第3章 3月(6)
「星杜学園1年 波原小春 168㎝ 60㎏。 けっこう大食い!」の続編なので、当小説内で直接的にはわからない人物関係・背景・エピソードも出てきますが、ご容赦下さい。
終わり良れば、すべて良し~~~~~^^
友哉からの告白の後、どうなったかについては、あえて言及しないし、言及したくない。
しかし1位のチョコ王子早見坂先輩は、当然のように藍原さんにクッキーを渡し、2人があまりにも優雅にワルツを踊ったことだけは申し添えておきたい。2人のダンスを踊る姿を見た女子生徒たちのなんとも言えないため息で、体育館中が溢れたものだ。バレンタインダンスパーティーの最後を締めくくるには、あまりにも出来過ぎな2人の姿ではあった。(2人のワルツ披露?の後は、その場にいる全員でのダンスパーティーとなる。)
今この場所には、醸し出す雰囲気がまるで違う4人が揃っている。
「麻莉子さ、あたしに言ったよね? 友哉のチョコが全然集まらなさそうだって!?」
私の、この騙された感満載の憤りをどうしてくれようか。
なのに友哉と麻莉子は、そんな私の憤りなど意にも介さないふうで、2人で盛り上がっている。
「ぼくの人生の中で、昨日のあの時間が一番幸せな時間と言ってもいいくらいですよ!」
友哉は、何かを思い出してウットリとしている。たぶん……私が決して思い出したくない光景を、友哉は思い出しているに違いなかった。
「ホントにねぇ~。小春ちゃんが友哉クン手作りのレースを被って、2人でワルツを踊る姿って言ったらぁ~。こうレースがふわりふわりってゆれてぇ、友哉くんが一生懸命編んだタティングレースの繊細なモチーフがキレイでぇ、小春ちゃんたら、まるで花……」
「「ストーーーーーーーップ!!!」」
珍しく私と桐生の意見が一致したようで言葉が重なった。私たち2人は麻莉子の言葉を遮る。
「麻莉子、もうそれ以上は言わなくて良いから!」
「俺も、あまり聞いていて楽しくない」
それを聞いてなぜだかニンマリと笑った麻莉子は、話題を変える。
「でもぉ麻莉子だって今回のことは最後の最後まで分からなかったからぁ、小春ちゃんが友哉クンに返事をするまではすごいドキドキしてだんだよぅ。まぁ小春ちゃんのことだから大丈夫とは思っていたんだけどねぇ。それでも蓋を開けてみるまではやっぱりさぁ~」
なにが『小春ちゃんのことだから』だ。
麻莉子も、自分の思惑通りに事が運んで、たいそうご満悦のご様子だった。
「だいたいだ。紫月と久遠が組んでコソコソしてたのは知っていたが、まさか久遠が小春の気持ちを遠隔操作までしていたとはな。恐れ入ったよ」
これは桐生。桐生も私同様に、とても渋い顔だった。
「なに? あたし、遠隔操作されてたの!?」
「なんだ、今更。この後に及んでも、まだ久遠の恐ろしさを理解できていないとは……ったく、そんなんだから、まんまと紫月にチョコを入れる事になるんだよ! しかもおまえのプレートはだな……」
「はいはい、それはそれは大変悪うございました。どうせあたしは、いつまでたっても、そんなんですよーだ!」
だがしかし。なんで私と桐生がケンカしなきゃならないんだろう。責められるべきは、麻莉子と友哉じゃないのか?
「ねぇ小春ちゃん」
ここで急に真剣味を帯びた声で、麻莉子。嫌な予感。
「もしも友哉くんにチョコを入れなかったら、小春ちゃんはぁ~、誰にぃ~チョコを入れたのかなぁ~」
麻莉子のこの質問に、友哉と桐生が凄い勢いで食いつくのがわかった。2人が食い入るように私を見ている。
(え。なに? 2人のこの反応??)
「そんなの……わかんないよ、麻莉子」
「ブーーーーーーーーーーーーーっ。小春ちゃぁん、その返事はダメダメだよぅ~。だって、ほぉら見て見てぇ。友哉くんと桐生くんが、すごぉく聞きたがっているでっしょ~」
出会って1年になろうとしてるのに、この3人の考えや行動は、今だに理解できない事も多い。あ、正確に言うと、桐生とは2年の付き合いというべきか。
「あのさぁ、友哉と桐生が、2人で何を競ってあたしを巻き込んだのかは、今でも分かんないけど……そういうの、心臓に悪いからこれからは止めてくんない? へんなカケの対象には、もうなりたくないわ」
そう、これだけはキッパリと2人には言っておかねばならないだろう。もう二度と何かのネタにされるのは、まっぴらごめんというもの。
と、そんな私の言葉を聞いた麻莉子が。
「はぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」と、これみよがしに大きなため息をつく。
「麻莉子、なに?」
麻莉子は眉間にしわを寄せて、首を左右に振った。
「小春ちゃんはぁ、いつまでたってもにぶちんだよぅ~。だからいつまでたっても、きっとだぁれも報われないぃ~」
「は?」
そして顔を見合わせる友哉と桐生が、深く頷く。
「紫月、どうやら俺たちは前途多難のようだな」
「そう……みたいですね」
「なにが??」
それから麻莉子と友哉と桐生の3人は面白そうに声をあげて笑った。
めんくらっている私一人を取り残して。
「しょうがないな、紫月。それが波原小春だからな」
「そうですね、そんな小春さんが良いんですよね」
「小春ちゃんはぁ、小春ちゃんだよぉ~」
わけの分からないまま、いつのまにか私の発言はスルーされたようだった。
(あたし、バカにされてる?)
「なに? 波原小春に文句があるんなら、いつでもどうぞ。あたしは誰の挑戦でも受けるけど?」
桐生が笑う。
「そうか。それじゃ小春、俺はこれからも遠慮なくおまえに挑戦し続けることにしよう」
友哉も負けじと。
「小春さん、ぼくだって挑戦しますからね!」
(――?)
「あんたたちって、ホント何考えてるんだか……」
そんな私たち3人を面白そうに眺めていた麻莉子が、ここにきて爆弾発言を投下した。
「うぅん、もうこれはしょうがないよねぇ~。じゃ今日からは、思いきって桐生くんも入れてあげちゃったりするぅ? 友哉クン、どぅお?」
「え? 何に桐生を入れるって?」
私の疑問は、またもやスルー。
「まぁぼく的には、多少不本意ではありますけれど、しょうがありませんね。ま、もっとも桐生くんが嫌じゃなければ、のハナシですけど」
友哉が、麻莉子の問いかけに答えた。
「え? ね、ね、なに? あたしの意見は聞いてくれないわけ?」
どんだけ私の発言は無視されるんだ?
「俺に異存などあるわけないだろう。いっしょに過ごす時間が増えるんだぞ」
桐生が即答した。
「えっとぉ~、それじゃぁ、そういう事で決まりだねぇ~」
麻莉子の声は、心なしか弾んでいるように響く。
「えっ!? 何が決まり? 何が決まったの!?」
なぜ私の言葉は届かないんだろう。
そして麻莉子が高らかに宣言する。
「本日をもって仲良し3人組は解散!」
「えっ!? 解散???」
「その代わりに、今日からは仲良し4人組だよぅ!!!」
「だれが、仲良し4人組っ!??」
「そういうわけだから、小春。これからもよろしく頼むな」
私は、桐生に肩をポンとたたかれた。




