第十四話 粘着
尾茂井 弧見が今日も遊びにきた。
応接室のテレビを三人で見ている。
テレビでは連日のように、女性だけを狙う殺傷事件のニュースが続く。
「弧見、お前も一応は女なんだし、気を付けろよな」
「ん? チカチカなら危ないかもね。でも、ウチなら大丈夫っしょ」
自己肯定感の低い弧見は、「美人じゃないからあり得ない」と繰り返す。
眉根を寄せる黄泉 仙。
「テレビに出演したんだから顔も割れてるし、気を付けろよ」
弧見がハンドバッグから眼鏡を取り出し、かけてみせた。
「外では変装しているから大丈夫だって」
「けどな」
「あーもう、しつこいよ仙は」
しばらく静観していた勘 千佳伊。
仙の隣へ、体を密着させるかのように座った。
「……なんだよ? 近いぞ千佳伊」
「心配するなら私にしておけ。それより、粘着指摘は良くないと思う。感想もな」
千佳伊が最近もらった感想の話題を始めだす。
「あんの語彙厨どもは……」
カッと目を見開く千佳伊。
「ちょっと同じ表現が被っただけで何度も何度も、飽きないのか!?」
「二人もくっつき過ぎ。ウチの目の前で見せつけないで」
「俺はなんもしてねーぞ? 千佳伊が勝手にさ」
言い訳しようとした仙の頬を、鷲掴みにして千佳伊が止める。
「ふぁにふゅんだよ?」
「お前もだ仙! 逆接の指摘をいい加減やめろ!」
仙は千佳伊の手を振り払う。
「いや、お前らのは多すぎるんだよ」
確かに仙は、二人の作品を読むたびに逆接を指摘している。
仙がノートパソコンを取り出し、千佳伊たちの作品を表示した。
「二千文字辺りの平均だと千佳伊は〝だが〟が13回、弧見は〝でも〟が15回もある。いくらなんでも多すぎだ」
淡々と仙は続ける。
「使いたいならそれでも構わないが、せめて他のも使って偏らないようにしろよ」
千佳伊と弧見はキリッとした表情で言う。
「だが断る」
「でも遠慮する」
「だからそれをやめろっつってんだよ!」
翌日。
何を思い立ったのか、千佳伊がSNSで行動を開始。
色々なストーカーの目撃情報に「粘着するな」という指摘を始める。
粘着するなとリツイートする粘着を行っている状態だ。
それは酷い泥沼のレスバに発展し、今に至る。
「千佳伊はそんなことするより早く続きを書けよ」
「次回作のネタと取材をかねている。よし、コイツを犯人に仕立てあげるぞ」
千佳伊は「フェイクの目撃情報を流していたコイツが犯人」と言いだした。
真に受けたメディアが報道で取り上げ、何故か警察まで動く。
数日後。
ニュースを見た仙の呼吸が一瞬止まる。
「おいおい、嘘だろ。警察も前からマークしてたんかよ」
逮捕されたのは、千佳伊が難癖をつけた相手だった。




