第二十五話 詐欺
あれから一年。
例の詐欺事件にもサクッと訴訟を起こし、勝訴した。
「なぁ、なんでいまだに俺の部屋で過ごすんだよ?」
「今さらであろう?」
千佳伊と弧見は、今も仙の目の前で着替えている。
「さすがに少しは恥じらいを持て。風呂上がりに部屋に来るな」
「別にいいじゃん! もう色々と見られちゃってるし」
仙が自省の鎖に縛られるほどに、二人は遠慮から解き放たれていく。
「つれないな仙は」
「こんな見え見えのハニートラップに引っかかるわけねーだろ!」
「タイトル詐欺には引っかかるくせにな」
千佳伊は部屋にあるパソコンの電源を入れる。
「おい、なんで俺のデスクトップのパスワードを知ってる!?」
仙の顔がヒクつき、千佳伊の口角はあがる。
「今さらではないか。1024枚のエロ画像フォルダの中は見逃しているしな」
「あの鍵フォルダの中、結構エロいよね~。ああいうの好きなん?」
仙はクッションに顔を埋め、何も言わなくなった。
千佳伊がパワポを編集モードで起動。
「さて、静かになったところで、今日は詐欺について語ろうか」
「色んな詐欺があるよね~。タイトル、ジャンル、あらすじ、最弱……」
弧見が指折り数えていく。
「チカチカ的に一番罪深いと思う詐欺は? やっぱタイトル?」
千佳伊がタイピングを済ませ、エンターキーを強く叩いた。
「これだ! 感想詐欺だ!」
弧見が眼鏡を直し、興味ありげに画面を覗き込む。
「え? それってどんなの?」
「許可もなくAIに読み込ませ、読んでいない感想を送りつける輩のことだ」
「うっわ……最悪なやつだ。見分け方はあるの?」
千佳伊が魔王のようなオーラを放つ。
「あらすじの内容にしか触れず、唯一無二と褒める。そして……」
「「フォローと星を入れておきました!!」」
千佳伊と弧見の声がハモった。
弧見の腕に、リンゴくらいなら握り潰せそうな怒りが浮かぶ。
「あの〝お返し来てくれますよね?〟の雰囲気がイヤ!」
「無駄な活動をするくらいなら執筆をしろと言いたいな」
千佳伊もいまいましげな表情。
「二話で死ぬキャラの存在しないはずの活躍が熱かったとか言われてもな……」
「そうそれ! あらすじに書いてたキャラが最後まで活躍する前提の感想!」
「お互い頑張りましょう? バカか。一人で自家発電でもしてろ」
二人がヒートアップするなか、一人冷静な仙が呟く。
「ところで賠償金が手に入ったけど、これどうする?」
千佳伊が髪をかき上げる。
「株を始めるぞ!」
その日を境にそれぞれの仕事に勤しんだ。
弧見は漫画。仙はヘアサロン。
千佳伊はデイトレーダーとして。
半年を待たず、千佳伊の圧倒的な才能が開花する。
「ふむ。だいぶ資金が増やせたな。そろそろ買収でもするか」
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