第二十三話 分類
千佳伊と弧見が好き勝手に要望を出す。
それをそのまま業者に提出し、揉めていた。
「おら、返事がきたぞ。要望が細かくて分かりづらいってさ」
細かい上に曖昧なので、正確に見積もれないという妥当な指摘だ。
業者からのメールを仙が二人へ転送する。
「もっと分かりやすくしないとお前らの作品みたくなるぞ」
「ウチのは分かりやすいから大丈夫」
関係ない話と決め込む弧見を横目に、千佳伊が眉を寄せる。
「流し読みをしていては、面白いかどうかもわからんだろう?」
「いや、分かる」
即答する仙。
千佳伊の眉間にシワが寄っていく。
「ちなみに、どういったものが分かりやすいのだ?」
ギョロ目の千佳伊を、仙は真っすぐに見つめ返した。
「ボクシング界のモンスターと呼ばれる男で例えて説明しよう」
生粋のボクシングファンである仙が朗々と語る。
「スローだろうが倍速だろうが、説明がなくても誰でも分かる強さ」
テンションが上がっていく仙。
「小難しいことを考えない。酔っぱらいが観ても分かる。それが読まれる作品」
仙が鼻を鳴らして続ける。
「自己表現と勘違いしている作者が多い。まず娯楽として楽しめるものにしろよ」
「ふん。ボクシングは観ないから分からん」
千佳伊は視線を逸らし、申請書類を手に取る。
「警察の仕事が早くて助かったな。おかげですぐに保険申請できた」
「ウチの小説に湧く警察も仕事が早いよ?」
「あのジャンル警察か? 新作には必ず現れるよな」
話題に食いついた弧見に、千佳伊が視線を向ける。
「ジャンルが曖昧で分かりづらい作品には速攻湧く。それがジャンル警察!」
千佳伊が創作論を語り始める。
今日の警察シリーズは、巷で出没するジャンル警察のようだ。
「そんなハッキリと分けられる訳がなかろう? たわけが!」
「いや、変なら突っ込まれるのは仕方なくね?」
「作者が決めたのがルールだ! おとなしく従えないのなら読者なぞやめろ!」
そのまま投稿サイトのジャンル不備へと話が飛ぶ。
「ボクシングで思い出したが、スポーツはどのジャンルに入れれば良いのだ?」
「う~ん、ドラマとか、ラブコメ?」
「そのように消去法で人間関係のジャンルしか選べないのが問題なのだ!」
強く地団駄を踏む千佳伊。
「様々な要素にまたがるのに、己の物差しにはめて〝違う〟は違うだろう?」
「気持ちは分からんでもないが落ち着け千佳伊」
「そうだよ! もっと言ってやってチカチカ!」
作者の想いが伝わらないと憤っていたそのとき──。
──ドンドン!
弧見の安アパート。
下の住人からの天井への抗議に、三人は口を閉ざした。




