第二十四話 欠陥
防音の要望を追加し、どうにかオーダーをまとめた。
見積書を見て、弧見が満足げに頷く。
「周りの雑音を遮断するのは心の平穏のために必要だよね」
「そう、世の中には騒音が多すぎる。ノイジーマイノリティーばかりだ」
ベッドから立ち上がった千佳伊が、窓の外を指差す。
「世の中の創作論はすべて間違っている!」
「お前のもな」
即答する仙。
パジャマから着替える二人を見ないよう必死だ。
窓を全開にし、下着姿の千佳伊が叫ぶ。
「やたらと型にハメようとしすぎだ! 小説とは自由であるべきではないか!」
「読者に分かりやすく、伝わりやすくと考えれば良くないか?」
「いーや、良くない」
ご近所を気にしたのか、仙が慌てて窓を閉める。
千佳伊は主張を続けていく。
「とどのつまり、〝俺の好きな小説と違う〟っていうワガママ理論だろう!」
仙は「お前がな」と言いたくなるのを、必死に喉元で留めた。
そうして新居が建てられ、さっそく引っ越しをする。
特急料金はかかったが、急かしたのもあって三ヶ月で完成した。
だが──。
「雨漏りだな」
「雨漏りだよね」
引っ越し当日の夜。
雨が降ると、ほとんどの部屋で雨水が滴ってきた。
「どうすんだよ? ちょちょ! 何で入ってくる!」
パジャマ姿の千佳伊と弧見が、防御網を突破して仙の部屋に。
「もう一緒に寝たことあるのだから構わんだろう?」
「ウチ、色んな覚悟も完了してるから」
「俺の人権は? なぁ? 人権は?」
唯一、雨漏りをしていない仙の部屋にぎゅうぎゅう詰め。
ベッドも枕も奪い取られ、仙が涙で床を濡らしていた。
翌日。
早朝から口論が続く。
「家を建てるならビッグオーダー♪ の謳い文句に騙されたな」
「ニュースになってるよ! 保険金詐欺なんだって!」
欠陥住宅を建てて、保険金をせしめる。
それを保険会社と結託してやっていたとの報道が流れる。
「おいおい、わざと壊して請求してんのはやりすぎだろ?」
「ゴルフボールとは……越えてはいけない一線を軽く越えているな」
寝不足の仙も、ようやくエンジンが入った。
「悪徳業者に騙されてんじゃねーか!」
「喜べ仙。仕事ができたぞ。骨の髄までしゃぶり尽くしてやれ」
「こんなときだけ弁護士扱いすんじゃねー!」
弧見が背後から、仙の袖を引く。
「ウチの生着替え見たんだから慰謝料払って。弁護士でしょ?」
「不可抗力すぎるぅぅうう!」
新居の防音設備だけは完璧に整っていた。
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