第99話 削られる側
森の空気が、張り詰めていた。
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動けば、斬られる。
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止まれば、詰められる。
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逃げ場は、ない。
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「……行くぞ!」
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ユウマが踏み込む。
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迷いを振り払うように。
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一直線。
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リアナへ。
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だが――
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「遅いッス」
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消えた。
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視界から。
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「なっ……!?」
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次の瞬間。
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横。
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「っ!!」
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咄嗟に剣を振る。
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火花。
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「いい反応ッス」
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軽い声。
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だが。
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重い。
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腕に伝わる衝撃が、それを証明する。
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(速い……!)
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ただ速いだけじゃない。
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無駄がない。
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“最短で斬りに来ている”
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「くそっ……!」
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距離を取る。
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だが。
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取れない。
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「逃がさないッスよ」
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すぐ隣。
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間合いの内側。
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張り付かれている。
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「ユウマ!」
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ミサキの声。
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光が降る。
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身体が軽くなる。
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「……っ!」
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踏み込み直す。
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速くなった。
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さっきより。
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剣が届く。
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「――はぁぁっ!!」
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振り抜く。
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「おっと」
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だが。
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躱される。
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紙一重。
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そして。
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「甘いッス」
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反撃。
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「ぐっ……!」
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受ける。
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衝撃。
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だが。
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今度は――
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踏ん張れる。
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「……いける!」
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ユウマの声に、ミサキが応える。
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「強化、維持する……!」
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さらに光。
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重ねがけ。
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筋力。
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速度。
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防御。
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全てが底上げされる。
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世界が、少しだけ“遅く”見える。
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「はぁぁぁッ!!」
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連撃。
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速い。
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重い。
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今度は。
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リアナが、受ける側。
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「……ほう」
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わずかに、目が細くなる。
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「やるッスね」
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受け流す。
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だが。
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押し込まれる。
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一歩。
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また一歩。
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距離が、開く。
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「今だ!」
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ユウマが踏み込む。
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その瞬間。
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「――読めてるッス」
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足元。
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刈られる。
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「っ!?」
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体勢が崩れる。
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地面に手をつく。
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その頭上。
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刃。
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「危ない!」
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ミサキの声。
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光が弾ける。
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防御補助。
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刃が弾かれる。
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「……助かった」
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息を整えるユウマ。
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リアナは、一歩引く。
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距離を取る。
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そして。
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じっと見る。
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二人を。
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「なるほど……」
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小さく呟く。
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(回復だけじゃないッスね)
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(強化も同時……)
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(重ね掛け……維持型……)
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戦いながら、分析する。
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視線は冷静。
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呼吸も乱れていない。
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(厄介なのは……あっちッスね)
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ちらりと。
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ミサキを見る。
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ミサキがびくりと肩を震わせる。
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「……っ」
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ユウマが前に出る。
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庇うように。
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「こっち見てろ!」
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叫ぶ。
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リアナは、軽く笑う。
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「見てるッスよ」
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「ちゃんと」
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踏み込む。
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再び、近距離。
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刃と刃がぶつかる。
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火花。
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連撃。
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受ける。
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返す。
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拮抗。
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先ほどまでの一方的な展開とは違う。
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だが。
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リアナの目は、変わらない。
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(……まだ余裕あるッスね)
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(なら――)
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時間を測る。
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感覚で。
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呼吸。
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動き。
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魔力の流れ。
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「……そろそろッスか」
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ぽつりと呟く。
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その瞬間。
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ユウマの動きが、わずかに鈍る。
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「っ……!?」
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重い。
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身体が。
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「ユウマ……!」
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ミサキが焦る。
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「もう一度……!」
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詠唱。
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だが。
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間に合わない。
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一瞬の“空白”。
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その隙を。
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リアナは逃さない。
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「やっぱりッスね」
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距離を取る。
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構え直す。
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「だいたい三分」
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正確に、言い当てる。
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ミサキの顔が青ざめる。
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「そんな……」
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ユウマが歯を食いしばる。
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(見抜かれた……!)
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リアナは、ゆっくりと息を吐く。
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「厄介ッスね」
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本音。
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だが。
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次の言葉は。
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冷たい。
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「じゃあ――」
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視線が、動く。
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ユウマから。
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ミサキへ。
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「先にそっちから無力化するッス」
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ミサキの心臓が跳ねる。
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「え……」
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一歩、後ずさる。
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だが。
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遅い。
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リアナが、踏み込む。
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一直線。
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迷いなく。
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ミサキへ。
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「やめろッ!!」
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ユウマが叫ぶ。
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だが。
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間に合わない。
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距離が、ある。
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手が、届かない。
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ミサキの視界に。
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迫る刃。
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(――来る)
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恐怖が、身体を縛る。
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動けない。
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声も出ない。
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ただ。
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迫る。
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その瞬間。
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ユウマの中で。
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何かが、弾けた。
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