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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第67話 鍛冶師の答え

炉の火が揺れている。


魔王城・研究工房。


深紅の炎がゆらゆらと揺れ、鉄の匂いと魔力の熱が空間に満ちていた。


カン。


カン。


カン。


ハンマーの音が一定のリズムで響く。


その中心にいるのはタクミだった。


無言で金属を叩き続けている。


リアナは少し離れた場所で腕を組んでいた。


「……なんか怖いッス」


リゼが短く言う。


「……集中」


タクミは答えない。


ただ、叩く。


カン。


カン。


カン。


やがて――


手を止めた。


金属片を持ち上げ、刃の断面をじっと見つめる。


そして呟いた。


「……違う」


リアナが近づく。


「何がッス?」


タクミは金属を炉の横に置いた。


「強くはなってる」


リアナ


「ッスよね」


「四天王の武器、前より全然すごいッスよ?」


リゼも頷く。


「……魔力伝導、向上」


「耐久、増加」


だが。


タクミは首を振った。


「それでも」


一言。


「届かない」


工房が静まる。


リアナが小さく言う。


「……勇者ッスか」


タクミは頷いた。


「神造兵器」


その名前だけで、空気が重くなる。


リゼが呟く。


「……壁」


タクミ


「そうだ」


「壁がある」


リアナは剣を見た。


「でも素材はかなりいいッスよ?」


タクミ


「素材は問題じゃない」


リアナ


「え?」


タクミは炉の火を見る。


炎の中で金属が赤く輝いていた。


「神造兵器」


「構造が違う」


リゼの目がわずかに細くなる。


「……構造?」


タクミは頷いた。


「普通の武器」


「金属の塊」


「神造兵器」


「魔力が流れてる」


リアナ


「流れてる?」


リゼがすぐに理解する。


「……魔力流路」


タクミ


「そうだ」


炉の横の机に図面を広げた。


金属の断面図。


線がいくつも描かれている。


リアナが首を傾げる。


「これ何ッス?」


タクミ


「道」


リアナ


「道?」


タクミ


「魔力の道」


リゼの目が大きくなる。


「……回路」


タクミは頷いた。


「ミスリルは魔力を通す」


「でも」


指で図面を叩く。


「ただ流れるだけ」


「それじゃ弱い」


リアナ


「じゃあどうするッス?」


タクミ


「流れを作る」


リアナ


「???」


リゼが小さく呟く。


「……増幅」


タクミは頷く。


「そうだ」


炉の中の金属を取り出した。


ミスリル。


オリハルコン。


アダマンタイト。


三種類の金属。


リアナが驚く。


「全部使うッスか!?」


タクミ


「役割がある」


金属を並べる。


「ミスリル」


「魔力伝導」


「オリハルコン」


「魔力増幅」


「アダマンタイト」


「骨格」


リゼが小さく息を呑む。


「……複合構造」


タクミ


「そうだ」


リアナ


「でもそんなの混ぜたらぐちゃぐちゃにならないッス?」


タクミは小さく笑った。


「混ぜない」


リアナ


「え?」


タクミ


「重ねる」


炉の火が大きく揺れる。


タクミは三つの金属を重ねた。


ミスリル。


オリハルコン。


ミスリル。


アダマンタイト。


ミスリル。


何層も。


何層も。


何層も。


リアナが呆然とする。


「サンドイッチッス……」


リゼ


「……積層鍛造」


タクミ


「叩く」


ハンマーを握る。


カン!


火花が散る。


カン!!


カン!!


金属が伸びる。


折る。


重ねる。


また叩く。


リアナが目を見開く。


「まだやるッスか!?」


タクミ


「まだ」


また折る。


また叩く。


何度も。


何度も。


何度も。


リゼが静かに言う。


「……層」


「増えてる」


リアナ


「何層あるッス?」


タクミ


「数えてない」


叩きながら言う。


「でも」


一言。


「強くなる」


やがて。


刃の形が見え始めた。


リゼが言う。


「……硬さ」


タクミ


「刃は硬くする」


別の工程に入る。


刃先だけを炎に入れた。


リアナ


「なんでそこだけッス?」


タクミ


「差し焼き」


リアナ


「?」


タクミ


「刃」


「硬い」


「背」


「柔らかい」


リゼ


「……折れない」


タクミ


「そうだ」


最後に。


刃を水に入れた。


ジュウウウウウ――!!


蒸気が爆発する。


工房が白く染まる。


やがて。


蒸気が晴れた。


そこに一振りの剣があった。


リアナが目を見開く。


「……綺麗」


刃の表面に波のような模様が浮かんでいる。


リゼが断面を見る。


「……魔力流路」


タクミ


「出来た」


リアナ


「完成ッス!?」


タクミは首を振る。


「まだ」


リアナ


「え?」


タクミ


「でも」


剣を持ち上げる。


その瞬間。


刃に魔力が流れた。


青い光が走る。


リアナ


「うわっ!」


リゼ


「……増幅」


タクミは小さく笑った。


「やっと」


一言。


「スタートラインだ」


その時。


工房の扉が開いた。


カティアだった。


「失礼します」


リアナ


「カティア!」


カティアは資料を持っている。


「武器の分析が終わりました」


「四天王の武器には、それぞれ特性があります」


リアナ


「特性?」


カティア


「使用者の戦い方と一致した時」


「武器の性能は最大限に発揮されます」


リゼ


「……共鳴」


カティアは頷いた。


「この件は魔王様と四天王の皆様に共有します」


「戦術にも関わるため」


タクミ


「頼む」


カティアは一瞬、剣を見る。


そして小さく言った。


「鍛将」


タクミ


「なんだ」


カティア


「……少しだけ」


剣を見つめる。


「恐ろしいですね」


タクミは短く答えた。


「鍛冶だ」


炉の火が揺れる。


ブレークスルーは起きた。


だが。


神の武器との戦いは――


まだ始まったばかりだった。



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