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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第34話 獣王ガルド

森を抜けた王国軍は、ようやく足を止めた。


誰もが息を切らしている。


鎧は傷だらけ。


盾は割れ。


剣は欠けていた。


炎将バルグ。


あの怪物との戦いは、たった半刻にも満たない時間だった。


だが、その時間で王国軍は数百の兵を失っている。


副官が重い声で言った。


「……損害報告」


兵士が答える。


「戦死、三百二十七」


「重傷、多数」


「隊列維持困難な部隊も出ています」


沈黙が落ちる。


レオンは静かに言った。


「部隊再編」


副官が頷く。


「はっ」


兵士たちが動き始める。


負傷者が後ろへ運ばれ、盾兵が前に出る。


弓兵が再配置される。


疲労は限界に近い。


それでも王国軍はまだ軍だった。


副官が言う。


「……奇跡ですね」


レオンは遠くの森を見た。


「何がだ」


副官は答える。


「四天王と戦って」


「まだ軍が残っていることです」


レオンは短く息を吐く。


「違う」


副官が首を傾げる。


「え?」


レオンは言った。


「まだ終わっていない」


副官の顔色が変わる。


「……次が来ると?」


レオンは頷いた。


「氷姫セレナは戦場を整える」


「そして」


ゆっくり言う。


「怪物を投げる」


その時だった。


ズン。


地面が揺れた。


兵士が振り向く。


「な、何だ……?」


ズン。


ズン。


重い音。


森の奥から聞こえてくる。


副官の顔が青くなる。


「……まさか」


レオンの目が細くなる。


「来たか」


森の影から現れた。


巨大な体。


岩のような筋肉。


獣の耳。


鋭い牙。


赤い瞳。


魔王軍四天王。


獣王ガルド。


兵士の誰かが呟く。


「……化け物」


ガルドはゆっくり歩いていた。


急ぐ様子はない。


ただ。


そこにいるだけで、戦場の空気が変わる。


彼の肩には巨大な武器が乗っていた。


鉄の塊。


長い柄。


先端には巨大な鋼鉄塊。


戦鎚。


副官が息を呑む。


「……あれは」


レオンが言った。


「破城槌」


副官が聞き返す。


「破城槌……?」


レオンは言う。


「城門を壊す武器だ」


ガルドは戦鎚を肩から降ろす。


ドン。


地面が沈んだ。


兵士たちが一歩下がる。


ガルドは戦鎚を見た。


軽く振る。


ブン。


風が唸る。


彼は笑った。


「いい武器だ」


牙が見える。


「壊れねぇ」


兵士たちがざわめく。


「……壊れない?」


ガルドは戦鎚を肩に担ぐ。


「前のはすぐ壊れた」


戦鎚を軽く叩く。


カン。


重い金属音が響く。


「これはいい」


そして笑う。


「最高だ」


それは。


タクミが打った武器だった。


王国兵が叫ぶ。


「弓兵!」


「撃て!」


矢の雨が降る。


ヒュン。


ヒュン。


ヒュン。


無数の矢が飛ぶ。


ガルドは止まらない。


矢が刺さる。


折れる。


弾かれる。


ガルドは首を傾げた。


「柔らけぇ」


そして。


走った。


ズドン!!


地面が揺れる。


兵士が叫ぶ。


「速い!」


副官が怒鳴る。


「盾兵前!」


盾兵が前に出る。


巨大な盾壁が作られる。


ガルドは笑った。


「いい」


戦鎚を振り上げる。


「硬い方が」


振り下ろす。


「壊しがいがある」


ドゴォォン!!


盾が砕けた。


兵士が吹き飛ぶ。


鎧が潰れる。


骨が砕ける。


戦線が揺れる。


兵士が叫ぶ。


「止まらない!」


ガルドは戦鎚を振る。


ゴン!!


三人が吹き飛ぶ。


さらに振る。


ドン!!


地面が割れる。


副官が叫ぶ。


「囲め!」


兵士たちが包囲する。


剣が振られる。


槍が突かれる。


ガルドは動かない。


戦鎚を横に振る。


ゴン!!


兵士が飛ぶ。


「軽い」


そしてもう一撃。


ドン!!


