渡せんな」
契約書を印籠のように突きつける千佳伊。
支払う弁護士費用は全額カケヨムリワードと書かれた契約書だ。
「だったら株の儲け方のエッセイを執筆してくれよ!」
「分単位で状況が変わる世界のことを書いても意味はない。それより……」
千佳伊のノートパソコンの画面が煌々と光る。
「メディアジャックの足がかりとしてここを買収する」
「……って、不治テレビじゃねーか!」
「コンプラ騒動で株価が下がっているからな。畳みかけるぞ!」
仙が勇み足な千佳伊の腕を掴む。
「千佳伊、落ち着け。現ナマは足りてんのか?」
「いや、増やしながらで何とかなる」
「テキトーに走って人生の終着駅にいく気か? ちゃんと事前準備しろよ!」
今日は仙に不動明王が憑依した。
「小説投稿も同じだ! 大量のストックを用意してないと息切れすんだよ!」
「いや、何とかなる」
真顔で繰り返す千佳伊。
「書きあがった〝今〟の感覚を、いち早く読者に共有したいのだ」
「それで読まれるんかよ!? 完結まで走り切った作品はいくつある!?」
「……そういやゼロだな」
ほれみたことかと言わんばかりの顔をする仙。
「そんなんじゃ追ってくれる読者つかねーだろ?」
「いや、仙がいつも最速で読んでくれるぞ」
「そりゃ千佳伊から催促されるからな」
頬を桃色に染めた千佳伊が視線をズラす。
「仙に読まれれば……充分だ」
「良くねぇよ! なに赤い顔してしおらしくしてんだ!?」
仙が魂の絶叫をする。
「PV増やせ! 俺の取り分のリワード!」
一通り揉めたのち、買収資金が確保できるまで動かないことで合意。
「まったく、仙はワガママだな」
「お前が言うな」
「仙~、チカチカ~。痴話ゲンカ終わった~?」
隣の部屋に控えていた弧見がそろりと部屋に入る。
「聞き耳を立ててたのか? どこから聞いてた?」
「いーじゃんいーじゃん。で、今の余剰金っていくらくらいあんの?」
弧見が何も聞いていないふうを装う。
追及するのを諦め、千佳伊は腕を組む。
「ふむ。どこぞの通訳がギャンブルで使い込んだ額ぐらいは軽くあるな」
「え? えーーーー!?」
驚く弧見を横目に、仙はスマホのチェック。
「あのさぁ千佳伊。Ⓡ⑱の作品を送りつけるのはやめろよな」
「じ、自信作だ。感想を聞かせてくれ」
顔を真っ赤にした千佳伊が尋ねるも、仙は微妙な表情。
作品は、ひょんなことから同棲する二人が毎晩愛し合う内容だった。
「チカチカってこういう願望があるの?」
「おい、ちょっとは否定しろよ! なんでこんなときだけ黙ってる!?」
数日後。
千佳伊が逮捕された。
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