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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第56話 鍛冶師たちの希望

魔王城鍛冶区画。


巨大な鍛冶場にはすでに多くの魔族鍛冶師が集まっていた。


火床が並び、金床が響き、鉄の匂いが満ちている。


ここは魔王軍の武器を生み出す場所だ。


そして――


今の鍛冶場は、かつてとは大きく変わっていた。


「次の刃、持ってこい!」


「研磨終わったぞ!」


「柄の固定まだか!」


声が飛び交う。


それぞれが別の作業をしている。


鍛錬。


刃付け。


研磨。


柄加工。


かつて一人の鍛冶師がすべて行っていた工程は、今は完全に分けられていた。


分業制。


それはタクミが持ち込んだやり方だった。


おかげで武器の生産量は数倍に増えた。


壊れない武器はすでに前線兵士の標準装備になりつつある。


そんな鍛冶場の中央に、タクミが立っていた。


その横にはリゼ。


鍛冶師たちは自然と静かになる。


一人が小声で言った。


「……幹部様だ」


「魔王様直属だぞ」


タクミは頭を掻いた。


「そんな大げさなもんじゃない」


リゼが一歩前に出た。


「今日は、新しい改良について説明する」


いつもの短い口調。


だが鍛冶師たちは真剣に耳を傾けた。


リゼは黒板のような鉄板にチョークで図を書く。


「ミスリル」


鍛冶師たちがざわめく。


ミスリル。


それは伝説の金属。


だが加工が難しすぎる。


「純ミスリルは加工困難」


「だが」


リゼが線を引いた。


「混ぜる」


鍛冶師たちが顔を見合わせる。


「混ぜる……?」


リゼが続ける。


「鉄九」


「ミスリル一」


鉄の割合が九。


ミスリルが一。


「これで」


「強度向上」


「重量減少」


「耐久性増加」


鍛冶師の一人が呟く。


「そんなことが……」


リゼは言う。


「理論上は可能」


そして横を見る。


「実証は」


「タクミ」


タクミが前に出た。


「まぁ」


「やってみるか」


鍛冶場の中央に火床が用意される。


鉄塊。


そして小さなミスリル片。


タクミは火床に入れる。


赤熱。


オレンジ。


白熱。


金属が溶け合う。


取り出す。


金床へ。


カン。


カン。


カン。


重い音が響く。


鍛冶師たちは息を呑む。


「ミスリルが……」


「混ざってる……」


タクミは淡々と叩き続けた。


そして刃の形が生まれる。


鍛錬。


冷却。


再加熱。


再鍛錬。


やがて一本の剣が出来上がる。


タクミはそれを軽く振った。


「軽いな」


鍛冶師の一人が持つ。


目を見開く。


「……軽い」


別の鍛冶師が言う。


「なのに重みがある」


タクミは言った。


「ミスリルの特性だ」


「少量でも効く」


リゼが補足する。


「魔力伝導も上昇」


鍛冶師たちの空気が変わった。


目の色が変わる。


「……これ」


「量産できるのか」


タクミは頷いた。


「できる」


「だから今日は」


タクミは周囲を見回す。


「お前らに教える」


鍛冶師たちの背筋が伸びる。


「鋳造担当」


タクミが呼ぶ。


数人が前に出る。


「ミスリルは入れるタイミングが重要だ」


「早すぎると分離する」


「遅いと混ざらない」


実際にやって見せる。


「なるほど……」


次。


「鍛錬担当」


ハンマーを持つ鍛冶師たち。


「叩きすぎるな」


「ミスリルは粘る」


「力よりリズムだ」


カン。


カン。


カン。


「こうだ」


鍛冶師が真似する。


「……できる」


次。


「研磨担当」


「刃先は薄くしすぎるな」


「ミスリルは粘る」


「食い込みが強い」


一つ一つ。


タクミは回りながら教えていく。


やがて。


鍛冶場のあちこちで金槌が鳴り始めた。


カン。


カン。


カン。


新しい剣が生まれていく。


鍛冶師の一人が言った。


「これなら……」


別の鍛冶師。


「前線の武器がもっと強くなる」


誰かが呟く。


「折れない剣が増える」


鍛冶師たちの目に、火が宿っていた。


それは火床の炎ではない。


誇り。


自分たちの武器が戦場を支えるという確信。


一人の鍛冶師が声を上げた。


「流石だ!」


「魔王様直属幹部!」


別の鍛冶師。


「タクミ様!」


歓声が広がる。


タクミは困ったように頭を掻いた。


「……いや」


「俺は作ってただけなんだがな」


静かな声が言った。


「誇っていい」


リゼだった。


鍛冶師たちが静まる。


リゼはタクミを見る。


「タクミは凄い」


「魔王軍の武器は変わった」


「多くの命を守っている」


タクミは少しだけ笑った。


「俺だけの力じゃない」


リゼを見る。


「お前がいたからだ」


一瞬。


リゼの動きが止まった。


頬が少し赤くなる。


視線を逸らす。


小さな声。


「……ありがとう」


鍛冶場にはまた金槌の音が響き始めた。


カン。


カン。


カン。


新しい武器が生まれていく。


それは――


魔王軍の未来を支える音だった。



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