第93話 暴と剛
煙の中。
視界は悪い。
だが――
気配は、濃い。
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「ガハハハハ!!!」
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笑い声が、響く。
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「いいなァ!!」
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「ちゃんと来やがった!!」
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ガイは足を止めた。
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目の前。
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巨大な影。
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戦槌を肩に担ぎ。
立っている。
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「テメェが……」
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聖斧を握る。
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「さっきから暴れてたヤツか」
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ガルドが歯を見せる。
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「そういうこったァ!!」
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一歩。
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踏み出すだけで、地面が沈む。
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「来いよ」
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ガイが斧を構える。
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「ぶっ壊してやる」
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その瞬間。
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両者、同時に動いた。
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激突。
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ドゴォォン!!!
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斧と槌。
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真正面。
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力と力。
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純粋な“剛”のぶつかり合い。
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「――っ!!」
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ガイの足が沈む。
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(重っ……!)
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だが。
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笑う。
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「いいじゃねぇか……!!」
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押し返す。
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弾く。
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距離が開く。
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ガルドが目を細める。
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「ほぉ?」
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「やるじゃねぇか」
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再び踏み込む。
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横薙ぎ。
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ガイは身を低くする。
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避ける。
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そのまま、斧を振り上げる。
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「オラァ!!!」
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叩きつける。
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衝撃。
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ガルドの体が、わずかに沈む。
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「……効いてんじゃねぇか」
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ガイが笑う。
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だが。
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ガルドは、笑っていた。
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「効いてるなァ!!」
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戦槌を振り上げる。
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「だからどうしたァ!!!」
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振り下ろし。
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地面ごと、叩き潰す。
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「チッ!」
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ガイは飛び退く。
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衝撃波。
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視界が揺れる。
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(なんだこのパワー……!)
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だが。
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踏み込む。
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止まらない。
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斧を振るう。
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受ける。
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弾く。
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殴り合い。
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数合。
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十合。
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その時。
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「……あ?」
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ガイの眉が動く。
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違和感。
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斧を引いた時。
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わずかに。
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“引っかかる”
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「……なんだ?」
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もう一撃。
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叩き込む。
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ガルドが受ける。
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その瞬間。
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「チッ……」
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ガイが舌打ちする。
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斧の刃。
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ほんのわずかに。
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欠けている。
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「は?」
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あり得ない。
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神造兵器。
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普通なら――
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「おいおいおい……」
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ガルドも気付いた。
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戦槌を見下ろす。
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こちらも。
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削れている。
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「マジかよ……」
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笑う。
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「アダマンタイト入ってんだぞ、これ」
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軽く振る。
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「それで刃こぼれかよ」
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顔を上げる。
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「バケモンだなァ」
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ガイも笑う。
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「そっちの武器もな!!」
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構え直す。
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「だが――」
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一歩踏み込む。
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「まだだろ?」
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ガルドの目が細くなる。
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「……ああ」
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ニヤリと笑う。
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「まだ足りねぇな」
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次の瞬間。
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ガイの動きが、変わる。
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速い。
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重い。
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鋭い。
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「――っ!?」
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ガルドが初めて、受けに回る。
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「オラァ!!!」
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斧が叩き込まれる。
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押し込まれる。
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「ははっ……!」
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ガイが笑う。
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「なんだこれ……!」
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体が軽い。
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力が溢れる。
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止まらない。
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「いいぞ……!」
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「もっと来いよ!!!」
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ガルドが笑う。
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だが。
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その目は、変わっていた。
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「……来たな」
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低く呟く。
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戦槌を構える。
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「いいぜ」
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「どこまで上がるか――」
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「見てやるよォ!!!」
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再び激突。
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轟音。
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だが。
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その裏で。
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確実に。
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削れていく。
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武器が。
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そして。
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“限界”が。
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まだ、誰も気付いていない。
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