第38話 魔王軍戦略会議
魔王城。
玉座の間の奥。
戦略会議室。
巨大な円卓の上には地図が広げられていた。
赤い駒が魔王軍。
青い駒が王国軍。
青い駒の多くは、すでに盤上から消えている。
静寂。
最初に口を開いたのは炎将だった。
「……派手に壊れたな」
炎将バルグは腕を組み、戦況図を見下ろしている。
その声には満足が混じっていた。
対面に座る氷姫セレナが静かに言う。
「王国軍前線部隊」
「事実上壊滅」
隣で獣王ガルドが笑った。
「ハッ」
「最後は逃げ出したがな」
ヴァルツが首を振る。
「突破された、です」
細い指で地図の一点を叩く。
「レオン」
セレナが頷く。
「優秀な将」
ガルドが不満そうに鼻を鳴らす。
「殺し損ねた」
ヴァルツは淡々と言った。
「ですが」
「王国軍は崩れました」
指が青い駒を払う。
卓上から、いくつもの駒が消えた。
「柱は折れなかった」
「しかし」
「建物は崩壊した」
静かな声だった。
その言葉にバルグが笑う。
「いい例えだ」
その時。
扉が開いた。
空気が変わる。
四天王が立ち上がる。
ゆっくりと入ってきたのは――
魔王。
黒いマントが静かに揺れる。
魔王は席につくと、短く言った。
「戦況は」
ヴァルツが一礼する。
「国境戦線」
「我々の勝利です」
魔王は頷いた。
「要因はなんだ」
その問いに、バルグがすぐ答える。
「剣だ」
大剣を机に置く。
タクミの改良武器。
「これが全部変えた」
セレナが続く。
「兵の損耗率」
「三割以上低下」
ガルドが腕を組む。
「折れねぇ」
「それだけで兵は死なねぇ」
バルグが笑う。
「鎧ごと斬れるしな」
「人間の装備とは別物だ」
魔王は静かに剣を手に取る。
刃を指でなぞる。
そして言う。
「鍛冶師」
ヴァルツが頷く。
「タクミです」
魔王はわずかに笑った。
「面白い男だ」
セレナが言う。
「工房は順調に稼働」
「現在、前線部隊の大半が改良武器装備」
ヴァルツが補足する。
「魔王軍鍛冶師による分業生産」
「量産体制は確立済み」
ガルドが言う。
「兵も喜んでるぞ」
「折れねぇ武器は正義だ」
短い沈黙。
魔王が言う。
「戦争は変わった」
ヴァルツが頷く。
「はい」
指が地図をなぞる。
「王国軍は武器で劣ります」
「技術差です」
バルグが言う。
「もう勝てねぇな」
しかしヴァルツは首を振った。
「いいえ」
全員が彼を見る。
ヴァルツは静かに言った。
「王国は次の手を出します」
セレナ
「武器改良?」
ヴァルツ
「不可能です」
ガルド
「じゃあ何だ」
ヴァルツは少しだけ笑った。
「神です」
静寂。
バルグが眉を上げる。
「……勇者か」
ヴァルツが頷く。
「王国は召喚を成功させています」
「現在訓練中」
セレナの目が細くなる。
「投入される」
「可能性は高い」
ガルドが笑う。
「面白ぇ」
「強いなら歓迎だ」
ヴァルツは冷静に言う。
「問題は武器です」
魔王が言う。
「神造兵器」
ヴァルツは頷く。
「はい」
「勇者専用武装」
セレナ
「通常兵器では対抗困難」
バルグが机を叩く。
「つまり」
「また武器の話か」
ヴァルツが言う。
「その通りです」
「戦争は」
「再び武器で決まる」
静かな沈黙。
魔王が言う。
「対策は」
ヴァルツは答えた。
「既に動いています」
魔王が目を向ける。
「説明しろ」
ヴァルツが言う。
「神造兵器の解析」
「担当は」
わずかな間。
「リゼ」
セレナが頷く。
「適任」
バルグが笑う。
「つまり」
「鍛冶師コンビか」
魔王は短く言った。
「良い」
そして剣を机に置く。
「神が作った武器なら」
一瞬。
魔力が空気を震わせた。
「超えればいい」
四天王が静かに笑う。
ヴァルツが言う。
「既に」
「新型試作が進んでいます」
魔王は言った。
「期待している」
その頃。
魔王軍工房。
火花が散る。
カン。
カン。
タクミが鋼を打つ。
隣でリゼが短く言う。
「温度」
タクミ
「まだだ」
火が揺れる。
鋼が赤く光る。
リゼが呟く。
「神造兵器」
タクミ
「知らん」
リゼ
「強い」
タクミは短く答えた。
「なら」
槌を振り下ろす。
火花が飛ぶ。
「超える」
リゼの目がわずかに光った。
炉の火が強く燃え上がる。
戦争は。
次の段階へ進もうとしていた。
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