第3章 3月(2)
「星杜学園1年 波原小春 168㎝ 60㎏。 けっこう大食い!」の続編なので、当小説内で直接的にはわからない人物関係・背景・エピソードも出てきますが、ご容赦下さい。
いよいよホワイトデーのパーティーが始まりました。ここで、いったい何が起きるのでしょうか。
小春と、友哉・桐生の関係はどうなっていくのか。
そろそろラストが近いです~^^
――「ちょっと、早見坂先輩が来てるよ!」
――「ホントだ。さすがに燦然と光り輝く金色のエンブレムが似合いすぎ~」
――「ステキーーーーー! 見てるだけでくらくらしてきそう」
体育館内は、すでに生徒たちでひしめき合い、スペースを確保するのが大変な状況になっていた。
ダンスパーティー、ダンスパーティー、ダンスパーティー……。シンデレラを夢見る女子生徒と、ダンスパーティー。いったい、どんな関係があるというんだろうか。
だいいち、ダンスパーティーだって最初から知っていたら、絶対に参加なんてしなかったのに、結局私は麻莉子に引っ張られて、結局体育館に来てしまっている。
「あたし……全然興味ないし、どっちかっていうと、こういうのは苦手なんだけど……」
私の言葉なんて、麻莉子はちっとも聞こえていないようで、実際人々のざわめきで会話は聞きとりにくくなっている。麻莉子はすっかりはしゃいじゃって、飛び跳ねるようにして歩いているし。
「ほらほら見てぇ、小春ちゃん。さすがに白い制服は目立つし、カッコいいよねぇ~。友哉クンの顔見てよぅ~。とぉーっても緊張しているみたいだよぉ~」
何が楽しいんだか、麻莉子のテンションはあまりにも高い。
集まってきている女子生徒たちの熱気でむんむんとしている体育館内、対して私は、少しでも早く帰りたくて、早く始まって早く終わらないかと、そればかりを願っている。
壁の花で結構、ダンスなんて二度と踊りたくないと心の中で叫びつつ、及川先輩にダンスを教えて貰ったあの日の情景が蘇ってきて、あわてて蓋をする。
(社交ダンスなんて……ワルツなんて、生涯二度と踊るもんか!)
私がそう思ったとしても、誰が私の気持ちを笑うことができるだろう。私は、女の子らしくない女の子ではあるかもしれないが、それなりに乙女心は持ってるし、気丈に振舞ってはみせたものの結構傷ついたのだ。
チョコ王子のエントリーした男子生徒回りとか、盆栽部のイケメンだとか、チョコ投票だとか、友哉と桐生が白い制服を着てるとか、友哉や桐生の不可思議な行動とか、女子生徒からの冷たい視線とか――もう、そんな事、私には関係ないし、どうでもいい! と、そんないろんな事が複雑な感情を伴って蘇ってくる。
麻莉子とは対照的に私のテンションはだだ下がり、自分がなぜここに来たのかと後悔を感じ始めた頃、司会者の声が体育館の中に響いた。
「星杜学園の生徒のみなさん、大変お待たせいたしました!」
一瞬静まり返る体育館内。
「これより、星杜学園ホワイトダンスパーティーを開催致します!!」
クラッカーがあちこちでパンパンパンと打ち鳴らされて、体育館内に女子生徒の黄色い歓声が上がった。
(なんだか……寮祭を思い出す)
「本日はホワイトデー、御承知の通り、バレンタインにチョコを貰った男性が、女性にクッキーのお返しをする日です!!」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」
女子生徒たちのボルテージが一気に上がる。
「女子生徒のみなさまには、バレンタインの時に候補者一人を決めてチョコを投じて頂きましたが、誠に残念ながら、女子生徒のみなさま全員に、候補者からお返しをすることが難しいのはおわかり頂けると思います」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」
この『きゃー』は、残念、とか、そんなー、とか、えぇーーーっとか、そういう意味合いの『きゃー』のようだ。
「そういうわけですので、このホワイトダンスパーティーでは、上位5人のチョコ王子から、それぞれ一人ずつ5人の女性生徒さんだけに、クッキーのお返しが渡されることになります」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」
この『きゃー』は、たぶん……私が欲しい、という期待感に満ちあふれる『きゃー』だと思われる。
「今、皆さまご覧の通り、舞台上には既に5名のチョコ王子に登壇して貰っています。ホワイトダンスパーティーでは、チョコ王子候補者を代表しまして、この5名のチョコ王子がお返しのクッキーを渡すことになります」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」
この『きゃー』は、……もうめんどうくさいので、以下省略。
「ただし、先にお断りしておきますが、クッキーを貰える資格のある女子生徒さんは、当然ながら、その候補者にチョコを投じている方のみとなります。ですから、チョコ王子からクッキーのお返しを差し出されたとしても、その候補者にご自分がチョコを投じていない場合には、そのお返しクッキーを受けとる資格はありません」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」
「なお、こちらでチョコと一緒に投じて頂いたプレート番号にて、どなたがどの候補者にチョコを投じて頂いたのかは確認することができますから、間違っても、チョコを投じない相手からのクッキーを受け取ろうなどとは思わないで下さいね」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」
もう私にとってはどうでもいい事だった。関係ない、というか。
「あのさ、麻莉子。あたし、先に帰ってもいいかな?」
断りを入れてから帰ろうと思っていた時、麻莉子が妙な事を口走った。
「何言ってるのよぅ、小春ちゃ~ん。麻莉子の読みではぁ、小春ちゃんは今日ここでぇ、ほぼ主役になるのよぅ~」
「はぁ?」
麻莉子は何を言おうとしているんだろう。しかも『主役』じゃなくって、『ほぼ主役』という微妙な表現。
「小春ちゃんがぁ、この一ヶ月の間、ずぅーっと女子生徒たちの冷たい視線を浴び続けてきたのはぁ」
「きたのは?」
「今日、この日のせいなのでありまぁす!」
「……」
いったい私が何をしたというのか。
「あたしに何の関係が?」
「んん~~~。だってねぇ~、それは小春ちゃんがぁ、ただの小春ちゃんであるゆえにぃ~」
麻莉子は、わざとわかりにくく説明しているとしか思えない。
「麻莉子、説明は相手に分かるようにしなきゃ意味がないんだよ。とにかく、ここにいてもつまんないし、あたし、先に寮に帰ってるね」
「だからぁ~、小春ちゃんったらぁ、もう少しで面白くなるんだよぅ~」
私にはもう少しで面白くなるなんてちっとも思えなかったけれど、麻莉子があまりにも引き止めるので、しょうがなくもう少しだけ様子を見ることにした。
「では、5名のチョコ王子の皆さま。ちゃんとお相手の場所は把握されましたか?」
司会者の言葉に、一斉に頷く5人。
「準備が整いましたようですので、これからいよいよ星杜学園恒例の告白タイムに移ります!」
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」
「星杜学園恒例……なんだ」
なんと『恒例』の多いことか。
「小春ちゃぁん、5位のチョコ王子からの告白になるからぁ、ちゃんとその様子を見ておかなきゃダメだよぅ~」
「なんで?」
「うふふぅ。なんでだろうねぇ~」
なぜ、麻莉子はこんなに期待に満ちた瞳で私を見ているんだろうか。
(嫌な予感がする、マジで……)




