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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第100話 守る覚悟

迫る。



一直線に。



迷いなく。



ミサキへ。



「――ッ!!」



足が、動かない。



恐怖が、縫い止める。



(来る――)



刃が、視界を埋める。



時間が、引き延ばされる。



呼吸が止まる。



思考が白くなる。



その瞬間。



「やめろォォォッ!!!!」



絶叫。



背後から。



地面を蹴り砕く音。



ユウマ。



間に合わない距離。



それでも。



伸ばす。



手を。



届かないと分かっていても。



(またかよ……!)



脳裏に、よぎる。



倒れていった背中。



守れなかった命。



あの時の、感触。



(何やってんだよ、俺は……!)



剣を持って。



戦う力を持って。



それでも。



守れないのか。



(違うだろ)



心の奥から、声がする。



(守るって決めただろ)



誰に?



決まっている。



目の前で震えている少女に。



「……守る」



低く。



だが、はっきりと。



「何があっても……ミサキだけは守る」



覚悟が、定まる。



その瞬間。



世界が、変わった。



音が、消える。



風が止まる。



色が、薄れる。



ただ一つ。



自分の心臓の音だけが、響く。



ドクン。



ドクン。



ドクン。



そして。



手に握った剣が――



“応えた”



「――っ!?」



震える。



熱を帯びる。



まるで、生きているように。



そして。



声が、響いた。



【――ようやく、届きました】



静かで。



だが。



圧倒的な存在感。



ユウマの動きが止まる。



「……誰だ」



問いかける。



剣へ。



【ワタシは、この剣に宿るもの】



【名を――ラグエル】



空気が、震える。



見えないはずの何かが。



そこに、“いる”と分かる。



「何が、どうなってる……?」



尊厳な声が。



ユウマにははっきりと聞こえる。



【大天使ラグエル】



【貴殿に問います】



時間が止まった世界で。



その声だけが、響く。



【何のために、剣を振るうのですか】



一瞬。



迷いが浮かびかける。



だが。



すぐに消える。



答えは、もう決まっている。



「……守るためだ」



迷いなく。



言い切る。



【誰を】



「目の前にいるやつを」



【そのために、力を求めますか】



ユウマは、強く剣を握る。



「当たり前だろ」



「ここで止まるわけにはいかねえんだよ!」



その言葉に。



一瞬の、静寂。



そして。



【――承認】



空気が、震えた。



【貴殿に、力を貸しましょう】



次の瞬間。



世界が、戻る。



時間が動き出す。



刃が、目前に迫る。



だが。



もう遅い。



「――ッ!!」



ユウマの剣が、閃く。



速い。



先ほどとは、比べ物にならない。



リアナの瞳が見開かれる。



「なっ――!?」



弾かれる。



そのまま。



衝撃。



吹き飛ぶ。



木に叩きつけられる。



「がっ……!」



土煙が舞う。



ミサキの前に、ユウマが立つ。



剣を構えたまま。



呼吸は、乱れていない。



さっきまでとは、別人。



「ユウマ……?」



ミサキが、震える声で呼ぶ。



振り返らない。



ただ前を見る。



「……大丈夫だ」



静かな声。



「もう、守れる」



その言葉に。



ミサキの胸が締め付けられる。



リアナが、ゆっくりと立ち上がる。



服の土を払う。



そして。



ユウマを見る。



じっと。



「……雰囲気、変わったッスね」



軽い口調。



だが。



その目は、鋭い。



「さっきまでとは、別人ッス」



一歩、踏み出す。



「それが――」



わずかに口元が上がる。



「勇者の力、ってやつッスか」



ユウマは答えない。



ただ、剣を構える。



その剣から。



確かに“何か”が溢れている。



ミサキが小さく呟く。



「……ユウマ、その剣……」



「なんだか……違う」



ユウマは、短く答える。



「……ああ」



「力を借りてる」



「この剣から」



ミサキが首を傾げる。



「剣……?」



「私には、何も……」



ユウマが言う。



「声がするんだ」



「俺にだけ」



その言葉に。



リアナが小さく息を吐く。



「なるほどッスね」



「そういうことッスか」



理解する。



完全ではない。



だが。



十分。



「……厄介度、跳ね上がったッス」



双剣を構え直す。



先ほどより、低く。



重心を落とす。



完全に、“本気”。



「でも――」



視線が、鋭くなる。



「だからって、退く理由にはならないッス」



その言葉。



揺るがない。



役目。



それが、全て。



ユウマもまた、一歩踏み出す。



「……俺もだ」



短く言う。



「ここで止まるわけにはいかねえ」



森の空気が、震える。



ぶつかる。



覚悟と覚悟。



役目と意志。



その中心で。



剣が、静かに光を放った。




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