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第十六話 8才の誕生日その3

 朝食を食べ終え、休憩をしている際、ミラーが私に声をかけてきた。


 「レティシア様、そろそろ身支度をする時間です、移動しましょう」

 「時間が過ぎるの、早いわ」


 俺は椅子から立ち上がり、ミラーとともにドレッシングルームへと向かう。


 「レティシア様、今日の朝食はどうでしたか?」


 廊下を歩いていると、急にミラーが聞いて来た。

 

 「へ? 美味しかったわよ」

 「そうですか! よかった……。嬉しいです」

 「ん? ……嬉しい?」


 ミラーが嬉しいと思うのは謎だな……。というかこんな展開あったっけ? 思い出せない。


 「いえ、忘れてください、もう少しで着きますよ」

 

 もしかして、ミラーが作ったとかそういう感じなのか? いやあの味を素人が作れるとは考えられないんだよな。ミラーが素人かどうかも分かんないから断定はできないけど。

 そんな雑談を挟んで、ドレッシングルームの目の前に着いた。この場所を使うのは転生してから初めてだ。何故なら普段は自分の部屋で普通に着替えているから。

 扉を開けると、そこには清潔感がある広々とした空間が広がっていた。

 中央には椅子が置いてあり、椅子の前には大きい鏡が立っていた。そして右側には色とりどりの服が並べられていて、左側にはプライベートを守って試着できる個室が1つ置かれていた。


 「今回は私がしっかりとレティシア様に似合う服装を複数用意してあるので、順番に試着して、レティシア様が気に入った一着を選びましょう!」


 ミラーは服を選びに早歩きでかつリズムよく行った。

 今日のミラー、なんかやけにテンションがいつもより高い気がする。気のせいかな。

 

 「なんか、いつにも増して気合が入っているわね」

 「えぇ、今日はレティシア様の誕生日ですから」


 誕生日って、普段大人で静かな人をここまで陽気にする力があるのか、凄いな。

 ミラーは慣れた手つきで服を選んで手に取ると、こちらに戻って来た。


 「レティシア様、まずはこちらを!」


 ミラーが選んだのは、鮮やかな青色のドレスだった。


 「これ、絶対レティシア様に似合うと思います」

 

 今からこれ着るのか、俺。確かに綺麗だけど。


 「着てくるわ」


 俺はミラーから鮮やかな青色のドレスを貰い、個室に入る。


 個室の中には椅子が1つあり、その目の前に俺の身長と変わりないくらいの大きさの鏡があった。


 「これ、私の為に作った鏡なのかな?」


 ――俺はそんなことを考えながらひとまずドレスを着ることにした。


 「これ、いいかも」


 ドレスを着終えた感想としては、なかなか着るのが難しかったことと、ドレスを着た姿が思った以上に良かったことだ。

 俺可愛いなぁ、不思議な気分だ。

 

 ……この姿をクリスティーナに見せたい。


 「可愛い、これにしちゃおうかな、あとのはもういいかもしれない」


 俺は個室から出てミラーにドレス姿を見せる。


 「似合ってますよレティシア様! 可愛いです!」

 「私、これにしちゃおうかな……、可愛いし、気に入っちゃったわ」

 「わかりました、じゃあそのドレスでいきましょう!」

 「そういえば脱いだ服はどうしたらいいの?」

 「それはあとでベリーが取りにくるので大丈夫ですよ」

 「ベリーが、わかったわ」


 俺は中央にある椅子へ再び着席し、指示を待つ。次はメイクかな?


 「レティシア様、次はメイクです、少し時間がかかりますが、後からクーパーがきますので終わるまで雑談でもしておいてください。私はメイク中集中しているので話せませんからね」

 「わかったわ」


 ミラーが手慣れたようにメイクを俺にしていると、「トントン」と扉の方から音が聞こえてきた。さっき言ってたクーパーだな。


 「クーパーです、入ってもよろしいでしょうか?」

 「問題ないわよ」

 「失礼します」


 声が止んだ後、ゆっくりと扉が開かれる。タタタと早歩きでこちらに向かってくるのが分かった。


 「レティシア様、メイクをしている間退屈ではないだろうかということで、私が雑談約をしたいと思いまして参りました」

 「確かに話す相手がいたら嬉しいと思ってたところだよ、ありがとう」

 「それはよかったです。何から話をしましょうか?」


 うーん、雑談っていっても思いつかないな。


 「クーパーは趣味とかあるの?」


 すっごい普通の質問したな俺、言ってから後悔した。


 「趣味ですか……、レティシア様の傍にいること自体が趣味です」


 なにその解答、メイドの鏡? 本気かわからん。


 「それって……、趣味って言えるのかな?」

 「私は趣味だと思ってます」


 趣味って意味、なんだっけ?

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