↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/59

第40話:不屈の誇り

志馬が最深部で富田を完全に沈め、零緒たちがそれぞれの区画の刺客を辛くも退けた後、志馬は富田が座っていたスチールデスクのボタンを押し、みんなを分断していたシャッターを解放した。


それと同時に、これまで分断されていた区画へ向けて、満身創痍で全身に包帯を巻きながらも、その瞳に圧倒的な武人の眼光を宿した男たちが、続々と廃工場の奥へと現れた。


ボクシング部の中村、レスリング部の高橋、そして柔道部の佐藤先輩だ。


千鶴先輩によって、最初から武器の使えない角材の杖術の理合で叩きのめされ、ようやく意識を取り戻して床を這いずり回っていた巨漢の兄弟――角田兄弟の目の前に、彼らは堂々とした足取りで立ちはだかった。


「おいおい。お前たちだけで、すべての美味しいところを持っていかせるわけにはいかないからな」


奨の科学的アプローチによる装備の復元で完全に息を吹き返した誠修館の体育会系の主将たちは、あえて自分たちの誇りを汚した因縁の「襲撃者」たちの前へと、堂々とした足取りで進み出た。


「あとは俺たちの競技格闘技組に任せてくれ」


「……ああ、好きにしろ」


志馬や零緒が道を譲り、一歩後ろへと下がる。


ボクシング部の中村主将は、目の前の巨漢の前に静かに立った。


「……10オンスの分厚いルール用のグローブがなくたってな、毎日何万回とサンドバッグを叩いてきたボクサーの拳の硬度は死んじゃいない。お前たちのその顔面は、俺のコンビネーションのサンドバッグには丁度いいぜ」


閃光のような、目の覚める超高速の左右のストレートとフックの連打が、巨漢の顔面を正確に捉える。


文字通り「ただのパンチの的」と化した相手は、一度の反撃を見せることも許されぬまま、その場に崩れ落ちて完全に沈んだ。


一方、ジェルの海が広がる円形の部屋の中。


レスリング部主将の高橋が、輝澄の三日月蹴りによって顎を砕かれ、床でのたうち回る柔術家マルコの胸ぐらを、その鋼の剛腕で力任せに強引に引きずり起こした。


「床のジェルのドロドロの滑りなんてな、相手の骨盤をクラッチして地面に縫い付けるレスラーの絶対的な密着コンタクトの前には1ミリも関係ねえんだよ。……地球の重力の本当の硬さを教えてやる」


ガッチリと両腕でマルコの太い胴体をロックすると、腰のブリッジを爆発させて、何度も、何度も、コンクリートの冷たい床の上へと容赦ない角度のバックドロップを叩きつける。


近代レスリングの圧倒的な力学の前に成す術なく、完全に失神して白目を剥いた。


そして、佐藤先輩の前には、最後に残された連中が、工業用防塵ゴーグルを鈍く光らせる彼の威圧感の前にガタガタと怯えて立っていた。


「卑怯な消石灰の手で、俺たちが命を懸けて磨いてきた高潔な柔道を汚した罪、その薄汚い体で今すぐ償え」


佐藤は相手の襟と袖をガッチリと掴み取ると、自慢の『内股うちまた』で相手の身体を軽々と中空へと高く舞わせた。


柔道着の擦れる激しい風切り音。


防護マットも畳も一切存在しない、100%硬質なコンクリートの床へ向けて、頭から真っ逆さまに叩きつける一撃必殺の柔道の連動。


ドガァァァン!!!


それは、武道の礼節とルールを欠いた者への、誠修館柔道部からの無言の引導だった。


彼ら各部の主将たちは、自らの不屈の拳と磨き抜いた技の力で、昼間に蹂躙された誠修館の誇りと看板を、完璧に、正当にすべて奪い返したのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。