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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第59話 騎士団長の推測

王国軍前線砦。


執務室の扉がノックされた。


「失礼します」


副官が部屋に入る。


机の向こうではレオンが書類に目を通していた。


「どうした」


副官が報告書を差し出す。


「前線部隊からの報告です」


「魔王軍兵士の動きが変わってきているとのことです」


レオンの手が止まる。


「変わった?」


「はい」


副官は続けた。


「以前よりキレがあり、技量が上がっているように感じると」


レオンは報告書を受け取った。


静かに目を通す。


副官が言う。


「訓練の成果でしょうか」


「最近は衝突も多い」


「戦闘経験を積んだ可能性も」


レオンは首を振った。


「違うな」


副官が目を瞬く。


「違う?」


レオンは報告書を机に置いた。


「兵士が急に強くなることはない」


「技術の向上も、戦闘経験も」


「蓄積で起きるものだ」


レオンは窓の外を見る。


遠くに前線の山が見える。


「それが」


「いきなり変わったと言うなら」


「別の要因がある」


副官が腕を組む。


「ですが……」


「報告では武器ではなく」


「兵士の動きが変わったと」


レオンは静かに言った。


「武器だ」


副官が首を傾げる。


「武器……ですか?」


レオンは椅子に背を預けた。


「考えてみろ」


「兵士の動きが鋭くなる」


「疲労が減る」


「攻撃回数が増える」


副官がはっとした。


「まさか……」


レオンは言った。


「軽量化だ」


部屋が静まり返る。


副官が呟く。


「……魔王軍の武器は」


「すでに壊れない武器に変わっている」


レオンは頷いた。


「知っている」


「あの鍛冶師」


「タクミ」


副官が息を飲む。


「さらに改良したと?」


レオンは小さく笑った。


「あり得る話だ」


「むしろ」


「やっていてもおかしくない」


副官が言う。


「しかし軽量化など簡単に――」


レオンが言葉を遮る。


「ミスリル」


副官の目が見開かれた。


「……!」


レオンは窓の外を見たまま言う。


「もしミスリルを加工できる鍛冶師がいるなら」


「軽量化は可能だ」


副官は沈黙した。


やがて言う。


「……まずいですね」


レオンは静かに頷いた。


「そうだな」


「武器が進化すれば」


「兵士は強くなる」


副官が尋ねる。


「では対策は」


レオンは答えた。


「観察だ」


「焦る必要はない」


少し間を置いて言う。


「魔族は」


「こちらから攻めなければ動かない」


副官は頷いた。


レオンは報告書をもう一度見た。


そこには一行書かれていた。


魔王軍鍛冶師

タクミ


レオンは静かに呟く


「………厄介だな」


副官が聞き返す。


「魔王軍ですか?」


レオンは首を振った。


「違う」


「本当に危険なのは」


少し間を置く。


「四天王でも」


「魔王でもない」


レオンは報告書を指で叩いた。


「鍛冶師だ」


副官の表情が固まる。


レオンは続けた。


「武器が変われば」


「戦場が変わる」


「兵士が強くなる」


静かな声で言う。


「そして」


「戦争の形が変わる」


レオンは窓の外を見る。


遠くの山の向こう。


魔王軍の領域。


「……厄介な男だ」



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