第50話 双剣
魔王軍城――工房。
炉の火が、ゆっくりと燃えていた。
その前で。
リアナは椅子に座り込んでいる。
腕をだらんと垂らし、ぐったりしていた。
「……まだ回復しないッス」
タクミは呆れた顔をする。
「三回振っただけで魔力切れとはな」
リアナは抗議する。
「だって強すぎるんスよあの剣!」
その横で。
リゼが静かに炎竜核の剣を観察していた。
作業台の上に置かれたミスリルの剣。
柄の中心に埋め込まれた炎竜核が、わずかに赤く光っている。
リゼは小さく言った。
「魔力消費」
「かなり大きい」
タクミ
「だろうな」
腕を組む。
「炎竜核がそのまま出力してる」
リアナ
「それダメなんスか?」
タクミ
「お前にはな」
リアナは頬を膨らませた。
「むー」
タクミは剣を手に取る。
軽く振る。
ヒュン。
風を切る音が鋭い。
「武器としては成功だ」
リアナ
「やっぱり!」
タクミ
「だが使い手が追いついてない」
リアナ
「ぐっ……」
ショックを受けた顔。
その時。
リゼが言った。
「でも」
「方法ある」
リアナ
「ほんとッス!?」
リゼは作業台に紙を置いた。
簡単な図を描く。
剣。
そしてその横に、もう一本の剣。
リアナ
「二本?」
タクミが頷く。
「双剣だ」
リアナの目が輝く。
「かっこいいッス!!」
タクミ
「理由は三つある」
指を立てる。
「一つ」
「魔力分散」
リゼが説明を続ける。
「炎竜核」
「魔力出力大きい」
「一本だと」
「全部流れる」
リアナ
「だからガス欠ッスか」
タクミ
「そうだ」
リゼ
「二本なら」
「半分」
リアナ
「おお!」
タクミは二本の線を描く。
「二つ目」
「機動力」
リアナは姿勢を正した。
「自分得意ッス!」
タクミ
「だろうな」
リアナの戦い方は突撃型だ。
速い。
とにかく速い。
タクミ
「重い剣は合わない」
「軽い武器」
「二本」
「お前の動きに合う」
リアナは嬉しそうに笑った。
「なんか専用武器っぽいッス!」
タクミ
「専用だ」
リアナ
「え」
タクミ
「ワンオフになる」
リアナは固まった。
数秒。
「自分専用ッス!?」
タクミ
「そうなるな」
リアナの顔が一気に赤くなる。
「そ、それって!」
慌てる。
「めちゃくちゃすごくないッス!?」
リゼ
「すごい」
リアナ
「やったッス!」
椅子から立ち上がろうとして。
また座った。
「……まだ魔力ないッス」
タクミは苦笑した。
「三つ目」
リアナ
「まだあるんスか?」
タクミは剣を見た。
炎竜核。
赤く光る石。
「炎竜核はな」
少し考える。
「共鳴する可能性がある」
リアナ
「きょうめい?」
リゼが説明する。
「同じ核」
「近づく」
「反応する」
リアナ
「つまり?」
タクミは二本の剣を交差させる動きをした。
「クロス」
リアナの目が輝く。
「必殺技ッス!!」
タクミ
「炎が増幅するかもしれん」
リアナ
「絶対かっこいいッス!!」
すでにテンションが上がっている。
リゼも小さく頷いた。
「炎属性」
「リアナと相性いい」
リアナ
「そうなんスか?」
タクミ
「試し斬り見ただろ」
リアナは思い出した。
炎の斬撃。
岩が粉々になった。
「……確かに」
タクミは炉を見る。
炎が揺れている。
そして言った。
「やる価値はある」
リアナ
「お願いしますッス!!」
勢いよく頭を下げる。
タクミは少し笑った。
「そんな大げさなもんじゃない」
槌を持ち上げる。
「鍛冶師の仕事だ」
リゼも炉の前に立つ。
「準備する」
リアナはワクワクしている。
「双剣ッスか……」
想像している。
「めちゃくちゃ速く戦えそうッス」
タクミ
「そういう武器にする」
リアナは拳を握った。
「楽しみッス!」
炉の炎が強くなる。
タクミはミスリルを見る。
炎竜核を見る。
そして小さく呟いた。
「……本番だな」
槌を握る。
カン――
工房に音が響いた。
リアナ専用武器。
その本当の形が。
いま作られようとしていた。
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