第55話 武器が守るもの
魔王城・中央中庭。
城の兵士たちが整列していた。
魔族の戦士、弓兵、魔導兵、騎兵。
前線から戻った者もいれば、これから出る者もいる。
数百を超える兵士たちが静かに壇上を見上げていた。
ざわめきが広がる。
「なんだ今日は?」
「式典らしいぞ」
「士気向上だとか」
一人の兵士が言った。
「……聞いたか?」
「四天王の武器が新しくなったって」
別の兵士が頷く。
「ああ」
「例の鍛冶師だろ」
「壊れない武器の」
「タクミとかいう」
兵士たちは自然と壇上を見る。
そこへ――
重い足音が響いた。
魔王が現れる。
兵士たちは一斉に膝をついた。
魔王はゆっくりと手を上げる。
「面を上げよ」
兵士たちが顔を上げる。
魔王は静かに言った。
「今日は戦の話ではない」
少し間を置く。
「武器の話だ」
兵士たちがざわつく。
魔王が続ける。
「魔王軍の武器は変わった」
「それは知っているだろう」
前線兵たちは頷いた。
刃こぼれしない剣。
折れない槍。
壊れない盾。
あの武器のおかげで、何度命が助かったか分からない。
魔王が言う。
「そして――」
「四天王の武器もまた、新たに生まれ変わった」
兵士たちのざわめきが大きくなる。
「四天王だってよ」
「どんな武器だ……」
魔王は言った。
「見せよう」
「炎将バルグ」
重い足音。
巨大な影が前に出た。
炎将バルグ。
その手には――
巨大な大剣。
しかしただの大剣ではない。
赤黒い刃。
火竜の鱗を思わせる装甲。
圧倒的な質量。
兵士たちが息を呑む。
「でかい……」
バルグは軽く肩を鳴らす。
「見てろ」
兵士が鉄柱を立てる。
バルグは大剣を振り上げた。
そして――
一閃。
ドン!!
鉄柱が真っ二つに割れた。
兵士たちがざわめく。
「すげぇ……」
しかしバルグは剣を見て鼻を鳴らす。
「まだまだ振れる」
そのまま数度振る。
重い斬撃。
だが刃は欠けない。
「……壊れねぇ」
兵士が呟いた。
魔王が言う。
「火竜素材とミスリル」
「長時間戦闘のための武器だ」
兵士たちが息を呑む。
「次」
魔王が言う。
「獣王ガルド」
ガルドが前に出た。
その手には――
巨大なウォーハンマー。
もはや武器ではない。
攻城兵器。
兵士が模擬城門を設置する。
分厚い木板。
鉄補強。
ガルドは笑った。
「ガハハ!!」
振りかぶる。
ドォォォン!!
一撃。
城門が粉砕された。
木片が飛び散る。
兵士たちが叫ぶ。
「うおおおお!!」
ガルドは肩で息をしながら笑う。
「城門だろうが関係ねぇ!」
兵士たちの士気が上がる。
「これなら落とせる!」
「城壁だって!」
魔王が頷く。
「次」
「氷姫セレナ」
セレナが静かに歩き出る。
細身のレイピア。
まるで指揮棒のような剣。
兵士が鉄板を置く。
セレナは軽く突いた。
カン。
小さな音。
次の瞬間。
鉄板が――
凍りついた。
兵士が息を呑む。
「氷魔法……」
セレナは微笑んだ。
「戦場は支配するものよ」
最後。
魔王が言う。
「闇宰相ヴァルツ」
ヴァルツが姿を現す。
短剣。
ただの短剣。
そう見えた。
兵士が標的を立てる。
一瞬。
ヴァルツが消えた。
次の瞬間。
標的の首元に刃。
兵士たちが固まる。
「……見えなかった」
ヴァルツは微笑む。
「暗殺とはそういうものです」
兵士たちのざわめきが広がる。
だが魔王は言った。
「まだ終わりではない」
兵士たちが壇上を見る。
魔王が言う。
「リアナ」
元気な声が響く。
「はいッス!」
リアナが飛び出す。
その腰には――
双剣。
兵士たちがざわめく。
「双剣?」
「珍しいな」
リアナが剣を抜く。
左右の刃が輝く。
そして――
クロス。
次の瞬間。
炎が生まれた。
兵士たちが叫ぶ。
「炎!?」
リアナは照れながら笑う。
「へへ……」
「なんだか分からないけど、できたッス!」
兵士たちは大歓声を上げた。
「すげぇ!!」
「炎の剣だ!!」
「これなら勇者だって……!」
魔王は静かに手を上げた。
歓声が止まる。
魔王が言う。
「これらの武器を」
「作った者がいる」
兵士たちがざわつく。
「鍛冶師だ」
「その名は――」
魔王が壇上を指す。
「タクミ」
タクミが前に出る。
兵士たちは目を見開く。
「……あの人?」
「鍛冶師?」
魔王が言う。
「この者の武器によって」
「多くの魔族の命が守られた」
静寂。
魔王が続ける。
「よって」
「鍛冶師タクミ」
「貴様を」
一拍。
「魔王直属幹部とする」
兵士たちが静まり返る。
そして。
誰かが言った。
「……俺の剣」
「この人の型だ」
別の兵士。
「折れなかった」
「命拾いした」
ざわめきが広がる。
やがて――
歓声が上がった。
「タクミ!!」
「鍛冶師万歳!!」
「武器万歳!!」
リアナが満面の笑みで叫ぶ。
「タクミすげぇッス!!」
タクミは頭を掻いた。
「……俺は」
小さく呟く。
「ただ鍛冶をしてるだけだ」
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