第十七話 概要
数日後。
仙は遊びに来ていた弧見へ、事態のあらましを説明する。
「災難だったねぇ。チカチカと一緒にいると仕方ないよ~」
漫画を描きながら、興味なさげに言う弧見。
「常時巻き込まれアトラクションだし~」
「たしかに。ほれ、メシできたぞ」
仙が料理をテーブルへ運ぶ。
湯気の漂うハンバーグからは圧倒的な肉の香り。
匂いに誘われたのか、千佳伊が部屋から出てきた。
「ふむ。60点だな」
「んだよ? ふるさと納税で手に入れた絶品ハンバーグだぞ?」
「そっちではない。さきほどの弧見への説明のことだ」
しっかり聞き耳を立てていたらしい。
千佳伊のダメ出しが始まる。
「あらすじを語るのなら、起承転結を盛り込んだ上で結論は避けるべきだ」
「は? 何言ってる?」
「魅力的なところで止めるべきだと言っている」
どうやら千佳伊は、小説のあらすじ論が語りたいようだ。
「あのなぁ……都知事と揉めたことを曖昧にしてどうすんだよ?」
「暴言のシーンだけで良いだろ。それで揉めるだろうと読者に思わせればいい」
「アハハ、自分で暴言って認めちゃうんだ?」
先に料理を平らげた弧見が、笑いながら言う。
「でもさ、あらすじに書いてあることが一向に本編で出てこないのもあるよね?」
「あぁ、あらすじ詐欺か」
「書く予定があっても、そこまでたどり着いてないだけかも知れないだろ?」
仙が珍しく作者側を擁護すると、二人の目の色が変わる。
「あらすじの範囲すら書けないなら、創作なぞやめてしまえ!」
「エタらせている作者を甘やかしたらダメだよ仙」
仙は眉を寄せる。
「お前らもエタらせてんじゃん?」
「ウチはあらすじの範囲は書き終えてます~。その後は考えてないだけ」
「書く気はある。作者のやる気をそぐようなことを言うな」
仙が肩を竦めた。
「ま、せいぜい頑張れ。サグラダファミリアとどっちが先か見ものだな」
「アハハ、完成するわけないって言ってる。ウケル」
爆笑する弧見。
すまし顔の千佳伊がフォークを手に取った。
「ふむ。60点だな」
「しつこいぞ千佳伊」
「そっちではない。この在庫処分と思われるハンバーグのことだ」
肉を頬張りつつ、千佳伊が文句を垂れる。
「明らかに余り物を押し付けている。そういや作者にもいるな」
千佳伊のフォークが肉に力強く突き立てられた。
「没ネタのような作品をアップするやつはどうかと思う」
「あー、中途半端なワンアイデアで書き始めてミカン箱にする作者か」
仙は「うんうん」と頷く。
そこへ、スマホを眺めていた弧見が奇声をあげた。
「ねぇ、アンタらが都知事と揉めた音声がネットにあがってるんだけど?」
「「は?」」




