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「役立たず鍛冶師と言われた俺、武器改良したら戦死率が激減した」 〜仲間を死なせない戦場工房〜  作者: 街角のコータロー


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第12話 工房移設

朝の工房。


炉の火が静かに燃えている。


カン。


カン。


タクミは鉄を打っていた。


熱した鉄。


振り下ろすハンマー。


金床に響く音。


それが彼の日常だった。


戦争も。


勝敗も。


関係ない。


鉄があれば。


打つだけだ。


カン。


カン。


その時。


工房の扉が開いた。


ギィ……


入ってきたのは二人。


リアナ。


そして。


黒いローブの女。


銀髪。


冷たい瞳。


カティアだった。


リアナが言う。


「タクミ」


タクミが振り向く。


「どうした」


リアナは隣の女を指した。


「魔王直属ッス」


タクミは一度だけ視線を向ける。


カティア。


彼女もタクミを見ていた。


数秒。


沈黙。


カティアが先に口を開く。


「初めまして」


「カティアと申します」


タクミは短く言う。


「タクミだ」


カティアは工房の中を見渡す。


炉。


工具。


作業台。


金床。


そして壁に立てかけられた剣。


一本手に取る。


鞘から抜く。


キン。


刃が光る。


カティアは刃を軽く叩いた。


カン。


澄んだ音。


彼女の目がわずかに細くなる。


「……なるほど」


リアナがニヤニヤする。


「いい剣ッスよね」


カティアは答える。


「優秀です」


剣を振る。


ヒュン。


「重量配分」


「刃厚」


「金属組織」


静かに言う。


「すべて合理的」


そしてタクミを見る。


「あなたが作ったのですね」


タクミは頷く。


「そうだ」


カティアは言った。


「魔力鋳造の数倍の強度があります」


タクミは肩をすくめる。


「鍛冶だからな」


カティアは小さく頷いた。


「理解しています」


そして剣を鞘に戻す。


カチン。


カティアは言う。


「本題に入ります」


リアナが腕を組む。


「来たッスね」


カティアは言った。


「この工房」


「移設します」


タクミが聞き返す。


「移設」


「はい」


カティアは説明した。


「王国もこの武器に気付きます」


「時間の問題です」


そして続ける。


「諜報部隊が来ます」


リアナが言う。


「来るッスね」


カティアは頷く。


「確実に」


タクミは炉を見た。


長く使った場所。


だが。


彼は迷わない。


「どこへ移す」


カティアは答える。


「後方生産区」


リアナが言う。


「鍛冶工房いっぱいあるとこッス」


タクミは言った。


「構わない」


リアナが驚く。


「早いッスね」


タクミは鉄を炉に入れながら言った。


「場所は関係ない」


ハンマーを持つ。


「鉄がある」


叩く。


カン。


「打てる」


カン。


「それで十分だ」


リアナは笑う。


「職人ッス」


カティアは部下へ命じた。


「搬出開始」


兵士が動き出す。


金床。


工具。


鉄。


荷車へ積まれていく。


その頃。


城の外。


森の中。


黒い影が動いていた。


王国軍の諜報部隊。


隊長が言う。


「潜入開始」


兵士たちが頷く。


「鍛冶師を見つけろ」


「折れない剣」


「それを作る男だ」


彼らは城へ向かった。


だが。


森の出口。


そこに一人立っていた。


黒いローブ。


銀髪。


カティア。


彼女は静かに言う。


「ここから先は」


「立入禁止です」


王国兵が止まる。


隊長が剣を抜いた。


「魔族か」


カティアは答える。


「諜報官です」


そして小さく息を吐く。


「任務ですので」


手を軽く上げる。


空気が歪む。


魔法陣。


王国兵が叫ぶ。


「魔法だ!」


カティアは言った。


「排除します」


次の瞬間。


光が走った。


一瞬。


本当に一瞬。


森が静かになる。


王国の諜報員たちは倒れていた。


カティアは視線を落とす。


「侵入者排除」


そして振り返る。


遠くで荷車が動いている。


タクミの工房。


すでに移動中だった。


工房移設は。


成功した。


王国の騎士団長がこの事実を知るのは――


まだ少し後のことだった。


戦争は。


静かに。


次の段階へ進み始めていた。




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