表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/100

第80話 囲い込む者たち

 王城、謁見の間。


 夜。


 人払いされた空間に、三人の影があった。


 玉座に座る王。


 その傍らに立つ宰相。


 そして――


 騎士団長、レオン。


 静寂が支配している。


「……見たか」


 王が口を開く。


 低く、重い声。


「は」


 レオンは短く応じる。


 視線はまっすぐ前。


 揺るがない。


「想定以上、であろう」


 宰相が言う。


 細い目が、わずかに細められる。


「数ヶ月であの水準。異常だ」


 否定はしない。


 事実だった。


「ですが……」


 レオンが口を開く。


「未完成です」


 即答。


 空気がわずかに動く。


 王が片眉を上げる。


「未完成、か」


「は」


 レオンは続ける。


「連携は形になりました。しかし――」


 一瞬、間を置く。


「個々の力が足りない」


 宰相が鼻で笑う。


「それでも兵士は圧倒した」


「訓練です」


 レオンは一歩も引かない。


「実戦とは別物」


 沈黙。


 王がゆっくりと頷く。


「慎重だな、レオン」


「当然です」


 短く。


「彼らは“切り札”」


 その言葉に、空気が変わる。


 宰相の目が細まる。


「だからこそだ」


 宰相が口を開く。


「囲い込む必要がある」


 レオンの視線がわずかに動く。


「……囲い込み、ですか」


「そうだ」


 宰相は淡々と続ける。


「彼らはまだ若い」


「未熟であり、揺らぎやすい」


「ならば」


 わずかに口元が歪む。


「王国に依存させればよい」


 その言葉に。


 レオンの眉が、わずかに動いた。


「具体的には」


「環境だ」


 宰相は言う。


「住居、食事、金、名誉」


「そして――」


 一瞬、間を置く。


「女」


 静寂。


 空気が、冷える。


「……やめていただきたい」


 レオンが言う。


 低く。


 抑えた声。


「ほう?」


 宰相が笑う。


「何が問題だ」


「関係性が崩れます」


 即答だった。


「彼らはパーティです」


「信頼で成り立っている」


「そこに外部から歪みを入れれば――」


「崩壊します」


 言い切る。


 王が目を細める。


「それは困るな」


 ぽつりと呟く。


 だが――


 宰相は首を振る。


「逆だ」


「縛るのだ」


 レオンが睨む。


「依存させ、離れられなくする」


「それが国家運用というものだ」


 冷たい言葉だった。


 レオンの拳が、わずかに軋む。


「彼らは兵器ではありません」


 静かに言う。


「人間です」


「知っている」


 宰相は即答する。


「だからこそ扱いやすい」


 沈黙。


 空気が張り詰める。


 王が口を開く。


「レオン」


「は」


「お前の懸念は理解する」


 一拍。


「だが、時間がない」


 その一言が、重く落ちる。


「魔族は動いている」


「我らも動かねばならぬ」


 視線が、真っ直ぐに刺さる。


「多少の歪みは、許容しろ」


 命令だった。


 レオンは、目を閉じる。


 一瞬。


 ほんの一瞬だけ。


 そして――開く。


「……承知しました」


 低く、答える。


 だがその声は。


 わずかに硬い。



 王城の廊下。


 レオンは一人、歩いていた。


 足音だけが響く。


(……最悪だ)


 心の中で吐き捨てる。


 分かっている。


 王の言うことも。


 宰相の理屈も。


 正しい。


 だが――


(やり方が、腐っている)


 あの六人の顔が浮かぶ。


 未熟だ。


 だが真っ直ぐだ。


 だからこそ――


(壊れる)


 外から歪めれば。


 簡単に。


「……チッ」


 小さく舌打ちする。


 だが、止められない。


 命令だ。


 従うしかない。


 拳を握る。


(せめて)


(崩れすぎないようにする)


 それが、今の自分にできる限界だった。



 一方。


 王都の一角。


 夜の街。


 灯りが揺れる。


 笑い声が響く。


 その中に――


 二つの影。


「いやー、王都マジでやべぇな!」


 ガイが笑う。


 酒を片手に。


「……うるさい」


 ソウタが顔をしかめる。


 だが、その表情は完全に嫌そうではない。


「いいじゃんたまには」


「ずっと訓練とか死ぬわ」


 ガイが肩を組む。


「ほら、あっち行こうぜ」


 視線の先。


 華やかな店。


 女性たちの姿。


 笑顔。


 手招き。


「……おい」


 ソウタが足を止める。


「これ、絶対ヤバいやつだろ」


「何が?」


「何がって……」


 言葉に詰まる。


 だが。


 足は、完全には止まっていない。


「まあまあ」


 ガイが笑う。


「王国が用意してくれてんだろ?」


「ありがたく使っとけって」


 軽い。


 あまりにも。


 だが――


 その裏にあるものに。


 まだ気づいていない。


「……ちょっとだけだぞ」


 ソウタが呟く。


 小さく。


 言い訳のように。


 二人は、光の中へ入っていく。



 その様子を。


 遠くから見ている影があった。


 黒装束。


 王国軍暗部。


「……入ったか」


 小さく呟く。


「予定通りだ」


 もう一人が応じる。


「残りは?」


「時間の問題だ」


 静かな声。


「人間は、弱い」


 淡々と。


「欲で、簡単に揺らぐ」


 夜風が吹く。


 灯りが揺れる。


 その中で――


 歯車が、静かに動き始めていた。




もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