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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第63話 初代魔王

魔王城地下宝物庫。


巨大なガラス容器の中で、赤黒い心臓が脈打っていた。


ドクン。


静かな宝物庫に鼓動が響く。


リアナが小声で言った。


「……やっぱヤバいやつッスよね、これ」


リゼはガラス容器をじっと見つめている。


「……未知」


タクミも腕を組んだ。


「少なくとも普通の素材じゃないな」


ドクン。


再び鼓動。


カティアが静かに口を開いた。


「魔王城の資料にも、このような物の記録はありません」


リアナが振り向く。


「え、カティアでも分からないッス?」


「はい」


カティアは頷いた。


「宝物庫の管理記録は全て確認していますが、この装置の詳細は残されていません」


タクミはガラスを軽く叩いた。


コン。


液体の中で心臓がゆっくり揺れる。


ドクン。


リアナが腕を抱いた。


「なんか……見てると落ち着かないッス」


タクミも同意した。


「気味が悪いな」


カティアは少し考えた後、言った。


「……魔王様ならご存じかもしれません」


タクミが振り向く。


「魔王が?」


「はい。魔王城の最古の記録や遺物については、魔王様ご自身が把握している場合があります」


リアナが頷く。


「確かに」


リゼも短く言う。


「……聞く」


タクミはもう一度心臓を見た。


ドクン。


その鼓動は変わらない。


「……気になるな」


タクミは背を向けた。


「行くか」


四人は宝物庫を後にした。


重い鉄扉が閉まる。


ガゴン。


鼓動の音は、扉の向こうに消えた。


――――――


魔王城。


謁見の間。


巨大な玉座に、魔王が座っていた。


その威圧感は相変わらずだ。


四人が入ると、魔王は静かに言った。


「どうした」


タクミが前に出る。


「少し聞きたいことがある」


魔王は目を細めた。


「宝物庫か」


タクミは少し驚いた。


「……分かるのか」


「貴様が興味を持つ場所など限られている」


リアナが苦笑する。


「確かにッス」


タクミは本題に入った。


「地下の最奥に、妙な装置があった」


「ガラス容器に入った心臓だ」


その瞬間。


玉座の間の空気が、わずかに変わった。


魔王の目が細くなる。


「……見たか」


タクミは頷く。


「なんなんだ、あれは」


魔王は少し沈黙した。


その沈黙は長かった。


リアナが思わず息を呑む。


やがて――


魔王が口を開いた。


「初代魔王」


その一言で、空気が凍った。


タクミ


「……は?」


リアナ


「え?」


リゼもわずかに目を見開く。


魔王はゆっくり言った。


「宝物庫のあれは――」


「初代魔王の心臓だ」


謁見の間が静まり返った。


タクミは言葉を失う。


「……初代?」


カティアも珍しく驚いていた。


「初代魔王……」


魔王は玉座に座ったまま、遠くを見るような目をした。


「今から千年以上前」


「この世界は、人間と魔族の戦争の最中だった」


タクミは腕を組む。


「……神話の時代か」


魔王は頷いた。


「そうだ」


「その戦争の中で、魔族をまとめ上げた存在がいた」


「それが――初代魔王」


リアナが呟く。


「そんな昔の……」


魔王は続ける。


「奴は強かった」


「魔族の中でも別格だった」


タクミ


「勇者に負けたのか」


魔王はゆっくり首を振った。


「違う」


その言葉に、全員が顔を上げる。


魔王は言った。


「初代魔王は――」


「勇者と相討ちになった」


謁見の間に静寂が落ちる。


リアナ


「相討ち……」


リゼ


「……両方死亡」


魔王は頷く。


「そうだ」


「勇者も、魔王も、その戦いで命を落とした」


タクミは少し考えた。


「……なら」


「なんで心臓だけ残ってる」


魔王はタクミを見る。


その目は静かだった。


「分からん」


タクミ


「は?」


魔王


「当時の魔族が、戦場から回収したらしい」


「だが」


「なぜ心臓が動き続けているのか」


「誰にも分からない」


リアナ


「えぇ……」


リゼは小さく呟く。


「……生命力異常」


タクミは腕を組んだ。


「千年以上動いてる心臓か」


魔王は低く言った。


「初代魔王は、魔族史上最強の存在だった」


「その心臓だ」


「普通ではない」


タクミは少し考え込んだ。


そして。


ぽつりと呟く。


「……素材になるな」


その瞬間。


リアナが振り向いた。


「ちょっとタクミ!?」


カティアも目を丸くする。


魔王は――


静かに笑った。


「さすがだな」


タクミ


「ん?」


魔王は言った。


「その発想をする者は初めてだ」


リアナ


「普通しないッスよ!」


リゼはむしろ興味津々だった。


「……魔王心臓」


「……超素材」


タクミは顎に手を当てた。


「もし使えるなら」


「とんでもない武器が作れる」


魔王はゆっくり言った。


「使うか?」


タクミ


「は?」


魔王


「その心臓を」


「貴様の鍛冶に」


謁見の間の空気が張り詰めた。


リアナ


「ちょっと待ってほしいッス」


カティア


「魔王様、それは……」


魔王は構わず続ける。


「だが」


「条件がある」


タクミは腕を組んだ。


「なんだ」


魔王は静かに言った。


「もし使うなら」


「世界最強の武器を作れ」


その言葉は、静かだった。


だが重かった。


タクミは少し沈黙した。


そして。


ゆっくり笑った。


「……望むところだ」


魔王の口元もわずかに歪んだ。


玉座の間の空気が、わずかに熱を帯びた。



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