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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第37話 敗戦分析

王都。


軍事府。


重厚な石造りの建物の最上階。


長い楕円形の会議卓。


その周囲に王国軍の高官たちが並んでいた。


誰も笑っていない。


誰も軽口を叩かない。


机の上には、分厚い報告書。


そして。


中央の戦況図。


国境線。


そこに置かれた駒の数は、以前より明らかに少なかった。


青――王国軍。


赤――魔王軍。


青い駒のいくつかには、黒い印がつけられている。


壊滅。


撤退。


損耗。


静まり返る会議室。


やがて。


低い声が響いた。


「……報告を」


第三軍団長。


グレイヴァス・アルドラン。


歴戦の将軍だった。


副官が立ち上がる。


資料を開く。


声は硬い。


「国境戦線」


「第三軍団」


「第一師団……壊滅」


会議室がざわめいた。


「第二師団」


「戦闘不能」


「第三師団」


「大損害」


誰かが呟く。


「……三個師団が消えたのか」


副官は続ける。


「兵員損耗」


「四割」


「武器損耗」


「七割」


沈黙。


空気が重く沈む。


将校の一人が吐き捨てた。


「……あり得ん」


「魔王軍ごときに」


別の男が低く言う。


「本当に武器なのか?」


副官は答える。


「はい」


「現場報告は一致しています」


「魔王軍の武器は」


「我々の武器を破壊します」


その瞬間。


一人の男が立ち上がった。


長身。


黒髪。


鋭い目。


レオン・アルヴァルト。


彼は静かに言った。


「報告は正確です」


会議室の視線が集まる。


レオンは戦況図の前に立つ。


「今回の敗北」


「原因は三つ」


指を一本立てる。


「第一」


「武器」


将校の一人が顔をしかめた。


「またそれか」


レオンは動じない。


「はい」


「またそれです」


彼は机の上の剣を手に取る。


王国軍標準剣。


魔力鋳造武器。


レオンはそれを置く。


次に。


別の剣を置いた。


魔王軍の剣。


タクミ武器。


「比較試験の結果」


「硬度」


「靭性」


「魔力伝導」


「全て」


「魔王軍が上」


ざわめき。


将校が言う。


「だが」


「魔族は魔力鋳造技術が低いはずだ」


レオンは言う。


「その前提が1人の鍛冶師によって」


「崩れました」


「これらの武器は全て、鍛造です」


沈黙。


レオンは二本の剣を打ち合わせた。


金属音。


次の瞬間。


王国軍の剣の刃が欠けた。


会議室が凍る。


レオンは言う。


「これが戦場で起きていたことです」


「何百回も」


誰も反論できない。


レオンは続ける。


「第二」


「戦術」


戦況図を指す。


赤い駒。


魔王軍。


「四天王」


「炎将バルグ」


「氷姫セレナ」


「獣王ガルド」


「闇宰相ヴァルツ」


将校の一人が唸る。


「化け物揃いだ」


レオンは頷く。


「はい」


「そして」


「我々は」


「彼らを過小評価していた」


静まり返る会議室。


レオンは指を三本目に立てる。


「第三」


「判断」


空気が固まる。


レオンは言った。


「撤退判断が遅れました」


将校が机を叩く。


「貴様!」


だが。


グレイヴァス軍団長が手を上げた。


「続けろ」


レオンは頷く。


「私は以前」


「撤退を進言しました」


「武器差が致命的だからです」


静かな声だった。


だが。


会議室の空気が変わる。


レオンは続ける。


「しかし」


「戦線維持が選択された」


誰も言葉を発しない。


長い沈黙。


やがて。


グレイヴァス軍団長が口を開いた。


低い声だった。


「……レオン」


レオンは視線を向ける。


軍団長は言った。


「お前の進言は」


「正しかった」


会議室がざわめいた。


軍団長は続ける。


「我々は」


「戦力を見誤った」


将校の一人が顔を歪める。


「だが!」


「王国軍が逃げるわけには!」


軍団長が睨む。


「黙れ」


静まり返る。


軍団長は戦況図を見る。


青い駒。


ほとんどが消えていた。


「このまま戦っていたら」


「全滅だった」


誰も反論できない。


軍団長はレオンを見る。


「殿戦」


「見事だった」


レオンは静かに答える。


「兵が優秀でした」


将校が呟く。


「……敵の指揮官は誰だ」


レオンは答える。


「闇宰相ヴァルツ」


会議室の空気が重くなる。


軍団長が言う。


「知略型か」


レオンは頷く。


「はい」


「我々は」


「完全に読まれていました」


沈黙。


やがて。


武器総監ベルナーグが口を開いた。


「結論は出ています」


全員が見る。


ベルナーグは言う。


「武器差を埋める」


「それ以外にない」


将校が吐き捨てる。


「簡単に言うな」


ベルナーグは冷静だった。


「だから」


「切り札を使います」


空気が変わる。


軍団長が言う。


「……勇者か」


ベルナーグは頷いた。


「はい」


沈黙。


王国の最終兵器。


異世界召喚勇者。


まだ訓練中。


だが。


戦争は待ってくれない。


将校が呟く。


「早すぎる」


軍団長は戦況図を見る。


赤い駒。


魔王軍。


そして。


青い駒。


壊滅。


彼は低く言った。


「背に腹は代えられん」


静かな声だった。


「勇者を」


「戦線に投入する」


会議室が静まり返る。


その時。


レオンが口を開いた。


「条件があります」


全員が見る。


軍団長が言う。


「何だ」


レオンは言った。


「勇者は」


「最前線には出さない」


ざわめき。


将校が怒鳴る。


「何だと!」


レオンは静かに言う。


「守るべき戦力です」


「切り札は」


「最後に使う」


沈黙。


軍団長はしばらく考えた。


そして頷く。


「……いいだろう」


「お前に任せる」


会議室がざわめく。


「軍団長!?」


軍団長は言った。


「レオン」


「次の戦線」


「お前が指揮を執れ」


静まり返る。


レオンはゆっくり頭を下げた。


「了解しました」


その頃。


王国の奥。


地下施設。


巨大な魔法陣。


青白い光。


その中央に立つ少年。


異世界召喚勇者。


彼は剣を握る。


黄金の刃。


神造兵器。


少年は呟いた。


「……俺が」


「魔王を倒すのか」


誰も答えない。


ただ。


剣だけが光っていた。


戦争は。


次の段階へ進もうとしていた。




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