第二十一話 放火
サイレンの音が鳴り響く。
轟々と自宅が燃え、視界は赤で覆いつくされた。
消防隊の尽力で鎮火した頃には焼け落ちた柱だけが残る。
併設のヘアサロンも全焼し、仙はそれを呆然と眺めていた。
「チカチカ! 仙! 心配したよ!」
弧見はニュースを見て、慌てて駆けつけていた。
だけど警察官と救急隊員に阻まれる。
「世帯主の勘 千佳伊さん。こちらへ」
二人は「煙を吸った可能性があるから」と病院へ搬送されていく。
弧見の叫び声だけが救急車を見送っていた。
──翌日。
病室で警察の調査報告と事情聴取を受ける。
「放火の痕跡がありました。お二人に心当たりはありますか?」
「だから何度も脅迫を受けていると相談したではないか!」
「いえ、生活安全課とは部署が違うので、こちらではまだ聞いておりません」
病室だというのに千佳伊が止まらない。
「書いてあるのに〝知らない〟とか〝書いてなかった〟なぞ難癖だろう!」
「千佳伊、今は聴取だから抑えろよ」
「黙れ! この際だから言っておく!」
鼻息を荒くする千佳伊。
「勝手に流し読みをし、勝手に忘れて、いちゃもんをつけてくる有象無象!」
千佳伊が近くにあった瓶を手に取って振り回す。
「だからと言って直前に回想を入れれば、回想厨やご都合のレッテル貼り!」
「ちょ! それ尿瓶!」
仙の警告も無視し、魂の絶叫は続く。
「〝不要なものを書くな〟と〝全てを描写しろ〟の派閥対立もうんざりだ!」
千佳伊は、瓶の口を警察官へと突きつける。
「世の中には! 必要な取り締まりをしない、不要な警察が多すぎるのだ!」
ぐいぐいと瓶を警察官の顔へ押し付けていく。
「伏線警察、矛盾警察、時系列警察……まとめて要らんわ!」
肩で息をした千佳伊が瓶を投げ捨てる。
「私は言ったぞ! ちゃんと調書に書いておけ!」
「いや、書かねーよ」
警察官による即座のツッコミ。
床に落ちる直前に尿瓶を受け止めた仙も、思わず警察官を二度見。
「我々は必要な側の警察ということを、行動で示しましょう」
そう言い残し、警察官は病室を立ち去った。
入れ替わりで弧見が病室へ飛び込んでくる。
「チカチカ、仙。大丈夫?」
「弧見、家の方はどうなってる? 残ってたものはあったか?」
仙が尋ねるも、弧見は緩く首をふった。
「ダメ、全滅。規制線が張られてて、近づけなかった」
「ふむ。反撃するぞ。放火犯を週刊誌へリークする」
千佳伊からの新情報に、目を剥く仙と弧見。
「聴取のときには言ってなかったろ!? どうゆうことだ!?」
「チカチカは真犯人に心当たりあるの?」
帰り支度を済ませた千佳伊が頷く。
「あの国会議員に違いない。それでは、弧見。世話になる」
「え?」




