第61話 新しい工房
魔王城、地下区画。
城の奥へ続く石の廊下を、タクミは歩いていた。
その隣を歩くのはカティア。
少し後ろにはリアナとリゼの姿もある。
リアナが周囲を見回す。
「城の中ってこんな広かったんスね」
タクミも頷く。
「俺も初めて来る場所だ」
カティアが言った。
「この区画は新設された場所です」
「主に研究や開発のための設備が整えられています」
リアナが目を丸くする。
「研究区画ッスか」
やがて四人は一つの扉の前で止まった。
重厚な鉄扉。
新品だ。
カティアが言う。
「こちらです」
「タクミさんの政務室兼工房」
タクミは眉を上げた。
「政務室って言葉にまだ慣れないな」
リアナが笑う。
「タクミは鍛冶場の方が似合うッス!」
カティアが扉を開いた。
中へ入る。
そして――
タクミは足を止めた。
「……」
部屋は広かった。
巨大な作業台。
整然と並ぶ鍛冶道具。
魔力炉。
鉱石分析台。
そして壁一面に並ぶ素材棚。
完全に――
最新の工房だった。
リゼが一歩前に出る。
目を輝かせている。
「……凄い」
短く呟く。
「最新設備」
作業台を触る。
魔力炉を覗き込む。
「魔力制御炉」
「温度安定装置」
「精密加工台」
小さく息を吐く。
「研究環境」
「最高」
リアナが笑う。
「リゼ、目が輝いてるッスよ」
タクミは苦笑した。
「俺も同じ気分だ」
棚を見回す。
「ここまで揃ってるとは思わなかった」
カティアが言う。
「魔王様の指示です」
「研究環境は最大限整えろと」
タクミは頭を掻く。
「なんか悪いな」
カティアは首を振った。
「いえ」
「仕事ですのでお気になさらず」
落ち着いた声。
「タクミさんは」
「タクミさんにしか出来ないことを成してください」
タクミは少し照れたように笑った。
その時。
リアナが胸を張った。
「そうそう!」
「俺も報告あるッス!」
タクミが振り向く。
「報告?」
リアナは満面の笑みだった。
「俺!」
「タクミ警護隊」
「隊長に任命されたッス!」
タクミは目を丸くする。
「警護隊?」
リアナが頷く。
「タクミ専属警護隊ッス!」
「魔王様が決めたッス!」
タクミは苦笑する。
「いや」
「俺そんな偉いのか?」
リアナは胸を張る。
「鍛将ッスから!」
タクミが眉を上げる。
「その呼び方まだ慣れない」
リアナは笑う。
「そのうち慣れるッス!」
タクミが言う。
「それより」
「お前訓練はどうするんだ?」
リアナは少し困った顔をした。
「それなんスけど」
頭を掻く。
「なんか」
「バルグ様とセレナ様が」
「特訓してくれるって言ってるッス」
タクミが固まった。
「……は?」
リアナが苦笑する。
「俺も恐れ多いって言ったッス」
「でも」
「押し切られたッス」
リゼがぽつりと言う。
「最強育成」
リアナが笑う。
「そういうことッス!」
タクミはため息をついた。
「お前」
「とんでもない環境にいるな」
リアナは元気よく答えた。
「頑張るッス!」
カティアが言う。
「ちなみに」
「私は隣の政務室におります」
タクミが振り向く。
「隣?」
「はい」
「何かあればすぐ対応できます」
書類を軽く持ち上げる。
「現場の声」
「武器の要望」
「各部隊の報告」
「すべてこちらに届きます」
タクミは少し申し訳なさそうに言う。
「大変そうだな」
カティアは静かに微笑む。
「秘書ですので」
「当然の仕事です」
そして続けた。
「要望の精査なども行います」
「無茶な依頼は私が弾きますので」
リアナが笑う。
「頼もしいッス!」
タクミは棚を見回した。
新しい工房。
新しい環境。
そして仲間。
ゆっくり息を吐く。
「……よし」
リアナが言う。
「何作るッス?」
タクミは少し考えた。
そして言った。
「その前に」
「見たい場所がある」
リゼが顔を上げる。
「?」
タクミはカティアを見る。
「聞いたんだ」
「魔王城の地下に」
「宝庫があるって」
カティアが頷く。
「はい」
「あります」
リアナが目を輝かせる。
「宝物庫ッスか!?」
リゼの目も少し光った。
「……未知素材」
タクミが笑う。
「ちょっと見に行くか」
リアナが拳を握る。
「探検ッスね!」
カティアは静かに言った。
「では案内します」
魔王城の地下深く。
そこには
長い歴史の中で集められた
無数の素材が眠っていた。
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