第74話 初めての壁
朝の訓練場は、やけに広く感じた。
昨日と同じ場所のはずなのに。
踏みしめる土の感触が、やけに遠い。
ユウマは剣を握る。
(……また、あの人とやるのか)
視線の先にはレオン。
変わらない。
昨日と同じ、いや――昨日よりも遠く見える。
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「顔が硬いな」
レオンが言う。
「まあいい。今日は連携を見る」
連携。
その言葉に、全員の視線がわずかに交差する。
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「今回はちゃんと役割分担しようぜ」
ソウタが魔導書を叩きながら言った。
「タンク、前衛、後衛。基本だろ?」
ガイが鼻で笑う。
「めんどくせぇな。ぶっ壊せばいいだろ」
「それで昨日負けたんだろ」
「うるせぇ!」
軽口。
だが、どこかぎこちない。
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レンが一歩前に出る。
「私が前に出ます。防御は任せてください」
ミサキが続く。
「回復、頑張るね……!」
ユウマは頷く。
「……頼む」
そして、少し迷ってから言った。
「先生は……自由に動いてください」
カズマは短く答える。
「了解」
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レオンが剣を抜く。
「来い」
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レンが前に出る。
盾を構える。
「いきます!」
ガイが突っ込む。
「オラァ!!」
斧が振り下ろされる。
だが――
スカッ。
「……あ?」
空振り。
勢いのまま、斧が地面に突き刺さる。
ズンッ!!
「ちょ、待て――」
抜けない。
「おい!!」
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その瞬間。
レオンが動いた。
ドンッ!!
「ぐっ!?」
レンの盾に衝撃。
体が持っていかれる。
踏ん張る。
――が。
手が滑る。
ガンッ!!
盾が地面に落ちた。
「しまっ――」
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ユウマが踏み込む。
「はあっ!」
剣を振る。
だが。
軽くいなされる。
バランスを崩す。
そのまま――
ドンッ!!
吹き飛ぶ。
「がっ……!」
受け身が取れない。
背中から叩きつけられる。
息が止まる。
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「うわ、ちょ――!」
ソウタが魔法を展開する。
「当たれって!」
光弾。
飛ぶ。
だが。
明後日の方向へ。
「は?」
「なんでそっち行くんだよ!?」
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「ミサキ!回復!」
誰かが叫ぶ。
「う、うん!」
杖を握る。
詠唱。
――何も起きない。
「え……?」
もう一度。
焦る。
言葉が詰まる。
「なんで……出ないの……」
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崩壊。
完全に。
連携どころじゃない。
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その中で。
一つだけ。
影が動いた。
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カズマ。
消える。
レオンの背後。
刃。
キィン!!
受けられる。
だが。
一撃は通っている。
「……いい動きだ」
レオンが言う。
カズマは距離を取る。
「まだだな」
それだけ。
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次の瞬間。
全員、地面に転がっていた。
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静寂。
風の音だけが響く。
⸻
「……終わりだ」
レオンの声。
誰も動けない。
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ガイが地面を殴る。
「くそ……!」
斧はまだ刺さったままだ。
レンは盾を拾う。
手が震えている。
「私が……落とすなんて……」
ソウタが笑う。
乾いた笑い。
「クソゲーすぎるだろ……」
ミサキは俯いている。
「ごめん……回復……できなかった……」
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ユウマは起き上がれなかった。
息が苦しい。
体が動かない。
(……何もできなかった)
剣を握る。
震えている。
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その視界の端で。
カズマが立っている。
普通に。
息も乱れていない。
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差。
圧倒的な差。
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レオンが言う。
「これが現実だ」
「連携以前の問題だな」
淡々と。
事実だけを告げる。
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「だが」
一拍。
「知ったことは無駄ではない」
それだけ言って、背を向けた。
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残された六人。
誰も言葉を出さない。
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しばらくして。
ユウマはゆっくりと起き上がった。
体が重い。
頭も回らない。
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(……本当に)
喉の奥で、言葉にならない思いが渦巻く。
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(俺たち)
(強くなれるのか……?)
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答えは、出なかった。
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ただ一つだけ。
はっきりしていることがある。
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今のままでは。
何もできない。
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風が吹く。
土埃が舞う。
その向こうに――
戦場が、ある。
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