彼らを止めるな!①
「――さぁみんな、正午まであと一分だ」
クラウス司祭の声に、私たちは頷いた。
生き残った人間は、私たちを入れて総勢二十八人。
そのどれもが、手に手にとりあえずの武器を持ち、鍋釜を被ったり、有り合わせの鉄板を貼り付けて武装している。
「もうじき鐘が鳴るぞ。みんな、気を引き締めろ!!」
先頭に立ったコンラッドが檄を飛ばす。
コンラッドの右手には短剣が握られている。
どこかの軍隊で見た近接格闘の構えで、コンラッドは正面に向き直った。
「やれやれ、また血まみれになりそうだなぁ――」
私の隣でジークハルトがぼやく。
だるそうな本人の言葉とは裏腹に、その右手はしっかりと宝剣の柄を握り、既に鯉口が切られていた。
「大丈夫、絶対大丈夫――!」
背後にいるアンリエッタが決意の一言と共に、スコップを握り締めた。
先程犠牲者を埋葬したスコップが気に入ったらしい。
リオンは――私はちらと背後を伺った。
リオンは今にも嘔吐しそうな青い顔で、ぼんやりとまっすぐ前を見つめている。
さっきの言葉が利いていればいいのだが――。
その時だった。
甲高い、美しい鐘の音が、教会の中に鳴り響いた。
「始まった――」
クラウス司祭ルートでは何度も聞いた鐘の音だった。
ゆっくりと、変化は起こった。
今までやかましく教会の扉の前を彷徨いていたゾンビたちが、扉を離れ、足を引きずって離れていく気配が、扉越しにはっきりと伝わった。
「やった――!」
小さく快哉を叫んだ私だったが、鐘は既に五回鳴っていた。
時計塔の鐘は六秒に一回、一分間に十回鳴らされるという。
あと五回を打ち終わるまでに、ゾンビがいくらかでも教会を離れてくれれば――!
カラ――――――――――――――――――――――――ン………………
斧を握り締める手がじっとりと汗ばんだ。
カラ――――――――――――――――――――――――ン………………
ごくり、と、ジークハルトが生唾を飲み込む音がやけに大きく響いた。
カラ――――――――――――――――――――――――ン………………
コンラッドがファイティングポーズを取った。
カラ――――――――――――――――――――――――ン………………
アンリエッタがスコップを顔の前に構えた。
瞬間、クラウス司祭が右手を高く掲げた。
「え……?」
私が呆気にとられてそれを見た途端だった。
最後の鐘が、鳴った。
「ドアを破るぞ! 作戦開始だ!!」
クラウス司祭の手から猛烈な火球が迸り、猛烈な輻射熱と共に教会のドアに直撃した。
うわっ!? と私たちが顔を背けたのと同時に火球は大爆発を起こし、教会の扉が吹き飛んだ。
「すっ、凄い……!」
アンリエッタが呟いた。
そうだった、忘れていた。
ユージーン・クラウス司祭は、医術に精通しているだけでなく、破壊魔法術の達人でもあったんだっけ……!
「止まるなよ! 走れ!!」
コンラッドがそう言って猛然と駆け出した。
その声に勇気づけられたかのように、私たち生存者は、再び生存を賭けて走り出した。
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