地面が爆ぜる。


王国兵が転ぶ。


戦線が揺れる。


副官が叫ぶ。


「突破される!」


レオンが言った。


「違う」


副官が振り向く。


「え?」


レオンの目は戦場を見ていた。


「突破ではない」


ガルドが走る。


兵士を跳ね飛ばす。


盾を砕く。


戦鎚が振り下ろされる。


ドゴォォン!!


戦線が割れた。


レオンは静かに言った。


「破壊だ」


戦線が割れた。


それは、崩れたのではない。


砕けた。


ガルドの戦鎚が振り下ろされるたびに、大地が揺れる。


ドゴォォン!!


盾が潰れる。


兵士が吹き飛ぶ。


鎧が歪む。


王国兵が叫ぶ。


「止めろ!」


「囲め!」


槍兵が突撃する。


十本の槍が同時に突き出される。


ガルドは動かない。


ただ戦鎚を横に振る。


ゴン!!


槍ごと兵士が吹き飛んだ。


骨の折れる音が響く。


ガルドは鼻で笑った。


「軽い」


そして一歩踏み込む。


ズン。


地面が沈む。


戦鎚が振り上がる。


「もっとだ」


振り下ろす。


ドゴォォン!!


衝撃が地面を走る。


兵士が転ぶ。


盾兵が倒れる。


副官が叫ぶ。


「陣形維持!」


「持ちこたえろ!」


だが、兵士たちの顔は青ざめていた。


誰もが理解している。


止められない。


レオンは静かに戦場を見ていた。


敵の動き。


兵の配置。


損害。


そして呟く。


「……三分」


副官が振り向く。


「え?」


レオンは言う。


「あと三分で崩れる」


その時だった。


ガルドが吠えた。


「遅ぇ!」


そして走る。


ズドン!!


兵士を跳ね飛ばす。


戦鎚が振られる。


ドン!!


兵士が宙を舞う。


さらに一撃。


ゴォン!!


盾壁が崩れる。


王国兵が叫ぶ。


「後退!」


「後退!」


パニックが広がる。


副官が叫ぶ。


「踏みとどまれ!」


だが。


ガルドは止まらない。


戦鎚を振る。


ドゴン!!


三人吹き飛ぶ。


もう一度振る。


ドン!!


地面が割れる。


王国軍の戦線が、完全に崩れた。


兵士が逃げ出す。


「無理だ!」


「化け物だ!」


副官がレオンを見る。


「レオン様!」


レオンは短く言った。


「撤退」


副官が息を呑む。


「ですが!」


レオンは言う。


「持たない」


「ここで粘れば」


「全滅する」


副官が叫ぶ。


「全軍撤退!」


兵士たちが後ろへ走る。


隊列は崩れかけている。


だが。


完全な潰走ではない。


レオンが前に立つ。


剣を抜く。


「殿は俺がやる」


副官が驚く。


「レオン様!?」


レオンは言う。


「まだ早い」


副官が聞き返す。


「え?」


レオンは前を見る。


ガルドが来る。


巨大な影。


戦鎚を担いで歩いてくる。


レオンは静かに言った。


「殿は」


「もっと後だ」


ガルドは戦場を見渡す。


逃げる王国兵。


崩れた戦線。


そして笑った。


「もう終わりか?」


戦鎚を肩に乗せる。


「つまらん」


その時だった。


森の奥から声がした。


「いいえ」


静かな声。


ガルドが振り向く。


そこに立っていた。


黒いローブ。


細い男。


魔王軍四天王。


闇宰相ヴァルツ。


ガルドが笑う。


「来たのか」


ヴァルツは戦場を見た。


逃げる王国軍。


崩れた陣形。


そして言う。


「まだ終わっていません」


ガルドが眉をひそめる。


「何?」


ヴァルツは言う。


「彼」


遠くを見る。


レオンを見ている。


「優秀です」


ガルドが笑う。


「知ってる」


戦鎚を肩に乗せる。


「だから壊す」


ヴァルツは静かに言った。


「いえ」


「壊す必要はありません」


ガルドが首を傾げる。


「は?」


ヴァルツは微笑む。


「崩せばいい」


ガルドはしばらく考える。


そして笑った。


「お前は面倒だ」


ヴァルツは言う。


「仕事ですから」


遠くで王国軍が撤退していく。


レオンが振り返る。


その目はまだ死んでいない。


ヴァルツは小さく呟いた。


「面白い」


そして言う。


「少し遊びましょう」


風が吹く。


戦場はまだ終わらない。




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