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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第15話 魔力鋳造の天才

魔王軍工房。


巨大な建物の中で、炉の炎が揺れていた。


ゴォォォ……


赤い光が天井を染める。


十基の炉。


十の金床。


そして、魔族の鍛冶師たち。


カン!


カン!


カン!


金槌の音が絶えない。


昨日までは静かだった工房が、まるで別の場所のように活気づいていた。


リアナが腕を組んで眺めている。


「すごいッスねぇ」


「完全に武器工場ッス」


隣でカティアが頷いた。


「分業が機能しています」


工房ではそれぞれの作業が分かれていた。


粗鍛造。


整形。


焼き入れ。


研磨。


タクミが考えたやり方だ。


最初、鍛冶師たちは戸惑っていた。


だが一日も経つと違う。


カン!


カン!


カン!


作業の流れが生まれた。


鍛冶師が叩き、次の者が整え、次の者が焼き入れをする。


まるで歯車のように作業が回っていた。


リアナが笑う。


「昨日の三倍は作ってるッスよ」


カティアは冷静に言う。


「四倍です」


リアナが目を丸くする。


「四倍!?」


カティアは続ける。


「戦争において生産力は戦力です」


「この工房だけで前線の武器事情が変わります」


リアナは感心したようにうなずく。


「タクミすごいッスね」


その当人は――


炉の前に立っていた。


鉄を見つめている。


色。


熱。


火の揺れ。


すべてを観察している。


そして呟く。


「……少し温度が高いな」


鍛冶師が驚く。


「見ただけで分かるのか?」


タクミは頷いた。


「色が違う」


鍛冶師たちは顔を見合わせた。


「やっぱり化け物だ」


その時だった。


工房の扉が静かに開いた。


ギィ……


一人の少女が入ってくる。


小柄だった。


銀色の髪。


ぼさぼさ。


長いローブ。


眠そうな目。


リアナが言う。


「……誰ッス?」


少女は工房を見回す。


炉。


金床。


剣。


そして――


タクミを見た。


じっと見ている。


数秒。


沈黙。


カティアが言った。


「紹介します」


「魔力鋳造研究部門」


「主任解析者」


少女は短く言う。


「リゼ」


リアナが言う。


「短いッスね!」


リゼは反応しない。


タクミのそばに歩いてきた。


落ちていた剣を拾う。


刃を見る。


指で軽く叩く。


カン。


音を聞く。


そして言った。


「鍛造温度」


タクミが答える。


「八百度前後」


リゼは頷いた。


「やっぱり」


リアナが言う。


「え、何がッス?」


リゼは剣を傾けて光を見る。


「炭素量」


タクミ。


「0.6」


リゼ。


「予想通り」


リアナ。


「だから何ッス!?」


鍛冶師たちもぽかんとしていた。


リゼは剣をもう一度叩く。


カン。


澄んだ音。


「魔力鋳造じゃない」


タクミ。


「違う」


リゼ。


「普通鍛造」


タクミ。


「そうだ」


リアナが頭を抱える。


「会話早すぎるッス!」


カティアは静かに観察していた。


リゼは剣をじっと見ている。


「強い」


タクミ。


「折れない」


リゼ。


「でも」


少し沈黙。


「弱点ある」


タクミの目が細くなる。


「どこだ」


リゼは剣の中心を指差した。


「芯」


「硬すぎ」


リアナが言う。


「え?」


タクミは少し考える。


そして頷いた。


「その通りだ」


鍛冶師たちがざわつく。


「何がだ?」


タクミは説明する。


「今の剣は刃も芯も硬い」


「耐久はある」


「だが衝撃には弱い」


リゼが言う。


「強い敵」


「大剣」


「叩かれる」


タクミ。


「折れる」


リアナが目を丸くする。


「え!?」


「折れない剣じゃないッスか!?」


タクミは肩をすくめた。


「普通よりは折れない」


リゼが言う。


「でも」


「最強じゃない」


二人の目が合う。


タクミが少し笑う。


「どうする」


リゼは即答した。


「複合鋼」


鍛冶師たちがざわつく。


「複合?」


タクミが頷く。


「外は硬く」


「芯は柔らかく」


リゼ。


「折れない」


リアナがぽかんとしている。


「え、今ので決まったッス?」


カティアが小さく言う。


「天才同士の会話です」


タクミは鉄を手に取った。


「やってみるか」


リゼは頷く。


「やる」


リアナが笑う。


「なんかすごいこと始まったッス!」


炉に火が入る。


ゴォォォ……


タクミが鉄を入れる。


リゼは隣に立つ。


そして言う。


「温度」


タクミ。


「上げる」


リゼ。


「もう少し」


タクミ。


「今だ」


鉄を取り出す。


カン!


ハンマーが落ちる。


リゼが言う。


「角度」


タクミ。


「分かってる」


カン!


カン!


カン!


鍛冶師たちは息を呑んだ。


言葉は少ない。


だが。


二人の動きは完全に噛み合っていた。


まるで長年の相棒のようだった。


リアナが呟く。


「なんかすごいッス」


カティアが言う。


「天才が二人」


「戦争が変わります」


ハンマーが再び振り下ろされる。


カン!!


火花が散る。


その瞬間――


新しい武器の歴史が始まろうとしていた。




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