悪役令嬢 to the Liberty②
ふう、やれやれ。
私もなにか武器を探さないと……。
私の腰には今、リストランテ学院の衛兵が捨てていった弩がぶら下げられている。
だが矢は十本程度だし、速射は出来ない。
第一、これは大の男が足を掛けて踏ん張り、矢をつがえるもので、エレーナの膂力では連射は絶対に無理だ。
なにか格闘できる武器が要る。
それも結構威力の高い武器が。
教会の中をうろうろしていたところ、ふと――床にうずくまっている人間に私は目を留めた。
おお、痛ましくズル剥けとなったこの頭頂部に見覚えがある。
この口ひげの男はこの街の宝石商だ。
どのキャラのルートでも目にするが、外見と身分で露骨に人を値踏みする嫌な男である。
だが私が注目したのは、宝石よりもなお光り輝く男の頭頂部ではなく、男が後生大事そうに抱えていた鞄の方だった。
「あなた、その鞄の中身は?」
「へ……命の次に大事な商品だよ。高級なもんばかり掴んで持ってきた。これを元手に王都でもう一回花咲かせてやるんだ、俺は」
男はヘラヘラと笑った。
締まりきらない鞄の口を見れば、指輪やらネックレスの類に混じり、多数のブレスレットやバングルも入っているようだ。
ふと――いい考えが思いついた。
「ねぇ、その鞄の中身、いくらなら売ってくださるかしら?」
「はぁ――?」
男は狂人を見るような目で私を見た。
「冗談じゃねぇ、あんたこんなときに着飾ってどうするってんだ!? それにこいつの中身は俺の全財産だ! 売れるわけが……」
男が言い終わらないうちに、私は右手の薬指にはめた指輪を取り、無造作に男に向かって投げつけた。
血に塗れてはいるが、白金にどでかい金剛石をあしらった宝物である。
入学前、暴漢に襲われた場合に使いなさいとエレーナの母が持たせてくれたものだった。
男はその指輪を拾い上げると、ごくりと生唾を飲み込んだ。
庶民ならそれひとつで一生遊んで暮らせるだけのカネになる……。
エレーナの母の言葉は本当だったようだ。
「足りないかしら?」
男は何故かもじもじと身体を捩って、へつらうような笑みを浮かべた。
「へへ、お嬢様――どれがご入用で?」
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