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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第14話 量産開始

新しい工房は巨大だった。


天井は高い。


炉が並ぶ。


一つ、二つ、三つ。


全部で十基。


金床も同じ数だけ置かれている。


さらに奥には材料庫。


完成武器を収める武器庫。


完全な――


軍の生産拠点だった。


リアナが口笛を吹く。


「広いッスねぇ」


タクミは炉を見ていた。


石材。


火口。


空気穴。


煙突。


職人の目で一瞬で構造を読み取る。


「……いい炉だ」


カティアが静かに言う。


「魔王軍主力工房です」


「ここで前線の武器の大半を作っています」


タクミは炉の石を軽く叩く。


コン。


乾いた音。


「悪くない」


リアナが笑う。


「合格ッスか」


その時だった。


奥の扉が開いた。


何人もの男が出てくる。


魔族の鍛冶師たちだった。


体格がいい。


腕は丸太のよう。


いかにも職人という顔。


一人が言う。


「こいつが噂の鍛冶師か」


別の者が言う。


「折れない剣の」


リアナが胸を張る。


「そうッス」


「タクミッス」


タクミは軽く手を上げた。


「よろしく」


鍛冶師たちは少し戸惑った。


思っていたより――


普通の男だったからだ。


だがカティアが言う。


「彼の技術を学びなさい」


「戦争が変わります」


工房が静かになる。


タクミは鉄を手に取った。


「まず見せる」


炉へ入れる。


ゴォォ……


炎が上がる。


鉄が赤く染まる。


タクミはそれを取り出した。


金床へ。


カン。


カン。


カン。


一定のリズム。


無駄がない。


鍛冶師たちは黙って見ている。


カン。


カン。


カン。


一人が呟く。


「……速い」


別の者が言う。


「叩き方が違う」


温度が落ちる前に炉へ。


そしてまた叩く。


カン。


カン。


カン。


リアナが小声で言う。


「このリズム」


「ずっと同じッス」


カティアは観察していた。


力。


角度。


温度。


すべてが正確。


そして数分後。


タクミは剣を水へ入れた。


ジュワァァァ……


蒸気が上がる。


取り出す。


布で拭く。


「終わり」


あまりにもあっさりしていた。


鍛冶師が剣を取る。


持つ。


振る。


ヒュン。


空気が切れる。


そして言う。


「耐久を見る」


金床へ。


ガン!


衝撃が工房に響く。


普通の剣なら曲がる。


だが。


刃は動かない。


もう一度。


ガン!


三度。


ガン!


五回。


十回。


鍛冶師の顔色が変わる。


「……折れない」


リアナが笑う。


「普通の剣なら五回で終わりッス」


鍛冶師が呟く。


「化け物だ」


リアナが聞く。


「剣ッスか?」


鍛冶師は首を振った。


タクミを見る。


「違う」


「お前がだ」


工房がざわつく。


カティアが言う。


「量産できますか」


タクミは即答した。


「できる」


鍛冶師たちが騒ぐ。


「本当か?」


「そんな武器を?」


タクミは言った。


「やり方は簡単だ」


リアナが笑う。


「絶対簡単じゃないッス」


タクミは鉄を渡す。


「やってみろ」


鍛冶師が叩く。


カン。


カン。


カン。


しかし。


温度がズレる。


刃が歪む。


形が崩れる。


完成。


鍛冶師が金床へ叩きつける。


ガン!


一撃。


パキン。


刃が欠けた。


沈黙。


鍛冶師は言った。


「……無理だ」


別の者も言う。


「真似できん」


リアナが笑う。


「ほらッス」


タクミは首を傾げた。


「なんでだ」


鍛冶師が言う。


「叩き方が違う」


「温度も違う」


「感覚が分からん」


カティアが静かに言う。


「理解しました」


全員が見る。


「これは技術ではありません」


「経験です」


リアナが聞く。


「つまり?」


カティアは答える。


「数千回の鍛造」


「数万回の失敗」


「それが感覚になっている」


鍛冶師たちは頷く。


タクミは腕を組む。


「困ったな」


リアナが言う。


「なにがッス?」


「一人じゃ足りない」


カティアも頷く。


「戦争規模では不足します」


リアナ。


「じゃあどうするッス?」


タクミは工房を見る。


炉。


金床。


職人。


そして言った。


「分業する」


鍛冶師たちが聞く。


「分業?」


タクミは説明する。


「粗鍛造」


「整形」


「焼き入れ」


「仕上げ」


「全部分ける」


鍛冶師が言う。


「そんな鍛冶は聞いたことがない」


カティアが言う。


「軍事生産として合理的です」


リアナが笑う。


「つまり」


「武器工場ッス」


タクミは頷く。


「そうだ」


沈黙。


そして一人の鍛冶師が言った。


「やろう」


別の者も言う。


「戦争に勝つためだ」


炉に火が入る。


一つ。


二つ。


三つ。


やがて――


十基すべてが燃え上がった。


カン!


カン!


カン!


ハンマーの音が工房を満たす。


魔王軍の武器生産は――


今、この瞬間。


革命を迎えた。


その頃。


王国軍本部。


副官が報告する。


「魔王軍の武器が増えています」


レオンが言う。


「数は」


「三倍」


レオンの眉が動く。


「三倍?」


副官は続ける。


「しかも」


「折れない武器です」


レオンは静かに言った。


「……最悪だ」


副官が聞く。


「団長?」


レオンは窓の外を見る。


遠くの戦場。


そして言った。


「武器革命だ」


「この戦争」


「長くなるぞ」


その頃。


魔王軍工房。


カティアは奥の施設を見ていた。


そこには別の区画がある。


魔力鋳造研究区画。


カティアは小さく呟く。


「そろそろ」


リアナが聞く。


「何ッス?」


カティアは答えた。


「彼女を呼びます」


「魔力鋳造解析者」


リアナが首を傾げる。


「そんな人いたッスか?」


カティアは言った。


「います」


少し間。


「ただし」


「かなり変人ですが」


その名は――


リゼ。




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