第二十二話 号泣
言いがかり、難癖。
千佳伊がリークした情報はそう呼べる代物だ。
だが、なぜかネットでは支持された。
「ついに記者会見へ引きずりだしたぞ」
千佳伊がテレビをつけ、弧見が糸目でそれを見ている。
「ハハハ……もう好きにしてよ」
「なんだ弧見? いい加減に慣れろ」
自宅のように寛ぐ千佳伊。肩身が狭そうに押し黙る仙。
千佳伊と仙は、一人暮らしをする弧見の家に転がり込んでいた。
狭い1Kではプライベートもへったくれもない。
「ウチの下着も全部みられたし」
「ご、ごめんな弧見」
「くだらない。ほれ、会見が始まるぞ」
テレビには、千佳伊とリーク合戦をしていた国会議員が映る。
『資料を開きますので、マイクを下げていただいても宜しいか?』
記者からの質問が続き、国会議員は号泣し──豹変した。
『ですからぁあ! ご指摘を真摯に受け止めて~! 議員という大きな~! カッテゴリーに比べたら~! 不倫んもぉおおぉ、ネェェッツッア、愛も~~~! 放火なんテェェ全く記憶にぃぃぃなくぅぅゥウ~!』
千佳伊がテレビのボリュームをさげる。
「まるで弧見の小説のようだったな」
「右に同じ」
「え~~!? ウチの作品ってあんなひどくないし!」
まるで理解していない弧見。
千佳伊は小さく息を吐いた。
「仙、引導を渡してやれ」
「一人称や主語を省略、セリフに奇声が多い、全体的に支離滅裂」
「だそうだぞ弧見。理解できたか?」
うんうんと弧見も頷く。
「さっきの号泣議員は聞くに堪えなかったよね」
千佳伊の目が伏せられる。
「そうか。どうやら感想受付停止中のようだな」
「誤字報告も止めてんだろ?」
「それよりチカチカ! ウチのパンツを勝手に穿かないで!」
数日後。
その国会議員は辞職し、平穏が訪れた。
さらにその翌日。
警察から連絡が入る。
『放火ではなく、電気コードのショートによる失火でした』
「そうか。保険はおりるのか?」
『それは保険会社に相談してください。ご協力ありがとうございました』
電話を切る千佳伊。
その背後から仙が鋭く睨んでいた。
「おい。完全に冤罪じゃねーか。既に辞職してしまってんぞ?」
「さぁて火災の件でもあるし、水に流すということで……」
しらを切られ、話題は保険金を使っての建て替えへと移っていく。
「ほれ、プレハブサロンではなく、しっかりしたのを建てられるぞ」
差し出された資料を受け取った仙は、眺めつつ夢を広げていく。
「三台入れられるのいいな。この設備も欲しい」
「ウチはユニットバスのトイレとバスの分離! これだけは絶対!」
弧見も負けじと食らいつく。
新居の話題に三人は夜通し盛り上がった。




