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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第23話 炉の中の理

夜の後方工房は静かだった。


昼間は喧騒に満ちるこの場所も、夜になるとまるで別の場所のようになる。


並んだ炉はほとんど火が落ち、わずかに赤い炭が残るだけだ。


だが。


工房の一番奥。


そこだけは違った。


炉が燃えている。


赤い炎が、静かに揺れていた。


タクミはその前に立っている。


腕を組み、黙って炎を見ていた。


鉄は嘘をつかない。


火に入れれば柔らかくなり、叩けば形を変える。


だが。


それだけではない。


叩き方。


冷やし方。


その一つ一つで、鉄は全く別の性質になる。


それを見抜くのが鍛冶師の仕事だ。


後ろで小さな声がした。


「……まだ起きてる」


振り向くとリアナがいた。


髪を結んだまま、肩に剣を担いでいる。


タクミは言う。


「戦場帰りだろ」


リアナ


「寝る前に寄ったッス」


剣を机に置く。


「これ」


刃先に小さな欠けがあった。


タクミはそれを手に取る。


「……騎士団か」


リアナが笑う。


「わかるッス?」


タクミ


「刃が語る」


指で刃をなぞる。


「強い相手だ」


リアナ


「隊長だったッス」


タクミは頷く。


「いい戦いをしたな」


リアナ


「勝ったッスけど」


少し真顔になる。


「でも」


剣を見る。


「最後、ちょっと怖かったッス」


タクミ


「何が」


リアナ


「向こうの剣」


指で空を切る。


「パキって折れたッス」


「こんな簡単に折れるのかって」


タクミは小さく息を吐いた。


「折れる」


リアナ


「え?」


タクミ


「鉄は折れる」


炉を見る。


「だから鍛える」


その時だった。


奥から足音がした。


小さな影が現れる。


リゼだった。


「戦場」


リアナ


「お、リゼ」


リゼは剣を見ている。


「貸して」


リアナが渡す。


リゼは刃に触れた。


目を閉じる。


しばらくして言った。


「魔力流」


「乱れ」


タクミ


「どこだ」


リゼは一点を指す。


「ここ」


刃の中心だった。


タクミは目を細める。


「……なるほど」


リアナ


「何ッス?」


タクミ


「叩き方だ」


炉の火を強くする。


「ちょっと直す」


鉄床に剣を置く。


ハンマーを持つ。


カン。


静かな音。


リアナが首を傾げる。


「それで変わるッス?」


カン。


カン。


タクミ


「変わる」


リゼが呟く。


「結晶」


「動く」


リアナ


「結晶?」


タクミ


「鉄の中身だ」


ハンマーを振る。


カン。


カン。


一定のリズム。


「金属の中には流れがある」


リアナ


「流れ?」


タクミ


「叩き方で変わる」


リゼが頷く。


「魔力」


「同じ」


タクミ


「だろうな」


リアナは腕を組む。


「つまり?」


タクミ


「魔術も鍛冶も」


剣を見る。


「流れを作る仕事だ」


リゼ


「分野違う」


「理屈同じ」


タクミは少し笑う。


「そんなもんだ」


もう一度剣を炉に入れる。


炎が揺れる。


赤く染まる刃。


取り出す。


カン。


カン。


音が夜に響く。


リアナはそれを見ていた。


ふと呟く。


「不思議ッス」


タクミ


「何が」


リアナ


「戦場だと」


剣を握る。


「ただ振るだけッス」


タクミは剣を水に入れる。


ジュウウウウ。


蒸気が上がる。


「鍛冶場では」


リアナを見る。


「剣が生まれる」


リアナは黙った。


リゼが剣を持つ。


目を閉じる。


「……変化」


タクミ


「どうだ」


リゼ


「魔力」


「通る」


リアナ


「ほんとッス?」


剣を振る。


ヒュン。


空気が鋭く切れる。


リアナの目が丸くなる。


「軽い」


もう一度振る。


「すごいッス」


タクミ


「まだ途中だ」


リアナ


「途中?」


タクミ


「戦場を見た」


炉を見る。


「もっと強くする」


リゼ


「改良」


タクミ


「そうだ」


リアナは笑った。


「楽しみッス」


その時だった。


工房の入口が開いた。


兵士が顔を出す。


「タクミ殿」


タクミ


「何だ」


兵士


「工房長が」


「明日、会議を開くと」


タクミ


「会議?」


兵士


「武器の件です」


リアナが笑う。


「来たッスね」


タクミ


「何が」


リアナ


「評価ッス」


タクミは黙る。


炉の火が揺れる。


鉄はまだ赤い。


タクミはハンマーを握った。


カン。


カン。


音が静かな工房に響いた。


後方工房。


まだ小さな場所だ。


だが。


ここから。


魔王軍の武器は変わり始めていた。




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