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悪役令嬢 VILLAGE①

ナルフィは、《琥珀のエルミタージュ》の中では最も登場回数の多い、学院以外の外の世界である。


街の中心に聳える巨大な時計塔が印象的なナルフィは、王都から学院までを結ぶ街道沿いの中では最大の街であり、広大な草原の真ん中に位置するため、旅人も多い。


交通の要衝であるのと同時に、やんごとなき貴族たちの子弟が持つ豊富な財力を目当てにした、ちょっと気取った店やお高い宝飾店もある。


攻略キャラクターとの《買い物デート》というおいしいイベントが盛りだくさんの、宿場と学生街を兼ねたような繁華な街であった。



そんなナルフィの華々しい面影は、今や形もなかった。

綺麗に整備された石畳の上には物が散乱し。

ずらりと居並んだ屋台は殆どが引っ掻き回され、商品がぶちまけられている。

暗いせいでよく見えないのが救いだが――。

そこここに転がっている影は、人々の死体に違いなかった。


「なんてこった――」


コンラッドが道に落ちていたなにかの瓶を蹴り飛ばして毒づいた。

私も、アンリエッタも、おそらくその場にいた全員が絶望的な気分で変わり果てた街を見ていた。


ゾンビが――ここをも襲ったのだ。


「大丈夫かい、これ……。エレーナ、僕らが行く教会はもう絶望的じゃないのかい?」


ジークハルトにそう言われて、さすがの私も不安になってきた。

だが、視界にはどこにも《バグ》はない。


どんな形であれ、彼――ユージーンは生きている。その事実だけは確かだった。


「リオン、教会はどこにあるかわかる?」


私が遠慮がちに尋ねると、リオンは無言で町の北を顎でしゃくり、前を進み始めた。

先程からずっと無言を貫いているリオンは、迷いのない足取りで暗い街に突き進み始めた。


「り、リオン、危ないわ! あまり離れると……!」




「アンタがここに俺を連れてきたんだろうが」




思わず息を呑むほどに冷たい言葉が発せられ、私は言葉を失った。


「心配してくれるぐらいなら、こんなとこ最初から連れて来なきゃいいんだ。――さっさと歩いてくれ、先導はするから」


小柄の肩を怒らせて、リオンは実にふてぶてしい足取りで街を歩いていく。

年齢に見合わないようなその反応に、私たちは思わず顔を見合わせた。


「とりあえず、リオンについていきましょう。ね?」


場を取り繕うように言ったアンリエッタの言葉に促されて、私たちはリオンの後を追いかけ始めた。



街の中心部へ差し掛かると――本当にひどい有様だった。


既に街のあちこちからは火の手が上がり、その中には既にすっかり焼失してしまっているものもある。

露天で売られていたのであろう貴金属の類が放置されているのを見ると、よほど突然の事態が起こったと思われた。

存外に死体の数が少ないのは、その多くが逃げおおせたからなのか、それとも――。

そこまで考えて、私は不吉な想像を頭から振り払い、歩くことだけに集中することにした。


「あれが教会だ」


リオンが不意に立ち止まり、虚空を見上げた。

私たちが釣られて見上げると、木々や家屋の上に突き出た、白い尖塔が見えた。

あの尖塔のレリーフと風景は、なるほど確かに間違いはない。

《琥珀のエルミタージュ》にも何度か登場したの教会だった。


やることはやったぞ、というようにリオンは振り返り、私を見た。


よかった。とりあえず目的地には到着できた。

彼をこの教会から救い出すことができれば、とりあえず《バグ》による世界の崩壊は防ぐことができる。



だが――どうやって彼を連れ出す?



私は早くも次の問題を考えて、胃の腑がじっとりと重くなる感覚を味わった。



何しろ、これから出会うことになるユージーン・クラウスは――《琥珀のエルミタージュ》のメイン攻略キャラクターの中でもとりわけの問題児なのであるから。


だが、もうここまで来たんだ。力づくでも彼を連れ出すしかない。



「とにかく、教会に入りましょう。話は私がしてみますわ」



決意の声とともに言った私が一歩踏み出したときだった。





急に、私の視界の端に黒い影が飛び込んできた。


ここまでお読みいただきありがとうございました。




現在、このスプラッタ小説は非常に評価・ポイント共に苦戦しております。


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